試乗インプレッション

【試乗インプレ】ファンテック キャバレロス クランブラー500「他の人とは違うバイクに乗りたいならコレ!! 中回転域の切れ味に脱帽」

知る人ぞ知るイタリアンバイクの至宝「ファンテック」

国内での知名度はさほど高いとは言いがたいファンティックですが、実は知る人ぞ知るイタリアンブランドの中でも指折りの仕上がり、パフォーマンスを誇るバイクばかりです。そもそもは1970年代の伝説的オフロードバイクで一気にメジャーステージにのし上がった同社ですから、根底にはコンペティションの魂が脈々と引き継がれているのです。今回ご紹介するキャバレロ・スクランブラー500もまた同様で、熱いスピリットがスタイリッシュな車体にこれでもかと詰め込まれていました。

キャバレロ・シリーズは世界中から注目されているマシンで、軽量な車体、パワフルかつ味わい深い単気筒エンジンなど、他人とは違うバイク、しかも乗り味もいいモデルを探している方にはうってつけでしょう。スクランブラー、フラットトラック、ラリーの3タイプがラインナップし、スタイルや用途に合わせてチョイスできるところもワクワクするのではないでしょうか。今回の試乗にチョイスしたスクランブラー500は、その名の通りストリートからダートを軽快に駆け抜けてくれるもの。随所にファンティックらしいセンスや、上質なパーツが注ぎ込まれ、所有欲も満たしてくれる1台にほかなりません。

全長2166mm、ホイールベース1425mmと決して大柄なボディでなく、引き締まったアスリートかのようなたたずまい。150kgという軽量な車体で、だれもが親しみやすいパッケージです。
サスストロークが前後150mmありながら、ピッチングにもクセがなく、ストリートからダートまで素直な乗り味というキャラ。シート高も820mmありますが、またがれば沈み込みもあるので、ハードルは低いはず。
キャバレロ・シリーズ共通の単眼デジタルメーター。視認性も情報量も必要にして十分なもの。シンプルなフロントフェイスの印象づくりには、これくらいコンパクトなメーターが望ましいものです。
往年のファンティックと同様のタンクバッグは、タンクカバーにねじ止めされたもの。
トップはクリアでスマホなどが収納できるほか、ケースの容量も日帰りツーリングなら不満のないレベル。

軽く感じる車体に小気味よいエンジンを搭載

車体重量150kgとカタログには記載されていますが、パッケージングの巧みさでしょうか、実際にまたがってみるとそれ以上に軽い気がしました。スマートに絞り込まれたシート形状や、ファットバーを用いたハンドルのサイズや位置が効いていると思われ、腕に覚えのあるバイカーなら、この瞬間から胸がときめいてくること間違いなし。また、シート高も820mmというカタログ値からは拍子抜けするほど楽チンでした。身長176cmの筆者は膝が軽く曲がる程度の良好な足つき性です。

搭載されているSOHC4バルブエンジンは実に深い味わいがあり、特に全回転域でのレスポンスで、これほど「小気味良い」という表現がはまるものは他にないでしょう。街中で多用されると思われるのは4000~6000回転でしょうか。この領域の切れ味と言ったら、思い出しても背筋がゾクゾクするほどで、不用意にアクセルを捻れば上半身ごと後ろへ降り飛ばされるようなパンチ力。40psというデータにしては、強烈なパワーを感じることができました。

エキゾーストパイプの取り回しも独特で、野太い排気音は速いバイクが好きな方は誰もが虜になるような響き。もっとも、アイドリングは思いのほか静かなので、住宅街の早朝でもさほど肩身を狭くするものではありません。サウンドチューニングにもセンスが表れるものですが、そういう意味ではファンティック恐るべしといったところでしょう。

エンジンは94.5mm×64mmというショートストロークは刺激的なパンチと吹けあがりで、アクセルを捻るのがこれほど楽しいエンジンは滅多にありません。
パイプの取り回しや、カーボン製ヒートガードの出来栄えひとつをとっても、比べようがない仕上がりの良さ! こういうところに抜かりないのがファンティックのすばらしさ、真面目さではないでしょうか。
2本出しマフラーは回していくほどに雄たけびボリュームがあがるタイプ。アイドリングはかなり静かです。また、リヤタイヤは140/80-17と、モタードタイプよりも細身ですが、ダート走行には適したサイズでしょう。

入力に対して素直な挙動!! 優れた基本パッケージで思い通りに走れる

ワインディングまで走ることはかなわなかったのですが、都内近郊のクリーンな道路でペースを上げたところ、入力に対する動きの素直さに驚かされました。前後とも150mmのサスストロークは、妙に沈み込んだり、逆に強い反発を感じる場面は一切なく、150kgどころか100kg程度のトレールに乗り込んだかのような身のこなし。さらにハイペースになればブロックパターン(ピレリ・スコーピオン)のタイヤとあいまって、別の動きもあるかと思いますが、基本的には積極的にコントロールしたくなる運動性といえるでしょう。

また、ダートでの性格も予想すれば、路面追従のいいサスペンション、バランスの取れたポジションによって、舗装路と同じくコントローラブルな挙動を示すのではないでしょうか。もちろん、そうした場面では車重150kgという物理的な条件がものをいうはずで、テクニックが要求されることは言うまでもありません。とはいえ、優れた基本パッケージが足りないテクニックを大いに補ってくれることも確かではあります。

フロントホイールには110/80-19のピレリ・スコーピオンSTRと、BYBREのキャリパー、320mmディスクが装備され、スクランブラーの足元は高品位にまとめられています。オフにすることが可能なABS装備というのも、キャラにぴったりです。

ロングツーリングでも快適性が期待できるポジションの自由度

軽量、コンパクトな車体にパンチのあるエンジン、そして積極的にコントロールしたくなる足回りとなると「ファンテック キャバレロス クランブラー500は短距離走のアスリートが」と思うかもしれませんが、座り心地のいいシートはロングツーリングへの夢も膨らませてくれます。前後に長くフラットな作りですが、しっかりクッションも効き、先端部が細められたデザインは長距離でも「イケる」と感じました。そして、ポジションの自由度も高いので、楽なポジションや攻めるポジションなど好みに合わせてまたがることができそうです。

ただし、しっかりヒートガードが装備されているとはいえ、2本出しマフラーがシートエンド付近まで伸びているので、荷物の積載には慣れが必要でしょう。ここは、バックパックひとつだけ、着の身着のままフラフラとツーリングというのがスクランブラー500のキャラに合っているかと思うのですが、どうでしょう。

形状、素材、乗り心地どれをとっても満点をあげたくなるシート。ポジションの取りやすさも特筆もので、スパルタンなシートを想像しているとあっさり裏切られます。タンデムもちゃんとできそうですよ。

オプションパーツが豊富で「カスタムする楽しみ」も

輸入元のモータリストのカタログを見ると、驚くほどオプションパーツやカスタムパーツがラインナップされています。往年のオフロードマシンをイメージさせるタンクバッグや、ゼッケンプレートを模したフライスクリーンなど、これなら自分だけのスクランブラー500を作り上げることも楽しくなりそうです。

これまで、ファンティックは想定外だったとか、スクランブラータイプに興味がある、あるいは元気のいい単気筒エンジンに乗ってみたい、などという方々はぜひ試乗されてみてはいかがでしょう。必ずや、どこかのポイントで膝を打つ場面があるはずです。スクランブラー500ほど、乗り手の心にダイレクトに響くというバイクは滅多にありません。

ファンテック キャバレロ スクランブラー500主要諸元

【エンジン・性能】
種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:94.5mm×64mm 総排気量:449cc 最高出力:40HP/7500rpm 最大トルク:43.0Nm/6000rpm 変速機:6段リターン
【寸法・重量】
全長:2166 全幅:820 全高:1135 ホイールベース:1425 シート高:820(各mm) 車両重量:150kg タイヤサイズ:前110/80R19 後140/80R17 燃料タンク容量:12L
【価格】116万円

レポート/写真●石橋 寛 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実

問い合わせ

モータリスト :Tel 03-3731-2388

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