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ZERO MOTORCYCLES「価格帯は高めだが、高性能なスポーツ車をラインアップ」
6月上旬、南箱根バイカーズパラダイスを拠点にXEAM(ジーム)が取り扱う電動バイクの報道陣向け試乗会が開催された。
XEAMは世界各国の電動バイクブランドの輸入販売元となっているのだが、その中には電動バイク界のテスラと呼ばれる「ZERO MOTORCYCLES」(ゼロモーターサイクルズ)のモデルも含まれていた。
ZERO MOTORCYCLESはアメリカのカルフォルニア州に本拠を置く電動バイクブランド。電動バイクというと、原付クラスの街乗りモデルが中心というイメージもあるかもしれないが、ZERO MOTORCYCLESのラインアップは趣味性の強いモーターサイクルで、生産も自国で行っているのが特徴だ。
同ブランドのモデルは、すべて軽二輪の扱いとなる(*)。
とくにフラッグシップモデルのSR/FとSR/Sは定格出力40kWのモーターを搭載。日本では25kW以上の電動バイクは大型二輪免許がなければ乗ることができないので、まさしく電動バイクの最高峰といえる存在だ。もちろん電動バイクらしくクラッチレスの構造となっているので大型二輪AT限定免許でも乗ることができる。
*編集部注
道路運送車両法では、定格出力が0.6kW以下:原付一種、0.6kW超1.0kW以下:原付二種、1.0kW超:軽二輪という3つの区分しかない。
一方、運転免許区分に関わる道路交通法では、定格出力が0.6kW以下:原付免許、0.6kW超1.0kW以下:普通二輪免許小型限定、1.0kW超20kW以下:普通二輪免許、20kW超:大型二輪免許となる。
普通二輪免許で乗ることができるのがFXS、FXE、DSの3モデルで、いずれも最高出力34kW(46ps)の駆動モーターと7.2kWhのリチウムイオン電池を組み合わせたパワートレインとなっている。軽二輪ではあるものの、最高出力的には400ccクラスに匹敵する。
「モタードスタイルのFXE」普通免許で乗れるシリーズの最新機種
今回は発売間もない最新機種・モタードスタイルのFXEに試乗することができた。
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筆者は身長163cmと低めなこともあって、シート高が836mmとなっているモタードスタイルに気圧されたが、またがってみると意外にも安定しているという印象を受けた。エンジン車で同車格のモタードでは単気筒となることが多いが、エンジンの振動がないおかげで車体が安定しているように感じたのだ。
また、7.2kWhというそこそこ大きいバッテリーが、エンジン車でいうところの燃料タンクあたりにレイアウトされていることで「重心が高いのでは?」という心配もあったが、重量物であるモーターが車体中央の最下部に置かれていることで体感的な重心が低く、足つきがツンツンに近い状態であっても安心感につながったといえる。
最新の四輪EVに勝るとも劣らない洗練された乗り味
そしてアクセルを開けていくと、電動バイクという言葉から期待するドカンという発進加速は抑えられていることにも安心させられた。電動モビリティでは「モーターは回り始めに最大トルクを発生する」という、おなじみのうたい文句の異イメージが強い人も多いだろう。それゆえ電動バイクでも圧倒的な加速力を期待してしまうかもしれないが、モーターが本気で仕事をするとウィリーしてそのままバックドロップ状態になってしまう。
四輪のEVでもいえることだが、いかに発進加速を抑えつつ、それでも電動らしい力強さやスムースネスを感じさせるというのは、洗練した乗り味につながる重要なポイントだ。その点においてZERO MOTORCYCLESの仕上げは、さすがといえるレベルだった。
クラッチ機構がなく、モーターがカーボン製ベルトを介してダイレクトに後輪を駆動するという構造は、エンジン車に比べると圧倒的なレスポンスを感じさせてくれた。つまり電動らしさを満喫できながら、ライディングが必要以上にセンシティブにはなっていないという、いいとこ尽くしの乗り味となっていたのだ。
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135kgと軽量で乗りやすく、回生ブレーキの作動感もスムーズ
電動モビリティのポイントとしては回生ブレーキも挙げられる。これは減速エネルギーによって駆動モーターに発電させるというもので、上手に活用すれば航続距離を伸ばすことができる。
こう聞くと回生ブレーキを強いほどエネルギーを効率よく使えると思うかもしれないが、回生ブレーキが強いということは低いギアで強いエンジンブレーキをかけたようなフィーリングになってしまう。つまり回生ブレーキのセッティングというのも自然な乗り味を左右するポイントだ。
ZERO MOTORCYCLESのFXEは、その点においてもまったく不満のない仕上がりだった。電動バイクにありがちなネガは見事にカバーされていた。
さらに車重が135kgと軽く仕上げられていたのも乗りやすさにつながっている。四輪のEVでは電動化はバッテリーという重量物を積むことであり、それによってエンジン車より重くなるのは仕方がないという風潮もあるが、FXEはエンジン車とさほど変わりのない135kgという重量のため、駐車場での取り回しでも電動だからといって気構える必要がなく、扱いやすいものだった。
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ZERO MOTORCYCLES FXE主要諸元
[モーター性能]
最高出力:34kW(46.2ps) 定格出力:15.4kW(20.9ps)
[バッテリー性能]
種類:リチウムイオンセル バッテリー容量:7.2kWh(3.6kWh×2) 充電能力:9.7時間(100v/200v単相の場合) 最大航続距離:160km
[寸法・重量]
全長:2050 全幅:840 全高:1150 ホイールベース:── シート高836(各mm) タイヤサイズ:F110/70R17 R140/70R17 車両重量:135kg
[価格]
179万9800円
[車体色]
シルバー
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ZERO MOTORCYCLES SR/S「要大型二輪免許、294万9800円の究極車」
続いて、免許的には大型二輪扱いとなるSR/Sに乗ってみよう。ちなみに、車両としては軽二輪なので車検は不要となっている。
スタイルはフルカウルだがバーハンドルのアップライトなポジションで、ツアラー的なキャラクターを想像させる。シート高が787mmと低めなことも日常からツーリングまで守備範囲も広そうだ。
低く搭載されたバッテリーの総電力量は14.4kWhとEV軽自動車並みで、航続距離は259kmとアナウンスされている。モーターの最高出力は82kW(110ps)で、最高速度は200km/hをうたう。
バッテリーの充電には世界的なスタンダードといえるSAE J1772普通充電に対応しているため、電気自動車の普通充電設備がそのまま使える。EV用の充電設備を用意しているユーザーならば、日常的な充電で困ることはないはずだ。
SR/Sもアクセル開度に対する出力特性は見事にしつけられている。ライディングモードは「ストリート/スポーツ/エコ/レイン」の4パターンが設定されているが、とくにエコモードを選んでおけば低速域でも扱いやすく、スムーズな発進加速が味わる。大型二輪の電動バイクという響きに恐れることはない。
そうした扱いやすさはスポーツモードを選んでも変わらない。確かに発進加速はエコモードに比べると鋭くなるが、決して暴れ馬のような荒々しさはなく、電動モビリティらしいソフィスティケートされた加速を楽しめるのだ。
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領域によってはリッタースーパースポーツに匹敵する加速感が味わえる
それでも20km/hを超えたあたりで、もう一段階アクセルを開くとググっと加速が力強さを増す。筆者が普段乗っているのはホンダのスーパースポーツ・CBR1000RR-Rファイアブレードなのだが、この領域での加速感は、CBR1000RR-Rファイアブレードの1速での加速と遜色ないレベルにあると感じたほどだ。
たしかにSR/Sの価格は294万9800円と高価ではあるが、1000ccスーパースポーツ並みの加速を味わるとなれば「バリュー・フォー・マネー」としては納得できるかもしれない。しかも、エンジンからの熱気に我慢することなく、このパフォーマンスが体感できるのだ。この点は、エンジン車に対してアドバンテージがあるとさえいえる。
唯一気になったのがトラクション性能だ。コーナー立ち上がりの加速ではリヤのグリップ抜けを気にしながらのアクセルコントロールが必要な場面もあった。タイヤチョイスやサスペンションセッティングの変更で解決できそうな範囲の話ではあるが、より積極的にアクセルを開けていけるようなシャシー面の余裕があれば……とも思う。
とはいえ、圧倒的加速力を味わいたいという向きには、リッターバイクからの乗り換えを文句なしにオススメできるモーターサイクルになることだろう。
ZERO MOTORCYCLES SR/S主要諸元
[モーター性能]
最高出力:82kW(111.5ps) 定格出力:40kW(54.4ps)
[バッテリー性能]
種類:リチウムイオンセル バッテリー容量:14.4kWh 充電能力:4.5時間(208v-240v)/8.5時間(110v-120v) 最大航続距離:259km
[寸法・重量]
全長:2110 全幅:820 全高:1230 ホイールベース:── シート高787(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:229kg(バッテリー含)
[価格]
294万9800円
[車体色]
セルリアンブルー/スカイラインシルバー
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レポート●山本晋也 写真●佐藤正巳/川崎泰輝 編集●上野茂岐