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バイアスタイヤ界の大定番「ブリヂストン・バトラックスBT46」
月日が経つのは早いもので、2021年からホンダGB350の国内販売が始まって早一年。
ツーリング好きのオーナーなら、ぼちぼち1回目のタイヤ交換時期を迎えているだろう。そのあたりを踏まえて、当記事ではモーサイwebでオーナーズレポートを展開している柴田直行カメラマンの愛車を使い、タイヤの変更でGB350の乗り味がどう変わるのかを探ってみたい。テストに使用したのは、バイアス界の大定番と言われているブリヂストンBT46だ。
本題に入る前に説明しておくと、2020年から発売が始まったBT46は、ウェット性能と耐久性という面で改良が行われているものの、基本的なキャラクターは先代のBT45と同様のオールラウンドタイヤである。そして自分で言うのも何だけれど、バイアス事情に詳しい僕のBT45とBT46に対する印象は「間違いがないタイヤ」。
具体的な話をするなら、排気量や国籍や年代を問わず、どんなモデルに装着しても違和感は生じないし、乗り方や前後ショックのアジャストは一切不要。そういう守備範囲の広い特性だからこそ、BT45とBT46は世界中の多くのライダーから支持を集めているのだろう。
主張の希薄さとミゾの増加が心配
ただし今回のテストを行うにあたって、僕は一抹の不安を抱いていた。
と言うのも、誤解を恐れずに表現するなら、BT45とBT46は主張が希薄なタイヤなのである。主張が希薄だからこそ、どんなモデルに装着しても良好なマッチングが得られるわけだが、この種の試乗では、こんなに変わった!、純正タイヤとはまったく違う!、などというインパクトが欲しいところ。
また、日本仕様のGB350のために専用設計された、純正仕様のダンロップGT601(既存のアフターマーケット用と比較すると、安定性を強化している印象)に対して、トレッド面のミゾ面積がかなり増えることも、個人的には気になる要素。何と言ってもミゾ面積の拡大は、場合によっては安定感の欠如を招くことがあるのだから。
ブリヂストン バトラックスBT46
パッと見の印象は先代のBT45と同様。ただしウェット性能と耐久性の向上を目指したBT46は、フロントのトレッドパターンが逆向きとなり、リヤには新開発のシリカ配合コンパウンドを採用している。
ダンロップ アローマックスGT601(GB350純正タイヤ)
GB350の純正タイヤとなるダンロップGT601は、日本仕様のための専用設計。130/70-18のリヤは専用チューニングと言うべきかもしれないが、フロント用のHレンジの100/90-19は、既存のGT601には存在しなかったサイズだ。
BT46を履いたGB350は「ムチャクチャよく曲がる!」
エッ!?、まさかそう来るとは……。BT46を履いたGB350で走り始めて数分後、予想外の変貌に僕は驚くこととなった。
理由はハンドリングの軽さだ。
そもそもノーマルのGB350に対して、僕は1クラス上の重厚さを感じていたのだが、BT46を履くと逆に250ccクラスのよう。この変貌をどう感じるかは人それぞれだが、乗り手の操作に対する車体の従順な反応に、僕は素直に喜びを感じた。
とはいえ本当の驚きは、撮影場所のワインディングに足を踏み入れてからだった。端的に言うと、BT46を履いたGB350はムチャクチャよく曲がるのだ。まず直進状態から車体を傾ける際に、純正仕様のGT601のような抵抗を感じないし、そこからフルバンクに至るまでの動きも至って軽やか。
中でも、右へ左へとコーナーが連続する状況、S字的な場面での動きは爽快で、僕の頭にはノーマルの試乗ではまったく出てこなかった、単気筒ならではヒラヒラ感という言葉が浮かんだ。いやはや、まさかGB350がこんな資質を隠し持っていたとは。
さらに言うならBT46は、路面の凹凸の吸収性も秀逸。例えば車体がバンクしている最中に路面の凹凸を発見すると、ノーマルの場合はちょっと車体を起こしたくなるものの、BT46ならそのまま突っ込んでもOK。もちろんこの資質は、ワインディングでの運動性だけではなく、ロングランにおける快適性にも貢献するだろう。
その一方で、試乗前に心配していたミゾ面積の増加によるマイナス要素はほとんどナシ。もっとも厳密に言うなら、高速道路での直進安定性はノーマルに軍配が上がるのだが、僕が危惧していた、ワインディングの下りコーナーで大きな荷重がかかったときのフロントまわりの頼りなさは、まったくと言っていいほど感じなかった。
さて、そんなわけでBT46にかなり好感触を抱いた僕ではあるものの、エントリーユーザーやリターンライダーを含めた、不特定多数の乗り手を想定するなら、しっとり安定指向の(味付けが行われたように思える)純正仕様のGT601は、あれはあれでひとつの正解だと実感。
とはいえスポーツ指向のライダーには、僕はBT46をオススメしたい。
ちなみに、柴田カメラマンのGB350の走行距離は約3000kmで、ノーマルタイヤはまだまだ賞味期限内だが、今回の試乗でBT46を味わった後は、ノーマルに戻そうという気持ちはならなかったようだ。
純正GT601とBT46、プロファイルの違い
乗り味は大きく異なる純正仕様のGT601とBT46だが、プロファイルに差異はなく、ホイール装着時の外径と幅も同様だった。
フロントタイヤの比較
リヤタイヤの比較
交換作業はレーシングマックス府中店に依頼
GB350でタイヤテストを行うにあたって、交換作業を担当してくれたのはレーシングマックス府中店。同店の代表を務める久下さんのタイヤに関する知識は膨大で、お客さんのどんな質問にも真摯に対応。作業は迅速かつ丁寧で、ホイールベアリングやブレーキ、ドライブチェーン+スプロケットなどの点検・整備も行ってくれる。
レーシングマックス府中店
レーシングマックス府中店の代表を務める久下功二さんは、1968年生まれの54歳。現在はホンダ NSR250Rやドゥカティ 749Sなどを愛用している。なお同店では幅広い車両のタイヤ交換を受け付けているが、クルーザーとアジア系スクーターに関しては要相談とのこと。
〒183-0045 東京都府中市美好町1丁目22-8
TEL:042-362-1819 https://www.driders.com/
レポート●中村友彦 写真●柴田直行 編集●上野茂岐