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GB350S「スポーティなデザインで車重もスタンダードGB350より軽い」
2021年4月から発売されているスタンダードのホンダ GB350は、鼓動感はあっても振動の少ない空冷単気筒エンジン、信頼感のある落ち着いたハンドリングと、バイク本来の操る気持ち良さと万能性が魅力だ。
突出しているところが何もない代わりに、穏やかで扱いやすく、万人に勧められる極めて普遍的なバイクである。
そして2021年7月に発売されたバリエーションモデル「GB350S」は、スタンダードからシート、ハンドル、リヤフェンダーを変更。
リヤタイヤはインチダウンしたうえでやや太いタイヤを採用して、そのスタイリングイメージをスポーティーに変えたモデルだ。
フォークブーツが装備されるほか、エキゾーストパイプやマフラー、リヤサスペンションはブラックとし、メッキパーツを控えた仕上げとしている点もGB350Sの特徴だ。
特にリヤ周りのスタイリングは、スタンダードのGB350よりモダン。ストリートファイター系のような外観で、灯火類もスタンダードと異なる。
前後フェンダーはスタンダードがスチール製だが、GB350Sは前後ともに樹脂製で、GB350Sの車重はスタンダードより2kgほど軽い178kgとなっている。
ライディングポジションを比較する
見た目だけでなく、ライディングポジション、エンジン特性、そしてリヤタイヤと車体セッティングの変更によって、乗り味もややスポーツ指向に振った性格となっている
まず、ライディングポジションだが、外観からもスタンダードと異なることは容易に想像できるだろう。
実際に2車にまたがってみた印象を比べると、スタンダードはハンドルがライダーに近く、ステップも前方に位置するため上体が直立し、非常にゆったりとしたポジション。
対するGB350Sは、ハンドルバーの高さはスタンダードよりも5mm低くなっているほか、その形状は手前への絞りが少し浅くなっているので、ライダーからやや遠くなっている(ハンドル幅自体は800mmで2車とも同じ)。
また、スタンダードのシフトペダルはチェンジシャフト直結のシーソー式ということもあって、ステップ位置はチェンジシャフト付近とかなり前寄り。
GB350SのステップはスタンダードのGB350より後退した「バックステップ仕様」ではあるのだが、結果、おおよそ一般的なバイクのステップ位置となっている。
シート高は両車ともに800mmだが、この少しだけ後方に移動したステップとハンドル形状の違いによって、GB350Sはスタンダードよりもわずかに腰高で前傾する感じで、一般的なネイキッドモデルに近付いたと言えばいいだろう。
足着き性は、GB350Sのシートは前端部がスタンダードGB350よりやや幅広いこともあり、身長170cmではカカトがベタ付きするスタンダードGB350よりもわずかにカカトが浮く。
それもあってGB350SはスタンダードGB350より腰高に感じるが、写真のようにGB350Sは全くの普遍的なネイキッドモデルの範囲に収まる。
また、シート形状からかニーグリップは心持ちGB350Sの方がしやすく感じた。
GB350Sのハンドリングは結構違うほか、エンジン特性も微妙に異なる
エンジン特性はECUの設定変更で、これまた「少しだけ」低回転域のレスポンス性がシャープになっている。
ただし、これはスロットル開け始めで「何となくツキが良い」といったレベルで、乗り比べない限り分かりづらいだろうし、スタンダードGB350の持つ鷹揚な性格で鼓動感が気持ち良いエンジンの特性はGB350Sでもまったく変わらない。
GB350SとスタンダードGB350の走りの違いを生み出している一番のポイントは、リヤタイヤのサイズと車体セッティングの変更だろう。
リヤタイヤはスタンダードGB350の130/70-18(バイアス)に対し、GB350Sが150/70R17(ラジアル)であり、その外径はスタンダードGB350の640mmに対してGB350Sは642mm程度と思われ、ほぼ同じである(……と、ホンダも説明している)。
しかし、タイヤ幅はスタンダードGB350:130mmに対してGB350S:150mmと明らかに太くなっている──そもそも、このサイズの変更の狙いは、よりスポーティーな外観スタイリングのためのフィーチャーではあるが、やや前傾気味になったそのポジション、タイヤサイズ変更に合わせて調整されたスイングアームの締め付けトルク(車体剛性を抑制する方向)によってGB350SのハンドリングをスタンダードGB350とはやや異なったものとしている。
結果的にそのハンドリングは、ややソリッドになった、あるいはややシャープになった感じである。
スタンダードGB350は大径で細い前後タイヤによる安定感と信頼感が特徴(高い面圧、ジャイロ効果などが理由)だが、GB350Sでは19インチのフロントはそのままにしてリヤが太くなったことで、そもそもの性格が少し軽快になったと思えば良いだろう。
2車の違いを分かりやすく言うと、街中などの低速の取り回しでスタンダードGB350がゆったりなら、GB350Sはキビキビだし、高速時の切り返しなどではスタンダードGB350は極めて安定志向が強いのに対し、GB350Sはもう少しナチュラルという感じである。
ただし、それと引き換えに、細い大径タイヤが「ゴリゴリと」路面を掴むようなスタンダードGB350の感覚はやや希薄になっているようにも思える(当然ながら悪路の走破性も変わっているはずだ)。
ちなみに、スタンダードGB350と同じフロントタイヤは100/90-19で幅は100mm程度。
対してGB350Sのリヤタイヤの幅は150mmだから、重箱の隅を突くようなことを言えば、フルバンクに近づくにつれ前後タイヤの回転センターがそれなりに変化することも考えらる。
直進時とフルバンク時では、そのバランスがどのくらい変わるのか気になるところではある。
GB350Sはどんなユーザーにオススメ?
結論としては、GB350SはスタンダードGB350の持つ性能を現代的なネイキッドスタイルにパッケージングしたモデルと言ってもよく、日常から旅先のちょっとした林道までワイドに使えるスタンダードGB350、それよりはややスポーティーかつスタイリッシュに走りたいGB350S、そんな棲み分けイメージになるだろう。
試乗レポート●関谷守正 写真●柴田直行/ホンダ 編集●上野茂岐
ホンダ GB350S主要諸元
[エンジン・性能]
種類:空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク:70.0mm×90.5mm 総排気量:348cc 最高出力:15kW<20ps>/5500rpm 最大トルク:29Nm<3.9kgm>/3000rpm 変速機:5段リターン
[寸法・重量]
全長:2175 全幅:800 全高:1100 ホイールベース:1440 シート高800(各mm) タイヤサイズ:F100/90-19 R150/70R17 車両重量:178kg 燃料タンク容量:15L
[価格]
59万4000円