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インド向けがベースだが、GB350は熊本製作所で組み立てが行われる
すでに知られているようにGB350は、インドで発売されているハイネスCB350とほぼ同じ構成内容である。しかし、国内車検制度への対応や塗装品質管理などの理由で、インド生産を中心にした部品類を熊本製作所において組み立てている。
インドにおけるハイネスCB350の競合は、地場メーカーとして圧倒的なシェアを誇るロイヤルエンフィールドの単気筒モデルであり、ロイヤルエンフィールドの持つ旧時代的な設計や構造は、現代においては心地良い単気筒フィーリングを醸し出している。
ホンダGB350のエンジンを中身も外見も写真で解説(15点)
GB350の空冷単気筒はロングストローク&低圧縮
これを上回るフィーリングを実現するためにハイネスCB350、つまりGB350では「気持ちの良い走りを楽しむため、旧車の持つフィーリングや心地良さのエッセンスだけを、最新技術によって抽出したと言ってもいい」と開発陣は語る。
GB350のエンジンは低〜中回転のトルク、明確な鼓動感や単気筒フィーリングを狙った完全新設計であり、ボアストローク70mm×90.5mmで、最近の二輪用エンジンでは異例とも言えるロングストロークに設定(ボアストローク比は約1.3)されている。
そして、心地良さの要素であると言う燃焼振動(4サイクルエンジンの2行程1燃焼で生じる振動。ホンダは「0.5次振動」と呼ぶ)をクローズアップするために、不快な振動に繋がる1次振動(クランク1回転による振動)を抑制する1軸バランサー+メインシャフト同軸バランサーを採用。
さらに、質量のかなり大きなクランクマス、9.5:1というNAエンジンでは低めの圧縮比、ピストンの摺動抵抗が低減され燃焼圧力がダイレクトに伝わりやすいオフセットシリンダーなどの採用によって、粘りあるトルク感を実現するなど、細かな工夫が施されているのだ。
言ってみれば、実用性に加え趣味性を重視した「単気筒フィーリング」実現のために非常に手間をかけた、贅沢な作りのエンジンになっている訳である。
何しろ、わずか3000rpmで最大トルクを発生するのだから、ドッドッドッドと、力強くゆっくりと回る昔ながらの「発動機」のフィーリングがイメージできるだろう。これは、これまでのホンダ製エンジンにはまったくなかった、新しい個性である。
外観はトラディショナルでも内部は最先端の技術が用いられている
シリンダーをクランク軸中心から10mm前方にオフセットし、シリンダー内壁にかかるピストンの摺動抵抗を抑制することで、フリクション低減と燃費向上を狙う。
また、燃焼圧力をより直線的に伝えることによって、鼓動感の向上にも貢献。このためコンロッド形状は前後非対称である。
さらに、近年では稀とも言える質量の大きいフライホイールを採用。その慣性マスによって爆発の「一発」ごとに粘りある燃焼フィーリングが追求されている。
「低〜中回転トルク超重視」エンジンがもたらす走りとは?
極低回転の粘りがあるエンジン特性によって、発進はクラッチ操作だけで難なく走り出す。そこからはあまり回転を引っ張らず、スロットル開け始めの駆動感やサウンドを楽しみながら、早め早めのシフトアップを行うと80km/hくらいまではあっという間だ。
その加速は軽快そのもので実に気持ちが良い。この性格は、インド市場におけるユーザーの嗜好性を意識したそもそもの狙いであり、GB350の大きな特徴となっている。
トランスミッションは5速で、1速がローギヤード、2〜4速がクロス気味で、5速はハイギヤード。5速のノンスナッチスピードは30km/h以下であり、その気になればほとんどの速度域をカバーしてしまうほど粘りのある特性だ(5速50km/hで2000回転)。
GB350は高回転まで回しても不快な振動ナシ!
最高速はメーター表示で120km/hちょっと。
ビッグシングルというと特に高回転になると振動が大きくなるのが当たり前というイメージがあるが、ふたつのバランサーを装備するGB350にはそういった大きな振動はなく、高速走行などは2気筒エンジン並か、それ以下のレベルで快適だ。
力強い駆動感と粘りのある低回転から一気に回し上げても、エンジンはスムーズに回るし、車体を震わすような大きな振動も、手足がビリビリするような細かな振動もほとんど感じさせないのだ。
半面、高回転域での回転の伸びはややゆっくりで、力強さはあまり感じさせず、スムーズなフィーリングだ。
そして、音や鼓動感はとても明確で気持ちが良い。これは開発陣が「音と鼓動を楽しむ走りとは? 心地良い乗り味とは?」と、その性能を追求したことで実現した、振動・サウンド・駆動感が一体になったGB350独特のフィーリングと言っても良いだろう。
この音の良さもGB350の特徴だ。「シパタタタッ〜」と小気味良く加速するその感じは、まさに単気筒エンジンのフィーリング。
「いい音だね〜。昔のGBも持っているけど、これは全然違うね」と、偶然信号待ちで並んだPCXのオーナーが思わず声をかけてきたほどである。
バリエーションモデルGB350Sはエンジンフィーリングが少し違う!
リヤホイールが小径・ワイド化され、ハンドルやシートも専用のものとなるスクランブラー風バリエーションモデルのGB350S。
カタログスペック上の最高出力20馬力/5500rpm、最大トルク3.0kgm/3000rpmという数値はGB350と同一ながら、スロットルレスポンスはGB350よりリニアな特性となっているという。
ホンダ GB350主要諸元
[エンジン・性能]
種類:空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク:70.0mm×90.5mm 総排気量:348cc 最高出力:15kW<20ps>/5500rpm 最大トルク:29Nm<3.0kgm>/3000rpm 変速機:5段リターン
[寸法・重量]
全長:2180 全幅:800 全高:1105 ホイールベース:1440 シート高800(各mm) タイヤサイズ:F100/90-19 R130/70-18 車両重量:180kg 燃料タンク容量:15L
[車体色]
マットジーンズブルーメタリック、マットパールモリオンブラック、キャンディークロモスフィアレッド
[価格]
55万円
レポート●関谷守正 写真●柴田直行 編集●上野茂岐