少しずつではあるものの、バイクの世界にも電動化の波がやってきていることを感じる昨今。実際、国内で購入することができるモデルも増えてきている。ただ、そのほとんどは海外モデルで、国内メーカーでは、ヤマハの「E-Vino」と2018年ホンダが発表した「PCX ELECTRIC」という少々寂しい感じはあった。
だが、昨年のモーターショーでホンダが電動モデル第二弾となる「ベンリィeとジャイロe」を発表した。どちらも見た目は、ガソリンモデルと大きく変わることなく実にシンプル。まぁ、ビジネル用モデルなのでそれは致し方ない。
それよりも気になったのは“走り”。世界のホンダが満を持して登場させたモデル。加速は?乗り心地は?どのくらいの距離を走れるのか? 会場で見た時から実際に乗ってみたいと思っていた。
ベンリィeで「電欠」になるまで走行!!
今回ロングランに使用したモデルは、ベンリィeシリーズの原付二種タイプで、大型リヤキャリアや大型フロントバスケット、フットブレーキにリヤブレーキロックノブ、そしてナックルガードと装備充実の「ベンリィe:Ⅱ プロ」。ホンダのホームページでは新聞配達仕様とされている、まさに配達のプロ仕様モデルだ。
EVシステムは電動モデルとして2018年に登場したPCX ELECTRICと同じ、電圧48Vのモバイルパワーパック2個を直列に接続した96V系のシステムを搭載。スペックをPCX ELECTRICと比べてみると、ボディはコンパクト&軽量(130kg)で定格出力(0.98kW)と最高出力(3.8PS)は同等、そして一充電走行距離は2kmアップの43kmとなっている。
またモーターのユニット化によってメンテナンス性を高め、スターターに分布巻を採用し、モーターの振動や発生音の減少を実現している。
というわけで、さっそくテストに出発!
スタート時、アクセルをあけると電動バイク特有のグッという加速は感じられるも、驚くほどの勢いではなく、どちらかというとマイルドな感じ。また原付二種モデルなので、道路の端っこを走るのではなく、堂々と中央を走る。
割とスムーズにクルマの流れにも乗ることができ、60km/hくらいまではしっかりと加速感も感じられた。とかくストップ&ゴーの多い街中でのライドもスーッと気持ちの良い出だしでストレスもなく快適だった。
信号待ちで感じる静けさも電動バイクの特徴。エンジン車であれば、こういった場面では、エンジン音や排気音が耳に響き、鼓動を感じる時間となるが、このバイクの場合は少し違う。周囲の音に耳を傾け、エンジン車とは違った音の世界が味わえる。また、無音は疲労感も和らげてくれる気もした。
ついに「電欠」のカウントダウンが……!
17.8kmほど走ったところで神奈川県に入る。この時点でバッテリー残量は58%。これまでエコライドを全く気にすることなく、ストップ&ゴーを繰り返し、またクルマの流れに自然と乗る感じできて、バッテリー残量は半分強。このペースで行けば45km位は走れそう。金沢文庫(※編集部より約50km前後)までは無理かもしれないが……。
国道1号線を走り、横浜のみなとみらい地区を抜けて国道16号で一路横須賀方面へ。道は比較的空いていて、気持ち良く走ることができた。徐々に気温も上がってきたので、水分補給のために途中コンビニエンスストアを探す。信号待ちでメーターを見るとバッテリー残量はなんと8%!場所は横浜市磯子区の屏風ヶ浦交差点、編集部から39kmの場所だった。
休憩を取ったコンビニが、編集部から39.7km地点となり、バッテリー残量は6%。ついにバッテリー切れまでのカウントダウンがはじまった。
水分補給後は、常にメーターとにらめっこ。走り進めるごとに、バッテリー残量が5、4、3……と減っていく。
杉田の交差点を過ぎた時点でバッテリーの残りは3%。そしてここから追い打ちをかけるように坂道が続く、やはり勾配のある場面では、当然モーターに負荷がかかり、フラットな路面と比べるとバッテリーの減りが早くなる。ただ、走りに関しては1桁になっても、5%を切ってからもそれほど大きく変わるような感じはしなかった。
緩やかだが長めの坂道を越えた地点で、ついにバッテリー残量が0%に! この時点で41.2kmを走行していたが、バッテリー残量0%のまま走り、信号待ちでスタッフに合図!
そこが、京浜急行の京急富岡駅前を少し過ぎたシーサイドコーポ入口交差点、編集部から42.9kmの場所だった。
メーターはすでにバッテリー残量0%を表示していたが、しばらくそのまま走り続けてみた。心情的に0%になるとアクセルを開ける手も若干弱気に…。分かったのは0%になったからといってパタッと止まる訳ではないようで、その後も数kmは走れるようだ(実際問題として危険なので真似はしないようにして欲しい)。
結果、東京都中央区にある編集部から横浜市金沢区、横須賀街道の西芝一丁目交差点まで、メーター距離にして44.8kmを走ることができた。
ルートとしては、都内から現地まで、一部緩やかな坂道等はあったものの、基本的にはフラットな道を通ってきた。運転もエコライドを意識することなく、幾度となくストップ&ゴーを繰り返したり、急加速や高速域での走行も織り込み、実用想定で走ってみての距離。
カタログの一充電走行距離(60km/h定地走行テスト値)が43kmということなので、それを上回る流石ホンダと思える距離を走ることができたのである。
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