試乗インプレッション

【スズキ ジクサー150試乗】約38万円の150cc車は50代家族持ちの救世主か「排気量は小さいのに、回さなくてもよく走る!?」

50代家族持ちのバイク趣味を考える

50代の男が、新しいバイクを買いたいと思う。だが、自分の経済(収入)レベルも含めて、バイクライフに支出できる額が第一に気になるところ。もし子供がいて扶養のためのお金がかなり必要な場合、バイク代に3ケタ万円をポンと投入するのは相当難しい。

現在の世の中、50代半ばの男性(大卒)の年間平均収入が概ね510万円台(厚生労働省調べ)と記されているが、たとえば月のお小遣いが4~5万円として、この中からローンを組むなら、バイク本体に費やす資金は自分の感覚では100万円以下、いや限りなく50万円に近いほうがいいなぁ……と、新車価格だけを目安にあーだこーだ悩んでいたところで辿り着いたのがスズキのジクサーシリーズだった。

ジクサーシリーズは250ccモデルとしてカウル付きのジクサーSF250(51万4800円)、ネイキッドのジクサー250(48万1800円)を展開。生産コストの低いインド生産であるのを利して、国産ブランドの新車でこの価格は250ccクラスではかなりの安さだ。これは買いだろうと感じつつ、プロの試乗記や一般ユーザーのネットレビューを見てもかなりの高評価。
かぜん興味を覚えてきたが、実はこの2台の250ccモデル以上に目を引いたのがもうひとつのジクサー、150ccモデルだった。

スズキ初代ジクサー150(2017年〜)

■インド生産モデルとして現地では2014年に発売、日本では2017年1月から販売を開始した初代ジクサー150。燃焼効率アップ、ローフリクションでパワーと低燃費を実現した154cc空冷単気筒「SEPエンジン」をストリートファイター風フォルムの車体に搭載。

スズキ2代目ジクサー150(2020年〜)

■フロントマスクデザインを新たにし、LEDヘッドライト、前後分割式シート、スイングアームマウントのリヤフェンダー等の新採用で、スポーティイメージの向上をねらってモデルチェンジした2020年型。フロントにABSブレーキも搭載。

現行型(2代目マイナーチェンジ版)

■2021年のカラーリング変更を経て、2023年1月から発売の現行モデルは平成32(令和2年)排出ガス規制に適合すべくエンジン&吸排気系などに変更が加わった。これにより最高出力、最大トルクや燃費数値などが若干ダウンした。

妄想の中の愛車、スズキ ジクサー150

ご存知のことと思うが、高速にも乗れて、車検のない軽二輪はコストパフォーマンスのいいカテゴリーだ。軽二輪というとラインアップの多い250ccモデルが想起されるが、軽二輪は厳密には125cc超~250cc以下までの排気量に当てはまる。よって昨今増えてきた150〜200ccのスクーターも軽二輪であり、最近では150ccのマニュアルトランスミッションのスポーツモデルもあったりする。

そうした排気量アンダー250のモデルが増えた背景には、日本国内の事情ではなくアジア市場での需要が大きく影響しているのだが、ここでは詳しくは触れない。ともあれそうした現代事情からジクサー150はインド生産車として生まれ、250よりさらに安い38万5000円というプライスタグを付ける。そこが、個人的に強く興味をそそられたのである。

机上で、ジクサー150のオーナーとなったことを想像してみる。同車の性能は最高出力9.6kW(13ps)/8000rpm、最大トルク13Nm(1.3kgm)/5750rpmで、車両(装備)重量は139kg。
最高出力は同車の初代モデル(2017年登場)で14psだったものが2022年から排出ガス規制に対応して1psダウンの13ps。最大トルクも初代の1.4kgmから1.3kgmにダウンしている。そしてこれらの数値、高速に乗れる二輪車の中では正直かなり低い部類の数値だ。

125cc以下の原付二種ではなく軽二輪に惹かれるのは、下道の渋滞などを避けて目的地まで早く着きたいときなどに高速も使いたいからだが、この性能が心もとないなぁ……。現在筆者が所有している旧式のセロー225(2001年式)は最高出力は20psで、高速で100km/hは普通に出て新東名高速道路の120km/h区間でもその上限にギリギリ届く程度の性能だ。なのにジクサー150はそれよりも性能スペックが下なのだ。

だが、これ以上想像をたくましくしていても仕方がない。というわけで、スズキ ジクサー150を1週間近く色々なシチューエーションでテストをしてみることにした。

過去にもあった「ギリギリ軽二輪」ホンダ CB135

ホンダ CB135(1970年)

■ジクサー150の154ccは、高速道路に乗れる現行市販車では一番くらいに小さい排気量だが、過去にはホンダ ベンリイCB135(1970)のようなミニマムなモデルも存在した。同車はCB125(空冷並列2気筒)の排気量拡大版で、ボアを2mm拡大して136ccに。最高出力15ps/1万1000rpmの性能で高速道路走行可能をセールスポイントとしたものの、上級モデルにCB175も併売されたため存在価値は薄く、一代限りで生産中止となった。

車体は軽量コンパクトだが、乗車感覚は窮屈ではない

テストを行ったのは2023年モデルのジクサー150で、色は鮮やかなトリトンブルーメタリック。走行距離は750km程度という、ほぼ新車に近い状態の個体だ。実車を前に眺め、またがって感じるのは、車体は軽快そうで取り回しも軽いのに、車上から見える風景は「意外に立派」ということ。小さな排気量のモデルの割にアイポイントが高く、ライダーがホールドした具合も相応のボリュームがあって意外に堂々としている。

シート高はそこそこ高さがあり、173cmのライダーでは両足のカカトが接地する程度。車体をホールドするニーグリップ部の幅は250ccクラスのそれと変わらない幅があり、ハンドル幅も同様。それらの印象が功を奏し、案外高いアイポイントと相まって、小さい排気量という引け目を感じさせないのだろう。

ただし、小振りなメーターパネルを含めたハンドルまわりや前輪部はすっきりしており、取り回し具合を含めて150なりの軽快さを感じさせつつ、またがったときは必要以上に小ささやコンパクトさを覚えさせない。小さい排気量だからこぢんまり作るのでなく、乗り手が安心できる相応のボリュームと高い視点を確保しているんだな、と感じさせるのが好印象だ。

スズキ ジクサー150の足着き性

身長173cmのライダーの乗車ポジション。足着き性はちょうど両足カカトまで接地。アップライトな上体の姿勢で、アイポイントは意外と高め。シート座面の前傾が最初は少し気になるが、ステップ、シート、ハンドル位置の3点関係は自然で違和感のないものだ。

150ccロングストロークエンジンの利点

走り出す前に触れておきたいことが、もうひとつ。空冷単気筒2バルブの154ccエンジンのことだ。このエンジンの良好な燃費に触れているwebの記事やレビュー、動画が非常に多く、リッター50km/hも不可能じゃないのだとか。その経済性、一昔前の鉄製スーパーカブ(キャブレター時代の90など)と同等ということになるが、これは驚異だ。
スーパーカブ90の出力(7ps)での数値ならまだしも、その約倍近い最高出力の高速も乗れるバイクでの燃費として、本当に大したもの。この辺もがぜん乗って試したくなる動機となった。

走り出して間もなく、ジクサー150のエンジンの特徴をひとつ実感した。クラッチミートとともにスロットルを普通に開けると、線の細さがなくスルっと素直に車体を進める。
だが走り出しのごく最初はそんなにシャープではなく、スロットルをガバ開けしても鋭い回転上昇はなくトトトッとした鼓動を伴いながら比較的おっとりと立ち上がる。ところが、そこから中回転に向かうほどに回転が力強くなるのだ。

そしてエンジンの爆発ごとに、割と歩幅の長そうな後輪の蹴り出しを感じさせる(あくまで「小排気量エンジンにしては」というカッコ付きだが)。スロットル操作(開度)に比して速度の乗りがいい印象なのだが、エンジンスペックを見返して、その理由が分かったような。ジクサー150のエンジン、同クラス帯のスポーツバイク用よりも、かなりロングストローク型なのだ。排気量は違うが、同じくスズキのGSX-S125と比較してみると……。

【ボア・ストローク】
ジクサー150 56×62.9mmの154cc
GSX-S125 62×41.2mmの124cc

【最高出力と最大トルク】
ジクサー150 13ps/8000rpm 1.3kgm/5750rpm
GSX-S125 15ps/1万500rpm 1.1kgm/8500rpm

【燃費消費率】
ジクサー150 51.0km/L(定地燃費値、60km/h2名乗車時)、50.0km/L(WMTCモード値、1名乗車時)
GSX-S125 45.8km/L(定地燃費値、60km/h2名乗車時)、43.5km/L(WMTCモード値、1名乗車時)

最高出力では150ccのジクサーより、125のGSX-Sのほうが2ps上回るものの、両車の発生回転数に注目してほしい。出力では2500rpm、トルクでは2750rpm低い回転数でジクサー150は最高値を発生。
そして最大トルク値はジクサーが上。昨今は小排気量クラスでも好燃費指向のロングストローク型は徐々に増えているが(例:ホンダのスーパーカブ110、スーパーカブC125やグロムなどの125系、ディオ110)これも時代の要請なのだろう。

インドを含む東南アジア地域では、燃費がいいモデルが高性能バイクと評価される──なんて話があるようだが、そうした事情がジクサー150のエンジン特性にも反映されているのか?
いわば、小排気量車でも中低速でのトルクを重視して実用域での速度のノリをよくしつつ、良好な燃費もねらう方向だ。そしてこの狙いでの150ccエンジンの特性が、一般道での乗りやすさに利しているのだった。

ジクサー150のパワーユニットは、現代では機構的に高性能系とは言いにくい空冷4サイクルOHC2バルブ単気筒だが、燃焼効率を上げ、フリクションロスを低減してパワーと低燃費を実現したSEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)と称する。ロングストローク型+インジェクションECUの設定も同車の性格をよく表している。

スズキ GSX-S125:原付二種のスポーツネイキッド

排気量では原付二種枠となるが、車格やスタイルを含め、近似性もあるスズキGSX-S125。だが、こちらは従来の小排気量スポーツの傾向を踏襲した水冷単気筒DOHC4バルブのショートストローク高回転型エンジンを搭載し、最高出力はジクサー150より上の15psを発揮。価格はジクサー150より高い42万200円。

スズキ ジクサー150街乗りレポート「通勤にもちょうどいい」

ジクサー150の発進マナーは前述の通りで、5000rpm前後まで回転を上げつつ1~4速までシフトアップして行くと、クルマの流れを十分にリードする。そしてこの5000rpm台という回転域が生きのいいことは、最大トルク発生回転数が5750rpmであるのが裏付ける。一般道で同車がまったくパワー不足を感じないのはこのおかげで、それでいて小排気量車の割に回し切って無理してる感のない特性がストレスを生まず快適なのだ。

軽二輪クラスのマニュアルミッション付きスポーツモデルの場合、油断していると125ccクラスのスクーターに発進加速で負けるという場面は多々あるが、ジクサー150では意外と互角。それもこれも、同車のエンジン特性によるところが大きいからであり、おまけにどの回転域でも気になる振動が出ないことも含め、相当に使いやすい下道マシンと言える。

ただし、気になるところがなくはない。ストリートファイター風のフォルムのためシート座面は前下がりで、その傾斜が100kmくらい走るとお尻が痛くなる予兆を感じさせるのだ。またシフトタッチは節度感があるものの少し硬めなことも気になったが、これは慣らし段階特有なものかもしれない。

とはいえ、ジクサー150がなかなかいいコミューターだというのは間違いなく、ならば、次のステージではどうなのかが気になった。こいつで週末に足を伸ばして、郊外へひとっ走り、そして高速道路に乗ってみるとどうなるのか。引き続きレポートしていきたい。

オドメーターで走行765kmというほぼ新車に等しいテスト車。まずは満タンまで給油、驚異の燃費というウワサも満タン法で測ってみることにする。満タン時の燃料計はバーグラフ6目盛りだ。
とりあえず、給油口の片縁に燃料が若干浸るくらいに入れてからスタート。
まずは通勤を含めた下道走行での印象を当記事ではレポートしたが、以降は同車各部の機能性、高速道路でのパフォーマンスやワインディングでの印象、気になる「実燃費」などを紹介する。

スズキ ジクサー150主要諸元

■エンジン 空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク56.0×62.9mm 排気量154cc 圧縮比9.8 燃料供給装置フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル

■性能 最高出力9.6kW(13ps)/8000rpm  最大トルク13Nm(1.3kgm)/5750rpm

■変速機 5段リターン 変速比:1速2.750 2速1.750 3速1.300 4速1.045 5速0.875 一次減速比:3.181 二次減速比:3.000

■寸法・重量 全長2020 全幅800 全高1035  ホイールベース1335 シート高795(各mm) キャスター24度50分 トレール100mm タイヤ F100/80-17 R140/60-17 車両重量139kg

■容量 燃料タンク12L オイル1.25L

■価格 38万5000円

レポート●阪本一史 写真●スズキ/モーサイ編集部

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スズキ
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スズキお客様相談室 TEL:0120-402-253

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