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SUVスクーターがブームになる?「人気上昇中のオフロードテイストマシン3車が熱い!!」

四輪にあった「シティSUV」の流れがバイクにも!

これは2022年6月に発売されたヤマハの最新155ccスクーター、X FORCEのプロモーション画像。まさにSUVスクーター! 街を荒野に見立てて、仕事に趣味に、飾らず便利にかっこよく人生を走る……そんな表現を感じたのだが、みなさんはいかがだろうか?


2022年、バイクブームと言われる今日。二輪免許取得者の増加やユーザーの若返りといったニュースが飛び交っており、二輪業界もファンも、活気付いています。

現在のバイクブームは車種の多様化が特徴です。中でもアドベンチャー系とネオレトロ系が2大巨頭でしょう。しかし一方で、近年は鳴りをひそめていたものが人気の兆し。それがスクーターです。かつてビッグスクーターブームというものもありましたが、今のトレンドは名付けて「SUVスクーター」です。

四輪でのSUVは、本格的なゴツいクロカンベースのものから、ライトユーザー向けで車格も小さい「シティSUV」なるものまで幅広く登場しました。そのシティSUVのイメージを持つスクーターが増加傾向なのです。それではSUVスクーターの中心的な存在の3車種を見てみましょう。

ホンダ ADV150「SUVスクーターのベンチマーク」

SUVスクーターの開祖といえる存在がX-ADVです。アドベンチャーバイク・NC750Xのエンジンとフレームを核にしたスクータータイプのモデル(*)で、オフロード走行を想定して足まわりなども専用設計に。
従来のスクーターでは考えられない悪路走破性、そして逆に通常のスポーツバイクでは持ち得ない市街地での使いやすさを獲得。ヨーロッパを中心にヒットしています。2017年に登場し、2021年に早くもフルモデルチェンジしたことがヒットの証明ですね。

*編集部註:なお厳密に言うとホンダはX-ADVをスクーターとは位置づけておらず、スクーターのデザインと実用性を備えたモーターサイクルであり、「大型クロスオーバーモデル」と呼称している。

ホンダ2代目X-ADV。750ccの並列2気筒エンジンに6速のDCTを組み合わせています。

ADV150はそんなX-ADVの弟分。大ヒットスクーターのPCX150をベースに足まわりを強化し、SUVをイメージしたという無骨なボディをまとっています。もちろん人気も上々。本記事のテーマは「SUVスクーターがブームになる!」です。そのベンチマークとなるのは、大排気量車X-ADVではなく、普通二輪免許で多くの人が乗れるADV150に他ならないとみています。

その理由はユーティリティです。スクーターに求められる性能は、日常でバッグを持ち出すかのように乗れる手軽さと、コンビニやスーパーで買い物をして荷物を乗せて帰ってこられる積載性だと思います。
X-ADVは手軽さという面では少々厳しいものの(価格も132万円とそれなりにしますし)、ADV150なら上記の要素はバッチリ満たしています。その上、これまでのスクーターとは一線を画す所有欲をくすぐるデザインをしているのですから。

ADV150の走行性能ですが、「街乗りスクーターのPCX150ベースなんでしょ?」と思うかもしれませんが、心配は杞憂です。そもそもPCX150自体が「クラスを超越した走行性能を持っている」と高評価を得ています。ライバルと比較しても素晴らしい出来の良さ。
つまり、そのPCX150がベースのADV150は信頼性を含めて抜群。日常のアシに、休日はツーリングに、なんだったら林道でも行こうか!と楽しいことしか思い浮かばない一台です。

ホンダ ADV150主要諸元

ホンダ ADV150

【エンジン・性能】
種類:水冷4ストローク単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク:57.3×57.9mm 総排気量:149cc 最高出力:11kW(15ps)/8500rpm 最大トルク:14Nm(1.4kgf・m)/6500rpm 燃料タンク容量:8.0L 変速機:無段変速 WMTCモード燃料消費率:44.1L

【寸法・重量】
全長:1960 全幅:760 全高:1150 ホイールベース:1325 シート高:795(各mm) 車両重量:134kg タイヤサイズ:F110/80-14 R130/70-13

【カラー】
マットメテオライトブラウンメタリック、マットガンパウダーブラックメタリック、ゲイエティレッド

【価格】
45万1000円

ヤマハ X FORCE「MTシリーズの遺伝子をスクーターに注入!?」

ホンダが新たなマーケットで勝負に出たと聞けば黙っていないのがライバルのヤマハです。ヤマハもSUVスクーターと言えるようなX FORCEをリリースしました。

四輪のSUVの一部には、運動性能の高さを追求したモデルがあります。X FORCEはそんな方向性に振ったモデルと言えます。ヤマハの公式WEBを見ても、ハンドリングの良さや加速の良さといった点が強調されています。

思い起こせば、ヤマハは近年「振り回して遊ぶ」バイクに力を入れている印象があります。その典型例はスポーツネイキッドのMT-09。MT-09は軽量な車体とハイパワーエンジンによりスタントマシン的な思い切りの良いライディングができるバイクです。

初代MT-09がデビューした際には、ヤマハ自ら「ネイキッドとスーパーモタードの異種交配造形」と説明していましたが、X FORCEもそれに近いコンセプトを取り入れたのではないかと。

これは筆者の想像ですが、ホンダ=ADV150が作り上げたマーケットに対抗するためには、その二番煎じ、つまり真似事ではダメだとヤマハは踏んだのではないでしょうか。
ヤマハにはBW’Sというオフテイスト満点のスクーターがありましたが、そのシリーズ名を使わずにX FORCEという新たな勝負に出ていることにヤマハの情熱を感じます。「スタントマシン的な要素を取り入れることで、ヤマハらしいハンドリングをスクーターでも味わってもらえる」というメッセージも感じます。

しかし、見落としてはいけないのが、スクーターとしての利便性を捨てていない点です。それはフラットボードのフレームを採用していることが象徴しています。走行性能を追求するなら、より強靭なフレームを持つNMAXをベースにしても良いものですが、X FORCEはそれをしていません。そこには利便性というテーマがあるはずです。
何よりフラットボードは「すぐに乗れる」という潜在的なイメージを見るものに植え付けてくれます。「すぐおいしい、すごくおいしい」という謳い文句をX FORCEを見ていると思い出します。

ヤマハ X FORCE ABS主要諸元

ヤマハ X FORCE

【エンジン・性能】
種類:水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ ボア・ストローク:58.0×58.7mm 総排気量:155cc 最高出力:11kW(15ps)/8000rpm 最大トルク:14Nm(1.4kgf・m)/6500rpm 燃料タンク容量:6.1L 変速機:無段変速 WMTCモード燃料消費率:40.9L

【寸法・重量】
全長:1895 全幅:760 全高:1120 ホイールベース:1340 シート高:815(各mm) 車両重量:130kg タイヤサイズ:F120/70-13 R130/70-13

【カラー】
ブラックメタリックX、ブルーイッシュホワイトパール1、マットダークパープリッシュブルーメタリック1、マットダークグレーイッシュリーフグリーンメタリック2

【価格】
39万6000円

アプリリア SR GT「SUVスクーターの世界的ブームを予感させる」

極東の島国がスクーターで新たなマーケットを作ったと聞けば、スクーターの本場であるヨーロッパ勢が黙ってはいない!? 欧州勢がこのクラスに向けた先鋒が、イタリアの老舗アプリリアが手がけたSR GTです。

スタイルはADV150とX FORCEの中間的な印象。ハンドリングのキレの良さをイメージさせるモタード的要素と、オフロードをイメージさせるタフネス性、両方が含まれているように思います。

ただ、日本勢の2台と大きく異なるのがエンジン。日本勢よりも約20ccプラスした174ccのエンジンを搭載しており、走りのレベルを一段引き上げているのが特徴。コンパクトな車体で17ps、16.5Nmのエンジンを操れば、前後左右のアクションレベルが格段に違ってきますね。

正直な話、日本において、ヨーロッパのスクーターはベスパを除いて少々影が薄かったと思います。しかし、SUVスクーターというジャンルができつつある今、個性が光るSR GTは日本のマーケットで大きく飛躍する存在になるかもしれません。

アプリリア SR GT(写真はSPORT)

アプリリア SR GT主要諸元 

[ ]内はSPORTグラフィック

【エンジン・性能】
種類:水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ ボア・ストローク:61.5×58.7mm 総排気量:174cc 最高出力:13kW(17ps)/8500rpm 最大トルク:16.5Nm(1.68kgf・m)/7000rpm 燃料タンク容量:9L 変速機:無段変速 WMTCモード燃料消費率:──

【寸法・重量】
全長:1920 全幅:765 全高:1,295 ホイールベース:1,350 シート高:799(各mm) 車両重量:148kg タイヤサイズ:F110/80-14 R130/70-13

【カラー】
アプリリアブラック、インフィニティブルー、ストリートグレー
[ストリートゴールド、イリジウムグレー、レッドレースウェイ]

【価格】
55万円[56万1000円]

SUVスクーターに新たな魅力を感じてくれた!?

ここまで読んでくださった皆様、この3台を見てスクーターへのイメージが少し変わったと思いませんか?
スポーツバイクを所有している人にとっては、スクーターはある意味「負け感」のあるバイクに感じていたのではないでしょうか。しかし、SUVスクーターは、デザインや走りに趣味的要素が満載──あなたもすっかり虜になっているはず。
SUVスクーターは、スクーターの革命かもしれません。今後も多くのSUVスクーターが登場していくことが予想されます。

レポート●ABT werke 写真●ホンダ/ヤマハ/アプリリア

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