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ヤマハ最新EV E01試乗「航続104kmで125ccスクーター同等の実用性」その走りと使い勝手を確かめる

ヤマハ E01 EV

原付二種=125cc相当の電動バイク、ヤマハ E01が日本を走り始める

1980年代から環境・エネルギー資源問題に取り組むべく、電気動力に着目し、技術開発を進めてきたヤマハ。
モーターショーやモーターサイクルショー等で数々のEVコンセプトモデルを発表してきたが、これまで実際に製品化されたものは、2002年のパッソル、2005年のEC-02、2010年のEC-03、そして2015年に発売が開始され、現在も販売されているE-Vinoと原付一種(50cc相当)ばかり。次世代モビリティに期待を寄せる者にとっては少々心もとない。

新たな時代へと繋がるモデルの登場はまだかまだかと待ちわびていた中、いよいよ実証実験モデルではあるものの実際に公道走行が可能で原付二種(125cc相当)となる「E01」が登場。
ガソリンエンジンの125ccスクーターと乗り比べつつ、E01の走りや使い勝手をレポートする。

電動車E01と125ccガソリン車NMAXを乗り比べての実感

新型電動バイク・E01との比較のため、まず125ccスクーターのヤマハ NMAX(同車格・同クラス)に乗ってからE01の試乗を行った。
まずまたがってからスタンドを払うと感じるのが車重約27kgの差。ただそれも一瞬のことで、スイッチを入れて走り出すとスムーズなスタートと走りにその重さを忘れ、むしろ力強いトルクでNMAXよりむしろ軽く感じられる。

ヤマハ NMAX。124ccの水冷単気筒OHC4バルブエンジンを搭載。最高出力12ps/8000rpm、最大トルク1.1kgm/6000rpmの性能で、車重は131kg。

かといって、電動バイクにありがちなトルクの過剰さはなく、丁寧な制御が行われていて扱いやすい。もちろんスロットルをしっかりと開ければそれに応じて力強い加速も得られ、テスト時の天候が雨でなければさらに開けてみたかった。きっと爽快な走りが味わえただろう。

またNMAXに比べるとやはり振動の少なさや静かな走りは決定的な違いだ。試乗会場がもともと静かなクローズドコースであったのもあり、タイヤが路面の水を弾く音までしっかりと聞こえたほど。ガソリンエンジン車と乗り比べてみると、改めてEVならではの静粛な走りに感動する。

ブレーキの感覚はNMAXと同等。また回生ブレーキが介入しているもそれを感じさせないくらい自然なフィーリングだ。
一方、NMAXと明らかに違うと思えたのがハンドリングの優れた安定感である。特にコーナリングにおいては、前後輪がしっかりと路面を踏みしめている感覚が味わえ、それによって得られる安定感がウェットな路面であっても不安なく、走りを楽しむことができた。

これは、バッテリーやモーター等の重量物を車体中央に搭載し、前後の重量分布を50:50にしてバランスよく仕上げたことによる恩恵だろう。街中での移動だけではなく、航続距離が許せばワインディングなども楽しめそうだと感じた。
ヤマハの新型電動バイク・E01は、静かでエコなだけではなく、走りもしっかりと楽しめるマシンだったのである。

登坂時などにパワフルな走りが可能な「PWR」、NMAX同等の走行性能を発揮する「STD」、最高速を抑え航続距離を伸ばす「ECO」の3種の走行モードも搭載されている。

ヤマハ E01の購入はできないが、個人でもリース対応可

残念ながら現状ヤマハ E01の販売は行われないが、一般ユーザーが参加可能なリースによる実証実験が行われる。
実証実験の内容は、3ヵ月のリース契約者を募集し、台数は100台が用意される。
参加の流れとしては、2022年5月22日までに申し込みした人の中から抽選・当選発表を経て、受け取り期間内(2022年7月1日〜31日)の車両受取日から3ヵ月の利用を行い返却となる。

貸し出されるのは車両本体と付属のポータブル充電器で、キャリヤやトップケース、普通充電器等の有償オプションも用意される。普通のスクーター同様に通勤や買い物などに使ってほしいということだろう。リース料金は月額2万円で、保険もその料金に含まれているのでご安心を。

実証実験のデータ収集には、車体に搭載された「eSIM」とGPSを内蔵する「CCU」を使い、3G/LTE回線によって各種車両の情報を収集。収集した情報とアンケートを元に各種分析、今後のEV開発へのフィードバックがおこなわれるという。
以下の条件を満たす人であれば、誰でも専用webサイトから応募が可能ということで、ご興味のある方は是非応募をしてみてほしい。

■ヤマハ E01実証実験参加条件
・申し込み時に満20歳以上
・小型限定普通自動二輪免許(AT含む)以上の保有
・月額利用料を応募者名義のクレジットカードで支払可能
・充電環境の準備が可能(100Vコンセント)
・普通充電器利用希望者は200V電源が必要
・利用後のアンケートへの回答が可能

ヤマハ E01の充電方法は?

ヤマハ E01では利便性に配慮をした3つの充電方法が採用されている。その中で最もお手軽なのは、通常の家庭用電源(100V)を用いて充電を行うことができるポータブル充電器。リース車には標準装備で、シート下への格納もできるので、携帯も可能となっている。ちなみに0%から100%までにかかる充電時間は約14時間。

E01に標準装備される携帯充電器。
携帯充電器がシート下トランクにちょうど収まるサイズとなっている。

ポータブル充電器以外の充電方法としては、200V電源を使用し、0%から100%まで約5時間で充電できる普通充電器。1日70km程度の走行をおこなうオーナーであれば、一晩で満充電とすることが可能。設置は自宅等の私有地となり、設置工事・撤去費は自己負担でコストは約13万円、利用料が月額1000円かかる。

また最も早い充電が可能な急速充電器は、0%から90%まで約1時間で、現時点で設置場所は調整中、利用料は検討中となっている。

月額1000円のオプションで利用できる普通充電器。設置には200V電源が必要となる。

普通充電器の設置には工事が必要で、利用する場合は申込み後に個別相談となる。

約1時間で0%から90%まで充電できる急速充電器。設置場所や利用料金は検討中という。

チャージポートは大胆にフロントパートに配置。一般的にフロントまわりのデザインは、生物的な顔や表情として作り上げられるが、E01では顔として扱わず、チャージポートをフロントのメイン部分に。カウルに包まれるよう配置された小型LEDヘッドライトとともに、それを独特のデザインに落とし込んでいる。

ヘッドライト含め、灯火類には全てLEDとなっている。

ボディサイズは125ccスクーターのNMAXと同等。ボディの中央部に4.9kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを配置し、バッテリーのすぐ後方にパワフルな走りを実現する小型の高回転型 空冷永久磁石埋込型同期モーターが搭載されている。
バッテリーは60km/h定地走行で104kmの航続距離を実現、モーターは2000rpm以下で最大トルクを発生させ、3500pm以上でフラットに続く最高出力を発揮、最高速100km/hを実現している。

振動やメカノイズのほとんどないEV特有の静粛性を生かすため、駆動伝達系にはベルトドライブを採用、タイヤもよりノイズが少ないものをセレクトされている。ヤマハによると、NMAXと40km/hでの比較を行った際、NMAXは68dB(デシベル)、E01は58dBと約10dB程静かな走行が可能という結果が出ている。

足元のいわゆる「センタートンネル部」がバッテリー。スチールパイプ製のダブルクレードルフレームがバッテリーを包み込むような車体パッケージとなっている。
リヤタイヤはベルトによって駆動するが、ガソリンエンジンの一般的なスクーターと異なりCVTは備えない。スイングアームはCFアルミダイキャスト製。

装着するタイヤのサイズはNMAXと同様で、フロント110/70-13、リヤ130/70-13。ブレーキは前後とも油圧式のシングルディスクブレーキで、両方にABSが装備されている。

リヤタイヤ奥にあるファン形状のものはバッテリーの「網膜弁」。これは万が一、バッテリーが異常発熱を起こした際に内側の圧を抜く役割を果たす安全弁となっている。

フロントタイヤはIRCの「SS-570F」という銘柄。
リヤタイヤはIRCの「SS-560R」という銘柄。
ホイールハウス奥にあるのはラジエターではなく、バッテリーが異常発熱した際の安全装置「網膜弁」。

ヤマハ E01の使い勝手&装備面は?

メーターは、瞬間認知性に優れる縦型メーター配置を採用している。デジタル表示方式となり、スピード、バッテリー残量をはじめ、残走行距離に充電状況、そして時計や外気温を示し、ハンドルスイッチでの操作を可能としている。メーター上部には走行時に点灯するインジケーターも備えている。

ハンドル左側にはリバーススイッチを装備。リバーススイッチを押したまま右側にあるモードスイッチを押すとモーター駆動によって時速1km/hで後退、駐輪場の出し入れなど負担軽減に活用できる。

モノクロ液晶のメーターパネル。中央に速度計、下部にバッテリー残量とシンプルかつ見やすい表示レイアウト。
左スイッチボックスの裏側に設けられているリバーススイッチ。

着脱交換式のバッテリーを採用するEVでは、シート下のスペースはバッテリーを備える場所として使用することが多く、収納を制限されてしまうケースが多い。しかし、E01は固定式バッテリーを採用し足元に配置することで、ヘルメットの収納も可能な容量約23Lのシート下スペースを確保。スクーターとしてのユーティリティもしっかりとキープしている。
また、ハンドル下にはNMAXなどと同様にグローブボックスを配備。右側グローブボックスには12VのDCジャックが装備されている。

ヤマハ E01の足着き&ライディングポジション

シート高はNMAXよりも10mm低い755mm、スクーター特有のステップの幅はあるも、前方をシェイプしたシート形状となっていて、そこまで大きく足を広げることなく足を下ろせる。身長172cmの筆者では、両カカトまでしっかりと地面に接地した。
乗車姿勢はアップライトなポジションとなり、ハンドルはゆったりと自然な感じで握ることができ、運転はしやすく、視界も良好となっている。

ヤマハ E01主要諸元

[モーター・性能]
種類:高回転型空冷永久磁石埋込型 定格出力:0.98kW 最高出力:8.1kW<11ps>/5000rpm 最大トルク:30Nm<3.1kgm>/1950rpm
[バッテリー]
種類:リチウムイオン電池 電圧:87.6V 容量:56.3Ah 充電能力:標準装備の携帯充電器で約14時間/普通充電器で約5時間/急速充電器で約1時間 
[寸法・重量]
全長:1930 全幅:740 全高:1230 ホイールベース:1380 シート高755(各mm) タイヤサイズ:F110/70−13 R130/70−13 車両重量:158kg
[車体色]
ホワイト
[価格]
実証実験用のリース対応のみ。リース料は月額2万円。

レポート●安室淳一 写真●山内潤也 編集●上野茂岐

追記2022年5月11日:車両データの通信規格LTEと表記していましたが、3G/LTE両方に対応可能なため、加筆を行いました。

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