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グレードによる車名を変更、スタンダードは「H2 SX」、電子制御サスの上級グレードが「H2 SX SE」に
カワサキのハイパフォーマンススポーツツアラー、ニンジャH2 SXの2022年モデルが発表されました。
発売予定日は2022年4月22日で、スタンダードモデルのニンジャH2 SXが265万1000円、電子制御サスペンション「KECS」などを採用した上級グレードのニンジャH2 SX SEは297万円となっています。
従来まではスタンダードグレードが「H2 SX SE」、電子制御サスペンション付きの上級グレードが「H2 SX SE+」という展開でしたが、グレードによる車名が変更されている点にちょっとご注意。
200psを発生するバランス型スーパーチャージドエンジンやレーシングフィールドでの知見を活かしたドッグリングトランスミッションといったパワートレインの基本は従来通りですが、国産のモーターサイクルとして初めてミリ波レーダーを用いたACC(追従クルーズコントロール)機能をはじめとした先進運転支援システム「ARAS」を採用したことで注目を集めています。
しかし、新型ニンジャH2 SXシリーズは、単にARASを追加しただけではありません。
パワートレインや足まわりについてもブラッシュアップされています。当記事では、そうした走りに関わる基本メカニズムの進化ポイントに着目して、改良点について紹介していきます。
新型ニンジャH2 SXシリーズ(2022年モデル)


従来型ニンジャH2 SX SEシリーズ(2020~2021年モデル)

新型ニンジャH2 SXシリーズのデザイン「小型LEDヘッドライトでスマートな雰囲気に」
まず、外観ではLEDヘッドライトが小型化されるなど、アッパーカウルのデザインが変わっていることに気付きます。前述したARAS用ミリ波レーダーをヘッドライト下のスペースに収めるための変更でもあるでしょう。
ポイントはカウルのサイズ自体は変わっていないことです。センサーを追加してもスリムなイメージは維持しています。むしろ鋭角的なキャラクターラインを目立たせることで、従来以上にギュッと凝縮した印象を強めているほどです。
スーパーチャージドエンジン搭載車のお約束といえるカワサキのリバーマークはフロントカウルにしっかりと輝いています。アッパーカウルのデザイン変更に合わせてサイドカウルの造形が変わっている点も、カワサキファンなら気付くところでしょう。
また、ミラーの形状も変更されました。こちらは空力性能の改善とオプションのパニアケース装着時の視認性アップが狙いとなっています。
ARASに必要な機構として車体後方にもミリ波レーダーを収める都合から、リヤフェンダーの形状も変更されていますが、フロント同様ミリ波レーダーの「後付け感」は皆無。同様の機能を有する輸入車勢と比べてもスマートな仕上がりです。
シート形状も改良されています。
スペック上のシート高は820mmと変わっていませんが、ライダー側は前方を高くしてブレーキング時に前のめりにならないように配慮。タンデム側は従来型より幅を広げ、快適性を向上させているのがポイントです。なお、リヤシート下にはUSB電源ソケットも備わります。
なお従来型同様、小キズが自己修復される「ハイリーデュラブルペイント」も外装の一部に引き続き採用されています。





SUPER CHARGEDエンブレムは手作業仕上げに!
外観でもっとも注目したいのが、エンジンにつけられた「SUPER CHARGED」エンブレムです。黒地に緑文字のエンブレムは、新たに手作業により仕上げられたものとなり、スーパーチャージドエンジンの価値を見た目からも高めています。

新型ニンジャH2 SXシリーズのエンジン「中低回転域でより力強いトルク特性に」
そのエンジンを始動するときにも2022年モデルの進化を感じることでしょう。新たに「KIPASS」(キーパス)と名付けられたスマートキーが採用され、スイッチを回すことでエンジンをかけるようになっています。
そうすると目前の6.5インチフルカラーTFT液晶メーターが光り輝くのです。基本画面は上中下と3つのエリアに分けられ、上段にはライディングモード、ギヤポジション、ACCインジゲーター、タコメーターなどを表示します。
中段には大型のデジタルスピードメーターほかサービスインジゲーターなどを表示。そして下段はマルチファンクションディスプレイとしてオドメーター、タイヤ空気圧、ブースト計など様々な情報をスクロール表示させることが可能となっています。
この6.5インチディスプレイはスマートフォンと連携することが可能となっています。アプリ「Kawasaki SPIN」をインストールすることで、電話・マップ・音楽・カレンダー・連絡先という基本機能を連携させられるだけでなく、Kawasaki SPINに対応したサードパーティー製アプリを利用すると、機能拡充も対応できる仕様となっているのです。




総排気量998ccのバランス型スーパーチャージドエンジンの変更テーマは、環境対応と扱いやすさとなります。最高出力200ps(ラムエア加圧時は210ps)、最大トルク14.0kgmというスペックはそのままに、サイレンサーの容量アップ(7L→8.8L)、プレサイレンサーチャンバーの廃止、メインキャタライザーの大容量化、サブキャタライザーの追加といった変更によってユーロ5規制をクリア。
排気系の変更により直線的なレイアウトになったことを活かして、4000〜8000rpm域でのトルクを太らせ、日常的な速度域での扱いやすさを向上させています。2次吸気口に樹脂製サイレンサーを追加して吸気音を抑えたというのも快適性につながる改良です。
また、ドッグリングトランスミッションはギヤの歯数を変更することで共振を抑制、クラッチカバーの剛性アップと合わせてノイズを低減。これも日常的な領域で走らせた際の快適性向上に効く変更点といえるでしょう。
トランスミッション周りではクラッチの切れをよくするためのオイル量の最適化、ニュートラルが出しやすいような改良も行なわれているということです。

新型ニンジャH2 SXシリーズの実用機能「タイヤ空気圧モニター、グリップヒーターを装備」
定評ある軽量トレリスフレームの車体については大きな変更はありませんが、上級グレード・H2 SX SEが採用する電子制御サスペンション「KECS」はスカイフック制御を新採用。快適な乗り心地を実現するとともに、タイヤの接地感向上により走行時の安定感が増しているといいます。
一方、スタンダードグレード・H2 SX のサスペンションは従来型スタンダードと同様ですが、ブレーキキャリパーがブレンボ製のラジアルマウントタイプへと強化されています。
なお、上級グレード・H2 SX SEのブレーキは従来型上級グレード同様にブレンボの最高峰モデル「Stylema」モノブロックキャリパーとなります。
そのほか、H2 SX SEならではの特徴としては、ホイールのリム部が切削加工タイプとなっています。



リヤブレーキはデュアルピストンキャリパーとなり、前後のブレーキバランスを調整しています。ブレーキでいえばABSユニットがボッシュ製10.3MEに進化しているのも注目ですが、これはARAS採用に伴うものといえます。
純正装着タイヤはブリヂストンのバトラックス・ハイパースポーツS22に。
空気圧をモニターするTPMSも備えられ、常にタイヤ空気圧を最適な状態で走れるようメーターに表示できるだけでなく、220kPa以下なると警告が出るようになっているので、ロングツーリングでの安心感につながるポイントといえるでしょう。
ハンドル内に配線を通したスマートな仕様のグリップヒーターが標準装備となっているのも、ツアラーとしての満足度を高めてくれる改良点です。
先進運転支援システムARASの採用によってツアラーとしての利便性をグッと高めた2022年モデルのニンジャH2 SXシリーズ。パワートレインといった基本メカニズムにおいても、最新ツアラーに求められる機能と性能を盛り込んだ熟成が行われているというわけです。


カワサキ ニンジャH2 SXシリーズ主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:73.4mm×59.0mm 総排気量:998cc 最高出力:147kW<200ps>/1万1000rpm(ラムエア加圧時は210ps) 最大トルク:137Nm<14.0kgm>/8500rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2175 全幅:790 全高:1260 ホイールベース:1480 シート高:820(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R190/55ZR17 車両重量:266kg(H2 SX)、267kg(H2 SX SE) 燃料タンク容量:19L
[車体色]
エメラルドブレイズドグリーン×メタリックディアブロブラック
[価格]
ニンジャH2 SX:265万1000円
ニンジャH2 SX SE:297万円

レポート●山本晋也 写真●カワサキ 編集●上野茂岐