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BMW CE 04は「コンセプトモデルほぼそのまま、キレキレのデザイン」
BMWは新たな電動スクーター「CE 04」を2022年、市場に送り出す。
BMWはこれを「サイレントレボリューション」(静かな革命)と呼び、電動バイクの新章の始まりとしている。
四輪車の開発で培ったテクノロジーを導入し、最高速度120km/h、0-50km/hが2.6秒という加速性能を持ち、バッテリー残量ゼロから100%までの充電時間は急速モードで1時間40分を実現──。
それでいてEUの運転免許制度ではA2(*)に合致するので、多くの人々に乗るための門戸は開かれている。
そのBMW CE 04に試乗すべく、イギリス人ジャーナリストでマン島TT参戦レーサーでもあるアダム・チャイルド氏がスペイン・バルセロナへ飛んだ。
*編集部注
日本の免許制度の普通二輪免許に近く、免許取得は18歳以上で(国によって一部異なる)、排気量制限はないが、最高出力が35kWを超えない二輪車までが運転可能。出力に制限なく運転できるA免許を取得するには、A2免許取得後2年経過するか、一定の年齢を超える必要がある。
また、記事中のスペックや価格はイギリスのもので、日本導入モデルの仕様や充電時間、価格は未定。
*2022年2月17日追記
日本仕様の内容が2月16日発表された。価格は161万円で、最高出力は31kW(42ps)、発売が2022年4月22日からとなっている。
【画像21点】BMW最新電動スクーター「CE 04」の機能、装備、構造を写真で解説
BMWは、2017年にCE 04の原型となるコンセプトモデル「Concept Link」を発表している。そのスタイリングはあまりに大胆で、熱心なBMWファンたちでさえ、まさかほぼその姿のまま市販モデルが登場してくるとは予想していなかっただろう。
しかしBMWはそれをいい意味で裏切った。自社の信念を貫き、デザイナーの自由な発想を尊重した。そしてまるでSF映画に出てくるような、10年先の未来を走るバイクを生産し出したのだ。
BMWは2014年にCエボリューションで電動スクーターの市場へ参入した。
私はその2年前、2012年にプロトタイプを試乗する機会に恵まれ、大いに感銘を受けたことを忘れない。だが、BMWの電動スクーターはさらなる進化を果たしていた。
BMWは電動車に関する技術や専門知識を、四輪開発チームと共有している。CE 04にはSUV「iXシリーズ」の電動四輪車用バッテリーを改良して小型化したものを採用し、信頼性と安全性を確保している。
そのうえで、最高出力は42ps/4200rpm(定格出力20.3ps)、最高速度は120km/h、0-50m加速は2.6秒という驚異的な性能を誇る。
先代に当たるCエボリューションと比較すると、車重は大幅に軽量化されたうえに充電時間も短縮。航続距離はA2仕様で130km、A1仕様(125cc相当)で100kmという。
私たちは1万1700ポンド(約181万3500円=1ポンド155円換算、以下同)もするBMWの電動スクーターが見た目どおりの性能を発揮するのかどうかを、これから確かめるのだ。
BMW CE 04は最短1時間40分でフル充電、航続距離は130kmというスペック
前述したように、CE 04には電動四輪車「iX」や「i4」と同じリチウムイオンバッテリーモジュールを採用している。
これにより最高出力は42psを発生する。最高速度はA2、A1のいずれも120km/hだが、両車の加速力は大きく異なる。このたび試乗したのは42psのA2=フルパワー仕様で、停止から50km/hに至るまでの時間は2.6秒、100km/hまでは9.1秒をマークした。これはかなりの俊足スクーターだ。
リチウムイオンバッテリーは、家庭用コンセントを使用してフル充電まで4時間20分、オプションの急速充電器(6.9kW)なら1時間40分で完了する。
20-80%の充電の場合、急速充電器なら45分で終わる。それだけの短時間なら、ちょっとしたランチやコーヒーブレイクを楽しむのにちょうどいいし、スマホで撮ったCE 04の画像をSNSにアップロードしている間に充電できる。A1仕様ならさらに時間は短い。
A2仕様のフル充電時の航続距離は130kmとされているが、これはライディングモードの選択や乗り方によって異なる。
BMW CE 04の動力性能「走行モードでレスポンスや回生ブレーキフィールはかなり変わる」
キーレスイグニッションを押し、ブレーキレバーを握りながらスターターボタンを押せば準備完了だ。もちろん一般的なスクーター同様、ブレーキレバーはハンドルの左右に装着されている。
サイドスタンドはパーキングブレーキ、またはキルスイッチとしても機能するため、格納しないと発進できない仕組みになっている。10.25インチの大型液晶ディスプレイで準備が整ったことを確認したら、あとはスロットルをひねって走り出すだけ。
エンジンノイズや回転上昇がないため、最初の数メートルはまるで徒歩のような感覚で、スロットルを回して加速することにやや驚かされる。もっともこれはガソリンエンジンのスクーターでも似たような感覚だろう。
しかしいざ走り出してしまえば、すぐに慣れてしまう。CE 04のスロットル制御のセッティングがすばらしくスムーズだからだ。
標準仕様のCE 04には、「エコ」「レイン」「ロード」と3種のライディングモードがあり、それぞれに異なるスロットルレスポンスと回生ブレーキ(走行中にスロットルを閉じた状態でバッテリーを充電する機能)が設定されている。
テスト車はオプションで追加できるライディングモード「ダイナミック」を備えていた。
このモードが搭載される「ダイナミックパッケージ」の車両では、トラクションコントロールとABSがそれぞれ機能向上し、車体のバンク角に応じた制御も行われるコーナリングABSになる(「ABSプロ」と「ダイナミックトラクションコントロール」という機能名)。
電動スクーターに乗るのが初めての人なら、「エコ」または「レイン」のモードが無難だろう。どちらもとてもソフトなパワーで、とくにスロットルの開け始めの加速が穏やかだからだ。電動バイクには、スロットルを回すというよりはスイッチをオン・オフするようなギクシャクした加速特性のものが少なくないが、CE 04には全くそのような不安がない。
一方で「ロード」と「ダイナミック」は大きく異なる。
スロットルの滑らかさはそのままだが、発生するトルクは非常に強く、車体を鋭く加速させる。400ccクラスのガソリンエンジンスクーターに匹敵する加速性能だ。
それでいてギヤやクラッチによるラグもないから瞬時に加速し(ピークトルクはわずか1500rpmだ!)、完全な静寂のなかでシグナルダッシュする。信号機が青になった瞬間にスロットルをひねれば、後続車はミラーの点になるだろう。
白線やマンホールの蓋を踏んだとしても、あるいは路面が冷えて濡れているとしても、トラクションコントロールが的確に作動するし、エンジンの音がまったくしない電動ならではの静寂性はライダーを無駄に興奮させることなく、常に冷静に運転できるよう促す。
スロットルレスポンスもさることながら、エンジンブレーキ(*)の特性も各モードで大きく異なる設定になっている。
エコモードでは非常に強いエンジンブレーキがかかり、バッテリーの回生(運動エネルギーを電気エネルギーに変換すること)が増える。慣れてくれば、ブレーキレバーをほとんど握ることなくエンジンブレーキだけで走ることもできる。一方で「ロード」や特に「レイン」ではエンジンブレーキの力は弱まる。
*訳者註:厳密にはエンジンブレーキではないが、運転感覚について分かりやすくするためこの言葉を使った。
また、CE 04はリバース機能を搭載しているのも特筆だ。ハンドルバー左スイッチボックスにあるボタン押し、スロットルを回すとCE 04はゆっくりと後退する。安全のため、両足を地面につけたままバックすることを忘れないように。
BMW CE 04で市街地を走る「車重は相応にあるが、低重心の車体で軽快に走れる」
車重275kgのCエボリューションに対して、CE 04は231kgにまで軽量化されている。
とはいうものの、BMWの400ccクラススクーター・C400Xの206kgと比べると25kgも重い。リバース機能はこの重さを緩和するためでもある。
しかしCE 04は低く構えるシャシーを採用し、その重量の多くを占めるバッテリーセルをライダーの足元へ水平に配置させることで、低重心化を図っている。
これによって走行中はその車重を感じさせない。比較的低めとなる780mmのシート高と、幅の狭い車体が相まって軽快感を高めている。ガソリンエンジンのスクーターと比べると、燃料タンク、エンジン、マフラーなどが無いCE 04の車体後部のスタイリッシュさも際立っている。
リヤサスペンションは、スプリングプリロード調整機構付きのリンクレスモノショックだ。フロントサスペンションはショーワ製35mm径フォークで、CE 04の車体とパワーをバランスよくコントロールしている。車体安定性に優れ、ホイールベースが長めにもかかわらず切り返しは容易だ。
ここでも低重心化が大きく貢献していて、混雑した市街地も駆け抜けられる。
しかしスピードが乗る郊外での方向転換、高速道路でのレーンチェンジ、コーナリングでさらに車体を倒し込むときなどに、CE 04の車体の重さに気づくだろう。
CE 04はアーバンモビリティであり、スポーツバイクのように振り回して走るようには設計されていない。そうはいってもライディングフィールはとても軽快だから、同クラスのほかのスクーターと直接比較しない限り、走行中にその重さをネガに感じることはないはずだ。
もちろん、駐車のための取り回しではリバース機能が大いに役立つ。
ショーワ製フロントフォークはとてもいい仕事をしており、同クラスのライバルモデルと比べて特に高性能というわけではないが、市街地のスピードバンプや路面の凹凸もスムーズに乗り越える。しかしエンジンをはじめとするノイズがなく、静かなまま走行し続けるCE 04ではロードノイズやサスペンションの作動音も聞こえるため、フォークが激しく動いているようにも感じられるし、硬く感じてしまう。
231kgの車重を受け止めるブレーキ機構は、フロントに265mm径ダブルディスク+4ピストンキャリパー、リヤは265mm径シングルディスク+シングルピストンキャリパーという構成。右レバーがフロント、左レバーがリアのブレーキを制御するのは一般的なスクーターと同様だ。
「エコ」モードでは強烈な回生ブレーキが働き、CE04を減速するのに十分な制御をする。前後連動ブレーキではないものの、ABSは標準装備だ。
試乗中、私は「エコ」モードでの回生ブレーキとリアブレーキを多用していたが、ABSの介入を気にする必要はなく、それでいてブレーキの制動力はスムーズかつ十分だった。強いて言えば、ブレーキレバーの調整機構がほしいと思ったことくらいで、レバー位置をもう少し手前に引ければ私の好みにぴったりだったのに。
BMW CE04の現実的な航続距離は?
スケードボードのような薄いシートだが、見た目よりもはるかに座り心地は快適だ。
また、BMWは6種類ものオプションシートを揃えている。シティコミューターであることに加えて、航続距離が130kmのCE 04では2時間以上もシートに座り続けることはないだろうから、シートの快適性は重視しなくてかまわない。
このたびの試乗ではおよそ70kmをハイペースで走行したが、ゆとりあるライディングポジションを取ることができるから、さまざまな体型のライダーに合うだろうと感じた。タンデムシートは試せなかったが、街乗りには問題ないはずだ。難を言えば、取って付けたようなタンデムステップが少々残念だ。
10.25インチの液晶ディスプレイには、航続可能距離が表示される。
ちょうど60kmを走行した段階で残り60kmと表示されていたから足せば120km……メーカーが想定している航続距離は現実とそう乖離しないようだ。
しかし、ここには私が相当なハイペースで走ったことを考慮しなければならない。
ライディングモードを「エコ」や「レイン」にして普通に走れば、スペック上の航続距離である130kmを越えるのではないだろうか。ただし、坂道や高速走行はバッテリー残量に大きな影響を及ぼすことも忘れてはならないが。
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2BMW CE 04日本語webサイト(2022年2月時点では未発売)