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新車で買える1960年代のベスパ!? 美しき謎のスクーター「ヴィーナスローマ125」とは

ヴィーナスローマ 125

「ヴィーナスローマ125」2021年夏、30年物の新車が限定販売

排気量30cc台の超小さなバイク「Ko-zaru」(仔猿)や、日独共同プロジェクトからスタートしたビッグシングルスポーツ「HOREX644 osca」など、個性あふれるバイクの開発・販売を行っているCKデザインが、2021年夏「ヴィーナスローマ125」の新車販売を30台限定で開始した。

なぜこれがニュースなのかというと、このモデル、30年前から新車のまま保管されていた言わば「デッドストック新品」であり、新車として作られた当時(1990年代)に20年前(つまり1970年頃)の部品にこだわって作られたものなのである。
……どういうことか分からなくなってきた人も多いと思うので、その来歴を紹介していくのでしばらくお付き合い願えれば幸だ。

ヴィーナスローマ125はベスパに精通したショップで販売が行われる。その店舗のひとつがモトビート・シフトアップ(神奈川県横浜市)で、左が同店代表の山本慎一郎さん(左)、右はCKデザイン代表の佐々木和夫さん。

ベスパを遠い先祖に持ち、インドで生まれたヴィーナスローマ125

2スト・ハンドチェンジ時代のベスパそのものの姿をしたヴィーナスローマ125だが、出自の秘密はインドにあった。

ピアッジオと契約を結び、1960年代からベスパをライセンス生産していたインドのBAJAJ(パジャジ)社だが、ライセンスが切れた後はCHETAK(チェタック)の名で販売を行っていた。
1990年代にCKデザインがそのCHETAKを「20年前の部品を探し出して付けてくれ」と旧式の姿に仕立ててもらい輸入。「CLASSIC」と名付けて100ccと150ccを販売していた。

かつてCKデザインが販売していたヴィーナスローマ(写真の車両はベスパのエンブレムが付いている)。映画『ローマの休日』に登場したベスパを模したパイプハンドル、フェンダーライトを装備。この仕様にするのは結構大変で「もうやりたくないです(笑)」とCKデザインの佐々木さん

125ccもそのときに輸入されたのだが、CKデザイン代表の佐々木和夫さんによって今日に至るまで保管されていた。2021年夏、「機は熟した」と判断した佐々木さんはその125ccに「ヴィーナスローマ」の名を冠して販売することにしたのである。

日本で見かける2ストベスパの多くは1963年に登場した50、100、125のスモールボディか、近代的なデザインで1977年に登場したラージボディのPシリーズ系である(125、150、200があり後にPXシリーズへと進化)。

スモールボディに関しては、イタリア本国でラインアップ落ちした後も、クラシカルなスタイルで人気を博していた日本市場に向けては「ビンテージシリーズ」として2000年頃まで生産・販売が続けられ、それなりの数が日本に輸入されている。

一方のラージボディは、Pシリーズ以前のものは新車時の価格が高く、ホンダ CB400フォア(1976年型)の新車価格が32万7000円だったのに対し、ベスパ 150スプリント(1977年型)の新車価格は38万円だった。
そのうえ輸入された数自体も少なく、1990年代にはそう簡単には手に入らない存在となっていた。

そこで佐々木さんが当時着目したのが、1960〜1970年代のベスパ150スプリントなどと中身に至るまでほぼ同様だったCHETAKだったのだ。

ヴィーナスローマ125の機構や走りは1960〜1970年代のベスパ同様

約30年の時を経て販売されたヴィーナスローマ125(写真の車両は個人所有車でホワイトウォールタイヤとバックミラーはノンオリジナル)。
ヴィーナスローマ125には「王女サイドステップ」と名付けられた横座り用タンデムステップが車体左に装着される。
インドでは女性がサリーを着るため横座りのタンデムが定番。日本では横座りのタンデムは禁止されているが、ヴィーナスローマ125の「濃い味要素」のひとつ。

セルスターターはおろかキースイッチも付いておらず、エンジンを停止させるにはキルスイッチ長押し。オイルは給油の際にガソリンと2ストオイルを混ぜる混合給油方式で、クラッチ付きの4速グリップチェンジなので運転にはMT免許が必要となる。

これらをどうとらえるかは各人の判断に任せるが、独特の構造は何よりの特徴であり魅力でもある。かくいう筆者も過去に2ストベスパに魅入られた末にBAJAJ CHETAK 150の存在を知って所有した時期があり、喜び勇んで今回のヴィーナスローマ125「新車発表会」に出向いたのだった。

チョークを引いて数回キックするとエンジンが始動、ベンベンベンという控えめなアイドリング音もいい雰囲気。クラッチレバーを握りつつギヤを1速に入れて、発進する際はスロットルを少し開けてクラッチをミートしないとエンストしそうになる。

これは最終型のベスパPX125にも見られた特性で、CHETAK 150ではこうはならなかった。おそらく125と150とではフライホイールマスが異なるものと思われるが、それ以外は4速ミッションを駆使すれば結構活発に走ってくれる。

右サイドカバーを外すとエンジンユニットが現れる。チェーンやベルトを介さずに後輪を駆動する仕組みはオールドベスパ同様。123ccの強制空冷2ストローク単気筒エンジンは、最高出力6.3psの性能。
メーターは120km/hスケールの速度計のみ(最高速はおそらく80km/h程度だろう)。変速はクラッチレバーを握りながら左グリップを前後に回す。
左サイドカバーはキー付きのフタが付き小物の収納が可能。奥には盗難防止(?)用のキルスイッチがあり、オフにしておくと始動できなくなる。

ただ、フロントブレーキは効くには効くがフロントサスがいとも簡単にフルボトムするのでリヤブレーキメインで、それもセンタートンネル部に右足かかとを乗せ、足の指部で踏力を調節するのがうまく操るコツ。
面倒くさい乗り物と思う人もいるかもしれないが、これでもスモールボディのベスパと比べるとスロットルやクラッチが格段に軽くて扱いやすいのである。

ここまで読んでいただいた方ならもうお分かりになるだろうが、始終そんな具合なので普通のスクーターのように簡単・安楽な乗り物ではない。
しかし……流麗なデザインとこれ以上ないくらいのシンプルな作り、そして乗りこなすのに相応の「作法」を要求してくるところに、今どきのバイクには求め得ない楽しさがある。

安全性、快適性と各種装備の充実化が進む近年のバイク界にあって、こういった乗り物を新車で買えるチャンスは、おそらくこれが最後であろう。

編集部註:2021年8月中旬時点ではモトビート・シフトアップに在庫あり。

フロントにキー付きのトランクを装備。
燃料コックとチョーク、その上にコンビニフック(?)を装備。
タイヤはチューブ式だが、スペアタイヤを装備。交換する際はリム部のボルトを脱着する。
リヤブレーキはペダル式。ステップ中央部の盛り上がったところに足を乗せて操作すると微調整しやすい。
今回「新車販売」される車両に装着される「ヴィーナスローマ」のエンブレム。

ヴィーナスローマ125主要諸元

[エンジン・性能]
種類:強制空冷2ストローク単気筒ロータリーバルブ 総排気量:123cc 最高出力6.3ps/5200rpm 変速機:4段グリップチェンジ 
[寸法・重量]
全長:1770 全幅:770 全高:1030 ホイールベース:1200 シート高:──(各mm) タイヤサイズ:F3.50-10 4PR R3.50-10 4PR 車両重量:92kg(乾燥) 燃料タンク容量:7.5L
[カラー]
サンドベージュ、バチカンホワイト
[価格]
71万1700円

レポート&写真●高野栄一 編集●上野茂岐

CONTACT

CKデザイン

モトビート・シフトアップ
神奈川県横浜市緑区鴨居4丁目54-24
TEL045-931-3633

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