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【パンアメリカ1250詳細解説】オフも走れる&自動車高調の異色ハーレー「開発裏話やマニアックな小ネタもあるよ!」

パンアメリカ1250 ハーレーダビッドソン

ハーレーダビッドソン パンアメリカ1250とはそもそもどんなバイク?

アメリカンバイクの代名詞、ハーレーダビッドソンが作り上げた話題のニューモデル「パンアメリカ1250」。そもそもなぜ注目されているのか? どんなバイクなのか? 売りとなる「足着き向上機能」とは?
おまけに、当記事ではヨソにはあまり載っていない小ネタまでご紹介していきます!

さて、日本では「イージー☆ライダーに出てくるバイク」とか「峰 不二子が乗ってるバイク」などといった認識で多くの人に知られるハーレーダビッドソン。
ロー&ロングな車体に大排気量のVツインエンジンを搭載する構成のバイクが主力製品で、カテゴリーで言えば「アメリカン」や「クルーザー」を代表する存在です。
似たようなスタイルの他メーカー製バイクに乗っていると、年配の方から「それハーレー?」と誤認されるのは「ライダーあるある」のひとつ。

映画『ターミネーター2』でシュワちゃんが乗っていたハーレーダビッドソンのモデル名はファットボーイ。写真はその最新型で排気量1868cc。リヤタイヤがとても太く(240/40)、まさに「ファット」!

そのジャンルにおいてほとんど絶対的とも言える支配力を持っているせいか、これまでハーレーダビッドソンは他メーカーのように多様なカテゴリーでモデルを展開することに積極的ではありませんでした。
しかし、2018年に突如、近年人気のカテゴリーとなっている「アドベンチャー」のニューモデルを開発していることが明かされました。
そのモデルこそ、パンアメリカ1250です。

2018年発表当時のプロトタイプ・パンアメリカ1250。この時点で市販モデルとほぼ変わらないほどスタイリングは完成されていました(ウインカーやシート、エンジンの装飾などに違いが見られます)。

ご存知の方も多いかもしれませんが、「アドベンチャー」バイクとはどういうものか簡単に説明しますと、舗装路だけでなく未舗装路も走りやすく(モデルによって程度の差がありますが)、荷物がたくさん積めて、防風性の高い外装のおかげで長距離高速移動だってラクラク。
野を越え山を越え……というようなイメージの長旅にもってこいの万能ツーリングバイクです。クルマで言うところのSUVみたいな存在です(こちらも近年大流行ですが)。

サスペンションが長くオフロード車チックな見た目は、ハイウェイを突き進むようなアメリカンのスタイルとは真逆とも言えますが、なぜハーレーダビッドソンはそんな縁遠いカテゴリーに挑戦することにしたのか?

それは純粋に、市場調査の結果。昨今ヨーロッパを中心に沸き起こっているアドベンチャーブームもあってか、ハーレーダビッドソンにアドベンチャーバイクを作ることを求める声が多かったからだと言います。
また、あるいは「今まで作ってこなかったものに挑戦して、優れた結果を残す」ことができれば、メーカーとしての実力を改めて誇示できるという側面もあるのかもしれません。
ともかく「あのハーレーがアドベンチャーを!」ということで、ハーレーファンだけでなく、多くのバイクファンがパンアメリカ1250の出来に注目・期待を寄せたのでした。

かつてはレーシーなバイクばかりラインアップしていたイタリアのドゥカティも、2003年からアドベンチャーバイク「ムルティストラーダ」を販売。写真はその最新型で、エンジンは1158ccV型4気筒、最高出力170馬力!

大排気量のモデルで特に顕著ですが、アドベンチャーバイクは「高級車」としての側面があります。これもクルマのSUVと似た傾向です。
200km/h超えでのアウトバーン巡航も余裕なほどの最高出力を持ち、安定した走行や疲労軽減に貢献する電子制御を多数搭載──。

しかし、ハーレーダビッドソンは高機能をウリとするよりは、「テイスト」や「フィーリング」といった言葉で表される魅力を武器にしてきたメーカーです。
それゆえ、パンアメリカ1250もそういったテイスト面の魅力を前面に押し出し、スペックに関してはそれほどこだわらないモデル……言ってみれば、他社のアドベンチャーと同じ土俵には立たないスタンスなのではないかという事前予想もありました。

しかしそんな予想に反して、市販モデルとして登場したパンアメリカ1250は、排気量1252ccのDOHC水冷Vツインエンジンは152馬力を発揮、それをしっかり受け止めるシャシーと足まわり、ライバルに負けない多彩な電子制御を備えたた「ガチ」のアドベンチャーバイクだったのです。

そのうえで、ベテランライダーでなくても十分扱いやすい構成に仕上げられており、ハーレーダビッドソンならではのテイストを完全に失ったわけではないですが、メディア向け試乗会では良い意味で「これはもはやハーレーと言えるのか?」という驚きの声も聞かれました。

メディア向け試乗会で、プロライダーによる試乗の後にちょっとだけパンアメリカ1250スペシャルに試乗した筆者。
バイク雑誌の編集部員という仕事柄、他社製ライバル車に乗る機会もありますが、パンアメリカ1250のパワフルさと柔軟さは最新アドベンチャーバイクとしてハイレベルな領域だと思えました。
特に、荒れた舗装路面をハイペースで走っても突き上げをほとんど感じないことには感動!

パンアメリカ1250の目玉「足着きサポート機能」とは?

このように、ブランド初のアドベンチャーバイクながら驚異的なクオリティで真正面からライバルに戦いを挑んだパンアメリカ1250。

2種類のグレードがラインアップされ、スタンダード版は「パンアメリカ1250」、装備が充実した上級版は「パンアメリカ1250スペシャル」という名称なのですが、パンアメリカ1250スペシャルのほうには、現時点ではどのメーカーのライバル車にも搭載されていない秘密兵器的な機能が備わっています。
それが「アダプティブライドハイト」です。

前述のとおり、アドベンチャーバイクはオフロードでの高い走破性と乗り心地の良さを確保するために長い前後サスペンションを備えた車体構成となっています。自然シート高も高いものが多く、高身長のライダーでない限りつま先しか接地しないこともしばしば……。

それゆえアドベンチャーバイクに抵抗感があるライダーも少なくないのですが、アダプティブライドハイト機能は、なんと停車時には自動でシート高を下げて、足を着きやすくしてくれるのです!

アダプティブライドハイト機能を持った電子制御リヤサスペンションは、日本のサスペンションメーカーのショーワ製(写真はショーワのメディア向け技術説明会で展示されたサンプル)。パンアメリカ1250ではECUはハーレーダビッドソンが独自開発。

そして、バイクが動き出すと、バイクの運動性やライダーの快適性を考慮して設定された通常のシート高へと復帰させていくのですが、その仕組みは下の図のとおり。
「プリロード」というサスペンション用語の意味を知っていると理解しやすいのですが、要するに、停車時にはリヤサスペンションを縮みやすい状態にしてライダーの体重による沈み込みでシート高を下げ、動き出したらリヤサスペンションを通常の状態(停車時より縮みにくい状態)に戻しているのです。

話を聞くだけだと何となく簡単に作れそうな装置ですが、バイクはクルマに比べて機器をレイアウトできるスペースが限られているため、かなりコンパクトなシステムでないといけません。
それを大きなモーターなどを必要としないパッケージで見事に実現したショーワさん、ありがとうございます!

足着きは不安だけど、ローシートとローダウンサスを組み合わせて思いっきりシート高を下げるのにはかなり抵抗感がある、そんな私も大満足です。シート高は無負荷時は890mm、アダプティブライドハイト作動時で830mm。身長170cm・体重55kg程度の私でも、純正オプションのローシートを併用すればカカトまで接地しました。


パンアメリカ1250の自動車高調「アダプティブライドハイト機能」の仕組みとは?

パンアメリカ1250スペシャルに装備されているアダプティブライドハイト機能のベースとなった「SHOWA EERA HEIGHTFLEX」(ショーワ・イーラ・ハイトフレックス)に関する資料より。走行中はリヤサスペンションのスプリングを抑えているジャッキは一定の位置に留まっている。

車速が下がり、停車への移行をECUが感知すると、ジャッキの位置を調整するオイルがリザーバータンクを経て、ポンプ機構(後述)を備えたオイル室に送られる。その結果、スプリングへの荷重が弱まり、スプリングが縮みやすくなることでサスペンションが沈み込み、シート高が下がる。

停車時から発進して走り始めると、路面の凹凸が前述のオイル室に付けられたロッドを上下に動かし、そのポンプ作用により、ジャッキに圧を掛けるためのオイルが送られる。これにより、スプリングへの荷重が強まっていき、スプリングの反力が上がることでシート高が高くなっていく。
ジャッキが一定の位置まで下がると位置センサーがそれを感知して、ポンプ作用で送られるオイルの経路を循環コース(一番最初の図を参照)へ変更。ジャッキの位置、すなわちスプリングへの荷重は一定に保たれる。


知っているとちょっと自慢できる!?「パンアメリカ開発裏話」

さて、ここからは知っているとツウ?な小ネタを紹介していきます。

まずひとつめは、「開発テストでの総走行距離」。その高い完成度から、市販化までの数々のテストへの力の入り具合は相当なものと容易に想像できますが、パンアメリカ1250の走行テストに費やした距離はなんと約160万km!
内容としては舗装路と未舗装路が半々とのことで、オフロードでの走行性能にもかなり注力していることが分かります。

メディア向け技術解説映像で走行テストの概要を語る、チーフエンジニアのアレックス・ボズモスキーさん。「エボリューション」や「ツインカム」、「ミルウォーキーエイト」といった歴代のハーレーエンジンに携わってきたベテラン技術者です。

そして、開発裏話ふたつめ。映画『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービ役などで知られる俳優のユアン・マクレガーさんも、実はパンアメリカ1250のある部分の開発に関係しているのです!

というのも、彼がライダーとして参加し、アドベンチャーブームを加速させたと言われる『ロング・ウェイ・ラウンド』という大陸横断ツーリングドキュメンタリー番組があるのですが、その続編で、2020年に放映された『ロング・ウェイ・アップ』ではハーレーダビッドソン初の電動車「ライブワイヤー」をベースにしたバイクが用いられました。

その車両に、パンアメリカ1250に装着されるサスペンション&ホイールのプロトタイプが用いられていたのです。ジェダイお墨付き!……というのはジョークですが、なかなかおもしろい事実ではないでしょうか?

番組に登場したライブワイヤーのカスタム車。アルゼンチンのウシュアイアからアメリカのロサンゼルスまで、100日間で13ヵ国、1万3000マイル(約2万1000km)を走破しました。

最後は、独特なヘッドライト周りのデザインについて。
他社のアドベンチャーバイクとは似たところのない、オリジナリティに満ちた「顔」ですが、実は元ネタがあります。
といっても、ハーレービッドソン自社のバイクですが……。
横長のヘッドライトはハイパフォーマンスクルーザーの「ファットボブ」に、その周りのフェアリングは「シャークノーズ」と呼ばれる大型フェアリングとデュアルヘッドライトが特徴の巨大クルーザー「ロードグライド」にルーツがあるそうです。

「評価が分かれそう」との声も聞かれるフロント周りのデザインですが、筆者は好きですね。何となく機動戦士ガンダムシリーズに登場するジム系の、したたかな雰囲気があるような……「デザートジム」で画像検索してみてください(笑)。
パンアメリカ1250の全車体色とスペックを解説!

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CONTACT

ハーレーダビッドソンカスタマーサービス
TEL:0800-080-8080

http://www.harley-davidson.com

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