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ホンダPCXはバイクで唯一ガソリン、HV、EVと動力源が選択可能!各車のメリット・デメリットは?

そもそもホンダ PCXとはどんなモデル?

ホンダ PCXといえば、日本では原付二種(125cc)の販売が好調ですが、ワンクラス上の存在感で同カテゴリーの人気モデルとなっているスクーターです。

初代モデルの日本デビューは2010年3月。2014年4月、2018年3月とフルモデルチェンジを繰り返し、4代目となる現行型にフルモデルチェンジしたのは2020年12月です。
とはいえ、ずっとキープコンセプトでユーザーのPCX像を裏切らない進化を遂げてきています。

コンセプトは初代から変わらず「高級感のあるスタイリング」、「快適で上質な走り」、「優れた環境性能」を掲げています。車名につながる開発キーワードも、初代でも現行型でも「Personal Comfort Saloon」(パーソナル・コンフォート・サルーン)となっています。
特に現行型では、船のクルーザーをイメージさせる伸びやかで、流れを感じさせるスタイリングに。PCXに期待されるアッパークラス感を強調しているのが特徴といえるでしょう。

現行型PCXのガソリン車は125ccと160ccのエンジン

現行型=4代目ホンダPCX(35万7500円)。125ccの水冷単気筒エンジンを搭載し、最高出力12.5馬力の性能です。
現行型=4代目ホンダPCX 160(40万7000円)。156ccの水冷単気筒エンジンを搭載し、最高出力15.8馬力の性能です。

さて、PCXといえば原付二種に分類される125ccエンジンと、軽二輪になる150ccエンジンを用意するというのが初代からの伝統でしたが、現行型では軽二輪バージョンのエンジンが160ccへとスープアップされました。
グレード名でいうと原付二種のほうが「PCX」、軽二輪のほうは「PCX160」となります。

いずれも4バルブヘッドを持つ水冷単気筒の「eSP+」と呼ばれる新世代エンジンで、125cc仕様のほうもボア径の拡大(バルブ面積の拡大)や高圧縮比化など高出力方向に進化、まったく別物のエンジンになっています。
スロットルボディ径も広げられているほか、さらに油圧式カムテンショナーリフターの採用による低フリクション化と静粛性アップが図られているのも見逃せません。

駆動系もプーリーサイズの変更やミッションレシオの見直しなど大きく進化しています。これもフリクション低減や静粛性向上に寄与する部分ですが、実際に乗ると加速感としてもメリットを感じることができます。

PCXでは発進時から力強さを感じるセッティングになっていて、原付二種とは思えない爽快な加速が味わえます。
一方、PCX160のほうは中速域からの伸びやかさが楽しめる味つけで、なるほど高速道路も走行できる軽二輪としてキャラクターが明確に分けられているのが実感できるでしょう。

なお現行型は、わずか3年足らずでフルモデルチェンジを実施していますが、エンジンだけでなくフレームも新設計となっています。これによりシート下の収納スペースが30Lへと拡大(従来型は28L)されたのもトピックスとなっています。

PCX 160 エンジン
4バルブ化による出力向上、環境性能の改善が行われた4代目PCX用の新エンジン。エンジンの名前もそれまでの「eSP」から、「eSP+」へと変更されました。
純ガソリンエンジン車、PCX、PCX 160のシート下収納。従来型より容量は2L拡大され、30Lとなっています。

PCXには「e:HEV」=ハイブリッド仕様がある

ホンダ PCX e:HEV(44万8800円)。最高出力12.5馬力の125ccエンジンに最高出力1.9馬力のモーターを組み合わせています。

そして、この収納スペースを24Lへと削り、そうして生まれたスペースにリチウムイオン電池を配置したのが「PCX e:HEV」。パワーユニットは125ccの「eSP+」エンジン+モーターで原付二種となります。
ホンダの四輪車でもハイブリッドカーには「e:HEV」という名前を使っていますが、二輪も統一したブランディングで電動化を進めているようです。
(編集部註:PCX にハイブリッド仕様が登場したのは3代目からですが、そのときは「PCX HYBRID」という車名でした)

フィットなどの「e:HEV」というのは2モーター式ハイブリッドといって電気モーターだけで走ることができるメカニズムとなっていますが、PCX e:HEVはエンジンを主体としてモーターはアシストを担うという位置づけになっています。
ですからモーターのスペックは最高出力1.9馬力、最大トルク0.4kgmと控えめです。それでも発進時や巡行からの加速時などにはモーターアシストの効果を感じることができるでしょう。
e:HEV専用の青と白の2トーンカラーもエコなイメージで魅力です。

PCX e:HEVのシート下収納。容量は24Lで、収納後部にはリチウムイオンバッテリーパックやジャンクションユニットなどハイブリッド用システムが搭載されています。

旧型=3代目ベースのフル電動仕様もPCXにはある

ホンダ PCX ELECTRIC。法人企業・個人事業主・官公庁に限定したリース専用車です。
PCX ELECTRICは最高出力4.2kW=5.7馬力(定格出力0.98kW=1.3馬力)、最大トルク1.8kgmのモーターを搭載しています。

PCXで注目なのは、ハイブリッドだけでなくEV=フル電動仕様で原付二種の「PCX ELECTRIC」も設定されている点です。
こちらは基本的に法人・個人事業主向けのリース販売のみとなっていますから、ほとんど街で見かけることのないレアモデル。デビューは2018年11月で、ガソリンエンジンとハイブリッドは現行型=4代目へとモデルチェンジしましたが、PCX ELECTRICはひとつ前の3代目ベースのモデルで継続されています。

PCX ELECTRICの特徴はバッテリーが交換式となっている点です。
満充電での航続可能距離は60km/h定地走行で41kmと心もとないのですが、バッテリーが減ってきたらガチャンと交換するだけですぐさま満充電状態にできるのは魅力でしょう。

PCX ELECTRICはシート下に着脱可能なモバイルパワーパックと呼ばれるバッテリーを2個搭載。専用充電器でモバイルパワーパックを充電する以外にも、AC100V電源を車両に直接繋いで充電することも可能です。

筆者は、このPCX ELECTRICにクローズドコースで試乗した経験もあります。モーター駆動というとグンっという力強い発進加速を期待するかもしれませんが、意外に拍子抜けするようなマイルドな加速でした。
コントロールのしやすさや航続距離を稼ぐために出力を抑えているためのようです。それでも40km/hからアクセルをグッと捻れば、しっかりと期待通りに加速するものでした。

なにより、停止時や加速時に振動が皆無なのは圧倒的な快適性を生み出すもので、PCXの基本コンセプトにぴったりのパワートレインだと感じたものです。
エンジンを進化させることも大事ですが、「Personal Comfort Saloon」を極めるのであればフル電動化というのはひとつの選択肢になると感じたことを覚えています。

ガソリン125cc、ガソリン160cc、HV、それぞれどんな人におすすめ?

とはいえ、現時点ではPCX ELECTRICは販売方法含め一般ユーザー向けでないのも事実。そこでPCX、PCX160、PCX e:HEVの3モデルで、どのようなユーザーにおすすめなのか考えてみましょう。

まず、これ一台でなんでもこなしたい、高速道路にも乗って遠出したいという人であればPCX160の一択です。
お値段は原付二種のPCXに対して4万9500円高の40万7000円となりますが、高速道路を走れるという価値を考えると十分にリーズナブルといえるでしょう。

高速道路を走る場合は四輪車が多く、二輪は日常の街乗りで使いたいという人にはPCXのほうが幸せになれるはず。
ご存知のように、原付二種の場合は四輪の任意保険にファミリーバイク特約をつけることでカバーできますから維持費も安くすみます。自動車税についても原付二種のほうが軽二輪より有利なのは言うまでもありません。

正直、ちょっと微妙なのがPCX e:HEVです。そのメーカー希望小売価格は44万8000円とPCXより9万円以上高くなっていますし、PCX160よりも高価です。
確かにモーターアシストの走行は新しい感覚はありますが、そのために支払うエクストラコストとしては割高感もあります。燃費性能についてはWMTCモードでPCX47.4km/Lに対してPCX e:HEVは51.2km/Lとアドバンテージはありますが、そもそもPCX自体が好燃費ですから、ここでのありがたみも価格差ほどではないかもしれません。

というわけで、街乗りメインで考えるとおすすめは素のPCXです。35万7500円のメーカー希望小売価格は原付二種としては高いと感じるかもしれませんが、またがったときの満足感は価格以上、おそらく多くのライダーが適正価格と感じるはずです。

レポート●山本晋也 写真●ホンダ 編集●上野茂岐

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https://www.honda.co.jp/PCX/

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