新車

匿名係長 第2回 ホンダNC700シリーズの巻

上司の前では吐けない本音を覆面インプレッション !

上司が白いと言えばカラスも白い。それがサラリーマンの悲しき世界だ。そしてここにも、本音のバイクインプレッションを上司に報告できず、うっぷんを募らせ続けている男がいる。

彼の名は匿名係長。課長の目の届かない場所で、耳を傾けてくれる部下だけにバイクの本音を吐く毎日だ。

今回、その矛先が向かったのは2012年の話題を独占した”ニューミッド” 、NC700シリーズである。

 

(※当記事はモーターサイクリスト2013年3月号の記事を再編集して掲載しています。なお、人物設定や会話はフィクションですが、バイクの印象については某ジャーナリストの話を基に構成しており、編集部の創作ではありません)


今回の車両:ホンダ NC700シリーズ

■HONDA NC700series profile

669ccの新開発並列2気筒を積む基本プラットフォームから、デュアルパーパス型のNC700X、ネイキッドのNC700S、スクーター型のインテグラの3機種を造り分けるNCシリーズ。

非日常領域を切り捨てたエンジンはレブリミットを約6500回転と低く設定し、燃費と常用域の楽しさに特化。通常のタンク位置にはフルフェイスヘルメットも格納可能なラゲッジスペースを確保する。

クラッチ操作を不要とするDCT車の設定や、60万円を切る59万8500円(NC700S)という衝撃の低価格など、とにかく話題に事欠かず、2012年の二輪界を席巻した感がある。

 



登場1年で販売台数世界一 今後の二輪界を揺さぶる存在

 

■某月某日・喫茶店にて

係長●……売れてんなぁ、AKB48。

主任●え? ああ、テレビですか。なんせ2012年のCD売上は880万枚。2位のEXILEですら230万枚ですからね、出演番組だっていったい何本あるんだか。神メンなんか多忙過ぎて、ろくすっぽ寝てないでしょうね。

係長●詳しいな。だれ推しなんだ?

主任●俺はさしこがHKTに飛ばされて以降、抜け殻の日々を送っています。

係長●お前のノルマ達成率はそれ以前から抜け殻状態だけどな。それにしても、寝るヒマがないほど売れ売れとはうらやましい限りだな。我らがバイク業界もあやかりたいものだ。

主任●なに寝ぼけたことを言っているんですか! 今年度はホンダのNC700シリーズがあるでしょう。二輪業界待望の大ヒット車じゃないですか。

係長●NCって……大ヒットなのか?

主任●ホントに寝ぼけてませんか?

係長●国内では、発売から1年の出荷台数計画を、NC700X/S/インテグラのシリーズ合計で5500台に設定した。最初に登場した700Xが12年の2月発売だからもうすぐ1年だが、12年末までの販売台数は3車合計で5517台(二輪車新聞調べ)。計画どおりだな。

主任●ホラ、売れ売れじゃないですか。

係長●世界的に見れば、NCシリーズは5万台/年という販売計画を立てている。生産台数は昨年10月の時点で、熊本工場とブラジル工場の合算で4万3000台超。見事なまでにねらいどおりに推移していると言っていいだろうな。

主任●ほらね! バイク界のAKBですよNCは。

係長●確かに、これはものすごい数字でな。500㏄以上のクラスでは、ホンダNCシリーズは世界で最も売れていると言っても過言ではないだろう。

しかし、バイクに限らず工業製品というものは、計画どおりに売れて初めてねらいどおりの利益を生むように価格設定されるものだろう。

つまり「計画」っていうのはノルマと同義、大きく捉えれば黒字の必達ラインなんじゃないのか?

主任●ノッ、ノルマ! 喫茶店でサボリングなうの俺たちが最も聞きたくない言葉!

係長●つまり、NCは与えられたノルマを粛々とこなしている。俺たちと違ってな。大ヒットっていうのは、ひと月で2カ月分のノルマを達成してしまうような状態だろう。つまりNCは大ヒットというよりも、ホンダの目論見どおりに、売れるべくして売れていると俺は考えている。でも、NCの場合はその目論見が超強気だからな。その計画どおりに売れているなんて、今のご時世では恐るべきことだよ。5500台って年間出荷目標はCB400シリーズのほぼ倍だぞ。

主任●すげー、国民的ヨンヒャクの倍!

係長●でも、目標とする生産台数があれば、そこに合わせて部品も調達するし、工場のラインも構築されるだろ。だから販売が計画どおりなら、生産も至って粛々と、スケジュールどおりに運んでいるはずなんだ。ってことはNCを造っている熊本工場の従業員はきっちり5時に退社して、近所のスナックに飲みに行ったりできてるんだよ、多分。

主任●俺たちも、営業の合間に昼キャバとか行けますけどね。

係長●それは会社にとってまったくスケジュールどおりではないけどな。まあ、ともちんやまゆゆは睡眠時間を削って働いてるんだろうよ。そんなAKBを大ヒットとするなら、売れてはいてもスケジュールどおりに仕事をこなすNCは、言うなればタモリだよ。タモさんをつかまえて大ヒットとかブレイク中とは誰も言わんだろう? よし、今日は徹底的にNCの話をするぞ。その前にコーヒーお代わり。長いサボリ時間になりそうだ。

 

■NCファミリーは今後も増殖予定?

NC700X(64万9950円~)

 

NC700S(59万8500円~)

INTEGRA(80万8500円)

ネイキッド型のSをベースに考えると、前後サスストロークを伸ばして車体前半にオンオフ的な外観を与え(シートやテールまわりは共通)、シート高が40㎜上がるのがX。3兄弟で共通品のヘッドライトもフレームマウントされ、アップハンドルも採用する。

XにはSの足まわりを組んでシート高を30㎜下げた「タイプLD」も用意され、無償で選択可能。両車ともABS車は+4万9350円で、DCT車(ABSも装備)は+10万2900円となる。

スクーター的な外観を与えられたインテグラは全車がDCTとABSを装備。燃料タンク部の収納はなくなるが、シート下に15ℓのラゲッジを備える。

このNC用プラットフォーム「3機種で終わると思いますか?」と開発者が明言しており、今後も兄弟車は増殖する模様。

 

 

→次ページに続くぞ。お姉さん! コーヒーお代わり!!

1

2 3
  1. CBR250RRに乗る女子高生ライダーが『CBR400R』に乗った感想「最高です。欲しくなりました」

  2. ベテランライダーが『CBR650R E-Clutch』に乗って感じた楽しさ

  3. 寒い時期はバイクに乗らない人へ!愛車を冬眠させるなら「4つの〇〇+α」をやっておけばずっと長持ち!

  4. 還暦からセカンドライフをスタートさせた『Rebel (レブル)1100 <DCT>』のオーナー

  5. 技術者たちが語る「Honda E-Clutch」。新しい技術に秘められた苦労と想いとは?

  6. CL500はストリートが楽しいバイク。ビギナーからベテランまでを満足させる万能マシンだ!

  7. 原付だから多くの人に愛された。『スーパーカブ50』の歴史を辿ってみる。

  8. CL250はセカンドバイクじゃない。この250ccは『メインの1台』になり得るバイクだ!

  9. Rebel 1100〈DCT〉は旧車を乗り継いできたベテランをも満足させてしまうバイクだった

  10. 定年後のバイクライフをクロスカブ110で楽しむベテランライダー

  11. CL250とCL500はどっちがいい? CL500で800km走ってわかったこと【ホンダの道は1日にしてならず/Honda CL500 試乗インプレ・レビュー 前編】

  12. 【王道】今の時代は『スーパーカブ 110』こそがシリーズのスタンダードにしてオールマイティー!

  13. 新車と中古車、買うならどっち? バイクを『新車で買うこと』の知られざるメリットとは?

  14. ビッグネイキッドCB1300SFを20代ライダーが初体験

  15. どっちが好き? 空冷シングル『GB350』と『GB350S』の走りはどう違う?

  16. “スーパーカブ”シリーズって何機種あるの? 乗り味も違ったりするの!?

  17. 40代/50代からの大型バイク『デビュー&リターン』の最適解。 趣味にも『足るを知る』大人におすすめしたいのは……

  18. ダックス125が『原付二種バイクのメリット』の塊! いちばん安い2500円のプランで試してみて欲しいこと【次はどれ乗る?レンタルバイク相性診断/Dax125(2022)】

  19. GB350すごすぎっ!? 9000台以上も売れてるって!?

  20. “HAWK 11(ホーク 11)と『芦ノ湖スカイライン』を駆け抜ける

おすすめ記事

ベスパ プリマベーラ150にビビッドカラーの特別モデル「カラーバイブ」が登場!4月から入荷開始 2014〜18年式のYZF-R25にも対応! サイン・ハウスより「LED RIBBON REVO H7 type2」が発売 クルマやバイク「冬はエンジンの調子がいい、パワーが出る」というウワサは本当?

カテゴリー記事一覧

  1. GB350C ホンダ 足つき ライディングポジション