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ユニークな3気筒エンジンのパフォーマンス、クラスをリードするテクノロジーとハンドリング、100万円を切る魅力的な価格。これらの優位性を掲げトライアンフから新たにトライデント660が登場した。
当記事では、多くのライダーが楽しむ「日帰りツーリング」の行程を想定し、トライデント660の持つツーリング性能や、走りの魅力を探ってみた。

【画像29点】トライデントの特徴や豊富なオプションパーツを写真で解説
トライデント660は「走りも装備も100万円以下とは思えないクオリティ」
乗って分かるのはテストライダーなら当然。でも、乗る前から分かる。これ、絶対良いやつ!
いや、ここ最近、トライアンフのマシンはどれもすごく良い。それは設計の絶妙さということもあるとは思うのだけれど、大きな要因のひとつに「テストライダー陣の感性が素晴らしい」ということがあると個人的には思っている。 過去に幾度も参加したニューモデル発表会で会ったテストライダーたちは、決して有名な選手権で活躍したようなライダーばかりではないのだけれど、だからこそなのか、ラップタイム的性能重視といったモノサシではなく、乗って楽しいと思えるマシン作りへのこだわりが一貫しているように感じられていたのだ。
ここ数年は、Moto2にエンジンを供給するなど、トライアンフ自体がMotoGPと深く関わりを持つことでレース色がやや強まっており、それがどのように影響するのか不安もあったのだが、そんな心配は全く不必要であった。

「トライデント」という名前に込められた期待

この新作に付けられた「トライデント」という名前は、1968年にトライアンフが初めてリリースした3気筒マシンに冠されたものである。ボンネビルしかり、スピードツインしかり、伝説ともなっている名車たちの名を拝借するのはプレッシャーでもあるはずだが、そこに強い意気込みも感じられる。
デザインは非常にオーソドックスかつ個性的。トライアンフのロードスターモデルのアイデンティティでもある特徴的な2眼ヘッドライトではないのが新鮮で、個人的には高評価でもある。
660ccの同排気量車「ストリートトリプルS」とは異なる専用設計
排気量は660cc。昨今の大排気量化というトレンドからすれば「小さい」とも思われるが、個人的にはトライアンフ史上最高の名機、スーパースポーツ・デイトナ675とほぼ同じ排気量ということを考えると、それはベストな選択であるとも言える。なお、ストリートトリプルSの排気量と同じことから、それを転用したエンジンと思うかもしれないが、その中身の多くは専用設計だ。

キャラクター作りの要にもなるボアストロークからして違う。ストリートトリプルSは76mm×48.5mm、トライデントは74mm×51.1mm──ショートストロークエンジンが主流となるなかで、ロングストロークとしたその狙い。そしてそれによって得られるフィーリングがどういったものになっているのか?
フレームやスイングアームも、ストリートトリプルSのパッケージングを流用しているものと思った人もいるであろうが、こちらも完全なる新作が与えられている。それはよりストリートユースを意識した設定であり、ライディングポジションもこちらのほうがアップライト。着座した状態ではシートにほぼ全ての体重が載り、ハンドルがフリーになる。
トルクフルな3気筒660ccエンジン
走り出しての第一印象は「本当に660ccなのか?」。そう思うほどトルクフルかつパワフルである。どのギヤを選択しようが、どの回転数を使おうが、アクセルひとひねりで力強い加速力を見せてくれるフレキシブルさ。
回転でパワーを上乗せしていくのではなく、トルクでスピードを増していくといった印象が、よりイージーな操作感を演出してくれる。これはロングストローク化の恩恵でもあるだろう。

一方、トルク重視のエンジンにありがちな、重ったるさやレスポンスのだるさがないのは排気量のバランスの良さといったところか。回転数を上げる方向に使い方を持っていった場合でも、フリクションなくキレイに回転数が上昇していく。 それは4気筒エンジンかと思わせるほど柔軟性にも富んでおり、魅惑のトリプルサウンドとともに刺激的な面も持ち合わせている。
そして、そのパワーカーブはちょうど良いタイミングで頭打ちを迎える。 早すぎればもうちょっと欲しかったと欲が出る。逆に遅すぎれば恐怖を抱く。そのさじ加減が絶妙で満足感の高い設定は、ラップタイム優先で作り込んだからではないからこそではないだろうか。
半面、もしサーキットで走らせても間違いなく面白いはずで、乗りこなしてやったという充実感が味わいやすい設定である。
2種類の走行モードを備えるトライデント660




トライデント660はハンドリングの素直さも魅力
ハンドリングは いたって素直。ホイールベースが短く感じられるようなキャラクターで、人車一体感が高くスイスイと旋回していく。もともとの軽量さに加え、ライディングポジションによって作り出される荷重バランスによって、フロント回りの軽快さを引き出しやすくも感じられる。
今一歩と感じられたのは足まわり。路面のギャップを体に伝えがちなのは、仕方ないところか。とはいえ、分かりやすい挙動がバイクをコントロールすることに自信を与えてくれる設定でもある。
もちろん、ここに手を入れればハッキリと違いが出るはずであり、そんなカスタマイズの楽しみもバイクライフに豊かさを与えてくれるはずだ。
ライディングモードやトラクションコントロール、シンプルな画面ながら多機能なメーター等、機能面でのコストパフォーマンスの高さが際立っているものの、そこばかりがこのマシンの目玉ではないことは強調しておきたい。基本的な部分での高い完成度があるうえで、この装備、価格設定なのだから文句のつけようがない。



トライデント660に乗って感じたトライアンフの飛躍
ここ数年、トライアンフの販売台数はとにかく好調である。それは販売サイドの努力もあるとは思われるが、まずもって「マシンが良い」ということが大前提としてあると思う。
良いものが必ずしも売れるとは限らないけれど、テストライダーとしては、乗ったうえでそれが当然であるように感じるのだ。そんななかで登場したトライデントもまたしかり。同社のさらなる飛躍を感じさせるマシンに仕上がっていたのである。

トライデント660の足着き&ライディングポジション
805mmと、スポーツネイキッドとしては標準的なシート高。極端に低いわけではないが、運動性能を考えると良いバランス。乗車姿勢はコンパクトで自由度も高い。ハンドル位置がアップライトで腕にプレッシャーがかからず、操作性とハンドリングの軽快さを生み出している。


トライアンフ トライデント660主要諸元
【エンジン・性能】
種類:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:74.0mm×51.1mm 総排気量:660cc 最高出力:60kW<81ps>/10250rpm 最大トルク:64Nm<6.5kgm>/6250rpm 燃料タンク容量:14L 変速機:6段リターン
【寸法・重量】
全長:── 全幅:795 全高:1089 ホイールベース:1401 シート高:805(各mm) 車両重量:189kg タイヤサイズ:F120/70R17 R180/55R17
【カラー】
クリスタルホワイト、サファイヤブラック、マットジェットブラック×シルバーアイス、シルバーアイス×ディアブロレッド
【価格】
97万9000円
トライデント660は「機能的な純正アクセサリーも充実」
【テスト車に装着の純正アクセサリー】
MY TRIUMPHコネクティビティモジュール(4万6453円)、MY TRIUMPH CONNECTIVITY MODULE FITTING KIT(880円)、USBチャージャー(5060円)、アルミ製ベリーパン(3万690円)、タンクパッド(6270円)、ヒートグリップ(4万5100円)、ピリオングラブハンドル(3万690円)、フライスクリーン(2万3870円)、バーエンドフィニッシャーキット ブラック・ペア(6490円)、機械加工バーエンドミラー(4万700円)、CNC機械加工オイルフィラーキャップ(3740円)、テールパック(3万2120円)、スクロールLEDインジケーター フロント/ペア(2万3870円/2万4640円) *いずれも価格は工賃別







「マイ トライアンフ」アプリを使えばスマホなどと連動が可能

オプションで「マイ トライアンフ」コネクティビティシステムを追加してスマートフォンと連携させれば、TFTディスプレイに電話の着信状況や簡易ナビ、音楽再生メニューを表示可能。また、コネクティビティモジュールにGoProを接続すれば、車体のスイッチで各種操作ができる。
試乗レポート●鈴木大五郎 写真●岡 拓/トライアンフ 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実