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2輪・4輪両方を手掛けるメーカーは世界的に見ると少ないせいだろうか(大企業で言えば、ホンダ、スズキ、BMWくらしいかない)。
ガソリンエンジンを動力源とし、タイヤを回して走り、趣味の対象にもなる乗り物……という共通項があっても、意外にバイクとクルマのコラボレーションは多くない。
イタリア・ドゥカティ×イタリア・ランボルギーニのコラボ
しかし近年、積極的にクルマとのコラボモデルを登場させているのが、イタリア・ドゥカティのハイパフォーマンスクルーザー「ディアベル」である。
その最新コラボ車が、ドゥカティ・ワールド・プレミア2021 エピソード4で発表された「ディアベル1260ランボルギーニ」。
これはドゥカティが同じフォルクスワーゲングループに属するランボルギーニのスペシャリティモデル「シアンFKP37」にインスピレーションを受けて誕生したモデルだ。
ランボルギーニはトラクターの製造で財を築いたフェルッチオ・ランボルギーニ氏が1963年に350GTVを発表し四輪メーカーとしての歩みを始めているが、ディアベルに描かれた「63」はこの年にちなんでいる。
なお「FKP37」は2019年8月25日に82歳で逝去したポルシェ創業者の孫にして、アウディのクワトロシステムなどを発案した技術者、そして優れた経営者であったフォルクスワーゲングループ元会長のフェルディナント・カール・ピエヒ氏の名前の頭文字と生年である1937年が由来となっている。
ドゥカティ ディアベル1260ランボルギーニ
ドゥカティ ディアベル1260ランボルギーニ主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクルV型2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:106mm×71.5mm 総排気量:1262cc 最高出力:119kW<162ps>/9500rpm 最大トルク:129Nm<13.2kgm>/7500rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:1600 シート高780(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R240/45ZR17 車両重量:246kg 燃料タンク容量:17L
[価格]
376万5000円(世界限定生産630台)
イタリア・ドゥカティ×ドイツ・AMGのコラボ
ドゥカティもランボルギーニも同じイタリアンメーカーという繋がりがあるが、イタリア×ドイツという国をまたいだコラボ車も存在した。
ドゥカティの2012年モデルとして登場した「ディアベルAMGスペシャルエディション」である。
イタリアのドゥカティとドイツのメルセデスAMGのコラボは2010年の終わり、ドゥカティMotoGPチームのスポンサーとしてAMGを迎えたことから始まった。
今やメルセデスベンツの正規ラインアップにも載る「AMG」だが、改めてその歴史を簡単に紹介すると、AMGはエンジンチューナーとして1967年に創業し、メルセデスベンツを使ったレース活動で名を馳せた企業。
1999年にはその実績を買われ当時のダイムラー・クライスラーに吸収されたのち、現在ではメルセデスAMGというブランドとして、ダイムラー(メルセデス・ベンツが属するメーカー)のレース部門ともいうべき存在になっているのだ。
ともにハイパフォーマンスを追求するブランドとしてドゥカティとAMGは、同じ価値観を持つもの同士のコラボレーションだと言える。
手始めにMotoGPを走るドゥカティデスモセディチGP11にAMGのロゴが入り(フロントダクトの上やステップ下のカウル付近)、ヨーロッパで行われるグランプリでは両社の同時展示や試乗会などが行われた。
また、2011年のドバイ24時間レースではドゥカティのロゴがリヤウイングに記されたAMG SLS GT3が3位表彰台に入るなどの活躍を見せている。
そして極めつけが2011年に発表された「ドゥカティ ディアベルAMGスペシャルエディション」で、シート、カラーリング、ホイールなどを変更し、AMG、ドゥカティのスポーツイメージを市販車で表現したものだった。
しかし、蜜月は長く続かなかった。2012年にドゥカティがフォルクスワーゲングループに買収された翌日、AMGはパートナーシップの終了を発表したのである。
イタリア・MVアグスタ×フランス・アルピーヌのコラボ
ドゥカティ×AMGのように、国を超えたコラボレーションは他にもある。
イタリアとフランスの両名門ブランドから生まれた「MVアグスタ スーパーベローチェ アルピーヌ」である。
まずはMVアグスタの歴史を振り返っていこう。
1945年、敗戦により航空機の製造が禁止されたイタリアのアグスタ社はヴェルゲーラ(MVはメカニカ・ヴェルゲーラの略)という街でバイクの製造を開始し、1949年から始まったロードレース世界選手権(現在のMotoGP)にも当初から積極的に参加。
1952年に125ccクラスで初の年間チャンピオンを獲得し、1965年には350ccクラスに同クラス専用設計の4サイクル並列3気筒エンジンを積んだ350GPを投入する。
翌年はこのエンジンの排気量を420ccに拡大し、500ccクラスに3気筒で参加した。ホンダの4気筒、RC181よりもコーナリング、加速性能に優れたマシンはこの年ジャコモ・アゴスチーニを年間タイトルを導いている(以降アゴスチーニ&MV3気筒は同クラス7連覇の偉業を遂げる)。
4サイクル並列3気筒というエンジンレイアウトはMVアグスタにとって栄光とともにあるが、スーパーベローチェも伝統を受け継ぐ同様のエンジンレイアウトを採用しているほか、丸みを帯びたカウル、タンク上のベルトなど60~70年代のクラシックグランプリレーサーの造形を彷彿させるデザインを採用している。
MVアグスタ スーパーベローチェ アルピーヌ
一方、今回コラボレーションしているアルピーヌA110も歴史を紐解けばMVアグスタ同様、レースとは切り離せないメーカー、マシンだと言える。
アルピーヌは南フランスの地方都市で父親がルノーのディーラーをしていたという縁により1955年にジャン・レデレがルノー4CVをベースにしたスポーツカーを作ることで創業。
ミッレ・ミリアなど公道レースで好成績を収めたことでルノーとの協力関係が年々色濃くなり、A106、A108を経て、4ドアRRセダン、ルノーR8のコンポーネントを流用した2ドアクーペ「A110」が1962年に「サロン・ド・ロト」(今で言うパリモーターショー)でデビューする。
当初は1000ccほどであったA110の排気量は年を追うごとに拡大が進み、1973年に始まった世界ラリー選手権(WRC)の開幕戦に組み込まれた、第42回ラリー・モンテカルロに参加したのは直列4気筒1800ccを積むモデルだった。
軽さとコンパクトな車体、エレガンスなボディラインからは想像つかないほどの耐久性を武器にポルシェ、サーブなどの強豪を退けジャン・クロード・アンドリューが見事優勝。加えて2位、3位も独占するという圧倒的強さを見せ、シーズンが終わればWRC初年度のマニュファクチャラーズタイトルも獲得。
その後アルピーヌはルノー傘下に収まるが、ルノー5(サンク)アルピーヌなど同社が持つスポーツモデルのイメージは揺るぎない。
輝かしい歴史をもつA110 1800をイメージし、2017年に26年ぶりのアルピーヌとして登場した新型A110だが、クルマとバイクの違いはあれど、輝かしい歴史を背景に持つ2台のコラボは非常に興味深い。
なおスーパーベローチェ アルピーヌは限定110台、日本円換算で約460万円と高額だったが、発売からのわずか数時間後には完売を知らせる一報が入った。
MVアグスタ スーパーベローチェ アルピーヌ主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列3気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:79mm×54.3mm 総排気量:798cc 最高出力:108kW<147ps>/1万3000rpm 最大トルク── 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:── シート高──(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:173kg(乾燥) 燃料タンク容量:──
[価格]
3万6300ユーロ(世界限定生産110台で完売、日本へは未導入)
レポート●飯田康博 写真●ドゥカティ/MVアグスタ/八重洲出版 編集●上野茂岐