多くのバイクファンが期待してきた250cc並列4気筒マシン、カワサキニンジャZX-25Rが2020年9月10日、ついに発売。
開発陣がこだわった45馬力を発生させるエンジンは、どんな走りをみせるのか。
カワサキのテストコースでもある大分県のサーキット「オートポリス」で限界性能を試し、その後、ワインディングロードで一般道における性能をチェックした。
ZX-10RやZX-6Rの思想を受け継いだ車両構成
250ccの4気筒マシンを走らせるなんていつ以来だろう?
まさか、このクラスの4気筒マシンが再びニューモデルとしてリリースされるとは想像すらできなかった。そんな止められた時計の針を動かしたカワサキ。2019年秋の東京モーターショーで詳細がアンベールされてから、その走りへの期待感は日に日に高まっていった。
2020年7月、価格は82万5000円からと発表。約30年前のレーサーレプリカ・ZXR250からすれば約4割ほど高く(編集部註:1989年に発売されたZXR250の発売当時新車価格は59万9000円だった)、近年の250ccクラスのマシンとして見ても高価な部類かもしれない。
「おいそれと若者は買えない」という声もあるかもしれないが、そういった金銭感覚に陥ったのは我々の問題であり、それを全てのマシンに当てはめてしまっては魅力的なマシンが登場する機会が失われてしまう。
また「だからこそ憧れる」といった考え方もできるかもしれない。
そんな状況でのチャレンジには、素直に称賛の声を贈りたいところだ。
トラクションコントロールやパワーモード、クイックシフターの装備(上級仕様のスペシャルエディション)など、既存の250ccクラスでは考えられなかった充実の装備が与えられているのも意欲の現れである。
コンマ数馬力の差や、付加価値を感じる装備に一喜一憂していた若かりし頃を思い起こせば、「このクラスにそんな装備は必要なのか?」という声すら一蹴することができるだろう。
一方、高回転域で発揮される最高出力は当時と発生回転数も変わらずの45馬力を発揮。
半面、低中速域はどうなのだろうか? 当時の250クラスレプリカモデルを思い返してみれば、ひ弱な低中回転域は完全なる「捨てパート」とも思え、後には250ccに4気筒は不要、ツインやシングルで十分との思い至った記憶も蘇った。
現代の技術で蘇ったクォーター4発は、どんな性能を持っているのか?
カワサキのテストコースでもあるオートポリス。ヨーロッパ的コースともいわれる、自然の地形を利用したアップダウンのあるテクニカルなコースは、ニンジャZX-25R誕生の地でもある。
そんな記念すべき場所にて初対面したニンジャZX-25Rは、ニンジャZX-6RやニンジャZX-10Rとよく似たレーシーなイメージだった。
しかし、そのボディは明らかにコンパクトで、無駄なプレッシャーを感じることがない。
アルミ製ではなく、スチール製トレリスフレームを用いたのは剛性バランスの最適化だけでなく、いかにスリムに作るかというテーマを念頭に置いたものだともいうことだが、またがった瞬間感じたのは「乗り手を選ばない取っつきやすさ」というファーストインプレッションだった。