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【試乗速報!】カワサキ Z H2 200馬力スーパーチャージャーネイキッドの加速はやはり凄まじかった

200馬力を発揮するスーパーチャージャー付きエンジンを搭載したネイキッドモデル「Z H2」が日本では4月4日に発売となったが、イギリスのバイクジャーナリスト、アダム・チャイルド氏から早速試乗レポートが届いた。マン島TTレース出場経験がある彼をしても、Z H2の加速力は凄まじかったという。


スーパーチャージャーでパワーアップを目指したカワサキ

今私が乗っているカワサキZ H2には200馬力を発生するスーパーチャージャー付き998cc4気筒エンジンが積まれています。あなたのバイクは馬力でこのZ H2に勝てますか? 勝てる……そうですか、なるほど200馬力級のバイクは珍しくなくなってきましたね。では、ピークトルクはどうです? 申し訳ありませんが、このZ H214.0kgmの底力を持っているんですよ。私の勝ちですね、ありがとうございます(笑)

冗談はさておき、その驚異的なエンジンにもかかわらず、Z H2はレーシングマシンではない。おとなしく走らせている限りフレンドリーな老犬のように落ち着いている。だが、スロットルを一発大きく開ければ、あなたの足に噛みついてくる獣と豹変する。バイクの世界の「ジキルとハイド」へようこそ──だ。

今日、多くのバイクメーカーがパワーアップを求めて大排気量化を図るなか、カワサキはスーパーチャージャーという方法を選択した。2015年にカワサキ初のスーパーチャージャー付きバイク「ニンジャH2」、および同車のクローズドコース専用版「ニンジャH2R」を送り出し、前者は200馬力、後者はなんと310馬力という圧倒的なパワーを見せつけた。

その後、カワサキはニンジャH2をベースにより落ち着いた特性としたスポーツツアラー「ニンジャH2 SX」も発売している。

Z H2
カワサキZ H2。フレームは同車専用で、ニンジャH2ともニンジャH2 SXとも異なる
Z H2
フレームまでブラックで統一される写真のカラーリングは海外仕様専用の車体色。欧州仕様にはこのほか、ブラック×レッド、ブラック×グリーンが設定されており、計3色のラインアップとなる(日本仕様はブラック×グリーンの1色のみ)

Z H2の加速力はハンドルから腕が引きちぎれそうなほど

Z H2のエンジンは、ニンジャH2 SXに搭載されている「バランス型スーパーチャージドエンジン」をベースにしているが、中~低回転から底なしのパワーとトルクを発揮する。その凄まじさを例えるなら、スロットルを半回転させるだけで腕の長さが2倍に伸びてしまいそうな程……とでも言おうか。

最高出力自体は200馬力で、カワサキの1000ccスーパースポーツ「ニンジャZX-10R」に4馬力届かないが、14.0kgmのピークトルクはニンジャH2 SXよりも1000回転低い8500rpmで炸裂し、恐ろしいほどの瞬発力を発揮する。

ただし、電子制御機構がリヤタイヤが適切にグリップするようコントロールしてくれるので、ライダーはシートに座ってバイクが腕を引きちぎってくれるのを待つだけでいい(笑)。

しかし、穏やかなライディングモードに切り替えれば、Z H2は怒り狂った虎から、怠惰な家猫に変身する。それに、スロットルレスポンス自体もイタリア人のウェイターが話す英語よりもスムーズだから(おっと失礼)、Z H2はショッピングに行くアシにだって使えてしまう。

デビュー直後のニンジャH2はスロットルがややキレ気味だったが、ニンジャH2 SX同様に、Z H2においてもそれが解消されているのだ。

Z H2 エンジン
最高出力200馬力、最大トルク14.0kgmを発揮するスーパーチャージドエンジン。欧州仕様と日本仕様でスペックに違いはない

200馬力に対応したZ H2の車体と電子制御

サスペンションはフルアジャスタブルのショーワ製43mmSFFビッグピストンフォークに同じくショーワ製のリヤショックという組み合わせだが、スーパーチャージャー付きの他の兄弟車異が片持ちスイングアームを採用するのに対し、Z H2は両持ちのスイングアームとなっている。フロントブレーキにはブレンボ製M4.32モノブロックキャリパーを採用し、前後タイヤはピレリ製のディアブロロッソ3が純正装着される。

カワサキはこのバイクがレース用のバイクではないことを強調しているが、実際、一般公道におけるハンドリングは安定しており、ライダーにとって予測可能な範囲内に収められている。車重がそれなりにあるので、軽量なスポーツネイキッドのように振り回すのは厳しいものの、悪くない。

かなりペースを上げていっても不満はほとんどなく、ディアブロロッソ3はヒザをするような場面でも素晴らしいグリップを発揮してくれた。サーキットを走るのであれば、サスペンションのセッティングを細かく調整したいが、そうでなければショールームに置いてあるときのままのセッティングでも大丈夫だろう。

この凄まじいエンジンを積んだネイキッドを成立させるには、電子制御によるコントロールは欠かせない。スポーツ、ロード、レイン、ライダーという4つのライディングモードがあり、エンジンの出力や特性、トラクションコントロールの介入度を変更できる。電子制御の作動は唐突感のあるものではなくスムーズである。

ちなみに、トラクションコントロールはオフにすることも可能だ。勇気があれば……の話だが。

Z H2にはローンチコントロール、クルーズコントロール、コーナリングABS、クイックシフターも装備されている。いずれも有用な機能だと思うが、唯一のネガティブな点はスイッチが複雑で、慣れるのに少し時間がかかるということだろうか。

とにかく楽しいバイクだ。
カワサキ ZZR1400やスズキ ハヤブサのようなこれまでのハイパワーバイクとは違って、ゆっくり合法的に走る気になれない(笑)。スーパーチャージャーに過給させ続けるため、クイックシフターを蹴り飛ばし、目玉が飛び出るような加速を味わいつづけたくなる──。

オーナーになるライダーへひとつ警告をしておきたいのは、2速でスロットルを全開にすると時速160キロは簡単に超えてしまうことだ。

ツイスティなサーキットでキレのある走りを楽しみたいのであれば、軽量でスポーティなネイキッドに分があるだろう。なんせZ H2は車重239kgというヘビー級ネイキッドだから。しかし半面、その車重は安定感と安心感ある走りにも繋がっている(強烈なパワーと車重に対応したサスペンションを有しているからの話だが)。

Z H2 フロントフォーク
フロントサスペンションにはショーワ製のSFFビッグピストンフォークを採用
Z H2 スイングアーム
リヤの「ニューユニトラックサスペンション」もショーワ製。スイングアームは両持ちタイプとなる
Z H2 メーター
ライディングモードや電子制御の作動レベルなど、多彩な情報を表示するフルカラー液晶メーター

Z H2はコストパフォーマンスも最強クラス!?

デザインは……醜いとは言わないが、万人受けするものではないだろう。SNSのコメントなどを見る限り、肯定的な意見は少ない印象だ。あなたはどう思うだろうか?

個人的には、非対称のフロントまわりのデザイン、特にヘッドライトの片側にある巨大なエアダクトが気に入っているし、トレリスフレームの造形もクールだと思うのだが。

車両価格はイギリスでは1万5149ポンド(約205万円)だ。金額としては大きいが、得られるものは金額以上に大きいかもしれない。なんせドゥカティの208馬力を発揮するネイキッド「ストリートファイターV4」は1万7595ポンド(約240万円)で、パワーはわずかに劣るものの、トルクはZ H2の方が10%ほど上回っているのだ。

ただし、この「スーパーチャージド・ゼット」のランニングコストには要注意だ。リヤタイヤはハードに走れば3000キロほどで終わってしまうだろう……。

Z H2 ヘッドライト
Zシリーズ共通のテーマ「SUGOMIデザイン」に基づき、個性的なデザインに仕上げられたフロントまわり
Z H2 ヘッドライト
ヘッドライト左側にはエアインテークが設けられ、左右非対称のデザインとなっている

カワサキ Z H2総評

このマシンの限界はエンジンではなく、ライダーの腕の強度になるだろう(笑)。電子制御機構も充実しているので、スーパーチャージャーを気兼ねなくブチ回すことができる。ランニングコストは高くつきそうだが、燃費のいいバイクが欲しいならスーパーカブを買おう。デザインさえお気に入りなら、公道最強の加速力を手に入れることができる。

カワサキ ZH2主要諸元(欧州仕様)

【エンジン・性能】種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ+スーパーチャージャー ボア×ストローク:76.0×55.0mm 圧縮比:11.2 総排気量:998cc 最高出力:147kW<200ps>/11000rpm 最大トルク:137Nm<14.0kgm>/8500rpm 燃料タンク容量:19L 変速機:6段リターン
【寸法・重量】全長:2085 全幅:810 全高:1130 ホイールベース:1455 シート高:830(各mm) 車両重量:239kg タイヤサイズ:F120/70ZR17 R190/55ZR17

Z H2
純正装着タイヤのピレリ ディアブロロッソ3はフルバンク時でも頼もしい性能を発揮する

試乗レポート●アダム・チャド・チャイルド 写真●サイモン・リー まとめ●上野茂岐

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