ADV150のターゲットは、30代〜40代のPCXユーザーだという
ホンダが想定するADV150のターゲットユーザーは、PCXに乗っている遊び心を持った30代~40代で、次に何に乗るかを考えている人だという。
現在37歳で、125ccのPCX(eSPエンジン搭載の初代後期型)に乗っている筆者。「そろそろ乗り換えようかなぁ」なんて考えが昨今頭に浮かんでおり、まさにそのターゲットユーザーにドンピシャである。……遊び心があるかどうかは置いといて。
ただし、PCXは従来型から新型への乗り換えも少なくないという。それは凄くわかる。
使い勝手に快適性、燃費を含めた走りのよさ。PCXは初代から万能性の高いモデルだが、モデルチェンジのたびにそれを上回ってくる驚異のスクーターである。
PCXに乗っている限り不満は無く(街乗りはもちろん、ツーリングまで楽しめてしまうのだ)、気になるライバル・買い替え候補と言えば新型PCXしかないという状況になるのだ。
実際、現行型(3代目)PCXの開発陣にインタビューを行ったとき「新型を開発するにあたり、ライバルはそれまでのPCXだった」とおっしゃっていたのを思い出す。
そして自分もPCXから乗り換えるなら、最新のPCXだろうと思うひとりだった。

ウチの子です。初代PCXの「eSP」エンジン搭載車。トップケースを装着している以外、ほぼノーマルです。ちょっとヤレてきたかな
正直ほぼ不満のない自分のPCXだが、乗り換えが頭に浮かぶ理由は2つある。
ひとつは燃料タンクの容量だ。初代PCXは5.9Lで、どんな走り方をしても燃費は45km/Lを下回らないから(ホント、優秀なんですよ)、航続距離は200km程度ある。極端に短いわけではないが、現行型の8Lタンクがうらやましいのだ。
ふたつめは、しょうもない話だが、オーナーとしての「劣等感」である。人気の高いPCXだけに、街中で同車を見ない日はないと言っても過言ではない。2代目、3代目(現行型)も十分浸透しており、スポーツバイクのようなヘッドライトデザインのそれらに比べると、初代はさすがに初代は古く感じてしまうのである。
(信号待ちで隣に2代目、3代目に並ばれたりするとちょっとね……)

燃料タンクは増えているし、収納スペースも大きくなっているし、完成の域に達している気がする現行型PCX。初代に比べると、その分お値段ちょっと上がってますが
他方、人間わがままなもので、これだけPCXが走っていると「PCXカブり」をするのもなぁ……と思い始めるのだ。困ったことに。「PCXの性能や使い勝手はそのままキープで、もっと派手なデザインのモデルがあったらいいのに」なんて考えていたところ、そしたらPCX150をベースとした個性派デザインのADV150が現れたのではないか。
オイオイ、オレの妄想が形になっちゃったよ!
PCXシリーズとの比較をふまえて、ADV150に乗ってみる
自分が所有している初代PCX以外に、モーターサイクリスト誌の試乗取材で2代目、現行型(3代目)PCXに乗った経験があるが、人気モデルであるPCXだけに現行型については試乗車を用意している販売店も少なくない。
ADV150が発売となれば、読者の皆さんもお店でPCX vs ADVの比較試乗することもできるはずだ。というわけで初代オーナー&1ユーザー目線でADV150の試乗レポートを2月14日の発売に先駆けて書いてみたい。
まずADV150に乗って驚いたのは剛性感の高さとハード目な足まわりである。
「アドベンチャーモデルの要素を取り入れた」とされるADV150はサスペンションストロークもPCX 150より長くなっているということで、オフロードバイクのように柔軟な足まわりを乗る前はイメージしていたのだが……。
PCXシリーズがバイクで言えばクルーザー的なゆったりした乗り味なのに対し、ADV150はもうスポーツバイクである。アドベンチャーというより、感覚的にはストリートファイター系のネイキッドが近いような。
「PCXの外装チェンジ的なモデルでしょ?」という見方をする人も少なくないようだけど、コレはもはや別の乗り物である。
そんなガッシリしたサスペンションと、バイクに近いアップライトなライディングポジションのおかげで、コーナリングもPCX以上のペースでスポーティに走ることができる。
ADV150の開発リーダー箕輪和也さんは、クルマでいうなら「PCXシリーズがサルーン、ADV150は最新のSUV」と表現していたけれど、乗り比べれば多くの人がその言葉に納得すると思う。
PCX 150とはエンジンフィーリングもキャラが違う
ADV150はPCX 150に比べ、エンジンは中低速寄りのセッティングになっている。実際、スロットルの開け始めからツキはよくて、瞬発的なダッシュ力はPCX 150より勢いがある印象だ。
逆に高速域ではPCX 150よりやや鈍るということだけれど、高速道路に乗ってみても走行車線を余裕で走れるし、80km/hくらいで走っているクルマをパスするような状況では、スロットルをパカッっと大きめに開けるだけで無理せず追い越し車線の流れに乗れる。
「トゥルルルル~」っと滑らかで控えめなエンジンサウンドのPCXに対し、アップマフラーを採用するADV150は音を強く感じることもあるのか「ブォーン、ブォーンッ」と勇ましく、このあたりも「キャラの違い」を感じる部分だ。
テストコースで試してみたところ、最高速はメーター読み118km/hで打ち止めになった(エンジンがレブカウンターに当たり、それ以上回転が上がらなくなる感じだった)。100km/h以上はジワジワとした加速になるが、高速道路を交えたツーリングは十分こなせるだけの動力性能を持っていると思うし、PCX 150に比べ高速性能で「見劣り」はしないと思う。
と、ADV150はかなりPCXと別物感がある乗り物だったことと、対応できる走りのシチュエーションはほぼ互角ということがわかったところで、PCX大好きライダーがどう感じたかというと……「PCXと違う」という点に拒絶反応はなく、むしろ「楽しいなぁ」だった。
ADV150はウチの奥様(小柄な人)でも抵抗はないか?
走りのキャラは全然違う感覚だったけど、実用面ではADV150と現行型PCXはほぼ変わらない。
装備に関しては、燃料タンク容量、フルフェイスヘルメット1個+αが入る十分なシート下収納、電源付きグローブボックスと全く犠牲になっているところはないのだ(嬉しい限りだね!)。
ただし、サスペンションの延長にともないシート高はPCX:764 mm→ADV150:795mmと約30mm上がっている。身長170cmの私は両足のつま先が接地するが、小柄な人ではちょっと辛いのではないかというのが気になった。

座面の位置は明らかにPCXより高く感じるADV150。身長170cm、体重58kgの体格で、両足ではつま先だけが接地する感じだ

アドベンチャーバイクのようなワイドなハンドルで、上半身が立ったライディングポジションになる。スクーターというよりバイクに近い

写真は125ccモデルだが、現行型PCXの足着き。カカトは浮くが、つま先から1/3くらいは接地している感じだ

ライダー前方への空間的ゆとりが大きくリラックスしたライディングポジションになる現行型PCX(こちらも125ccモデル)。向きがADV150と反対ですみません……
というのも、身長155cmのウチの奥様も時々だがPCXに乗るのである。そこでADV150にまたがってみてもらったら、やはり、両足は届かず、片足しか着かなかった。しかし、アラ意外「なんかウチのよりシートは高い気がするけど、PCXも両足届かないしそんなに違和感はないかな。別に怖くもないし」と。
ちょっと運転してもらったところ「PCXより乗りやすい。なんかしっかり走ってるって感じがある」だそうで、結論としては「カッコいいし、いいね! コレもいいけど、ハンターカブCT125も気になるよね」。CT125についてはまた今度話そう。
結論としてはPCX→ADV150への乗り換えは「大アリ」
ただ、ADV150を買うとすると「禁断の悩み」が……

試乗車のブラウンも上品な雰囲気で捨てがたいものの、買うならアフリカツインなどホンダオフロード系モデル定番カラーのレッドかなぁ
750ccのバイク(普通のマニュアルミッション車)とPCXの2台を所有している筆者だが、PCXはセカンドバイク的な使い方だ。街乗りメインで、クルマを出すほどではないなぁ、みたいなお買い物などに重宝している。で、ときどきツーリングに使ったりもするし、タンデム走行もする。
そういった使い方はADV150でまったく問題なくこなせるだろう。それどころか、ADV150にすれば高速道路にも乗れるし(この点はPCX 150も同じだけど)、ワインディングをスポーティに走ることもできる。
デザインは人によって好みが分かれるポイントだが、アクが強いというか、迫力あるADV150の見た目は個人的に好きだ。
(マッチョな雰囲気で、釣り眼の精悍な2灯式ヘッドライトはどこかZZガンダムをイメージしてしまう)。
現行型PCXだけでなくスポーツバイクが信号待ちで隣に並んだとしても、「オレのバイクカッコいいでしょ、でしょ」と逆に自慢したくなるデザインである。
つまり高速道路で“キング・オブ・ハイウェイ”を目指そうなどと思わない限り、無敵のバイクなのである。
PCXはその穏やかな乗り心地からセカンドバイクとしてのキャラ分けができるものの、ADV150を買ったらあまりの無敵ぶりに、750ccのバイクにほぼ乗らなくなりそうで怖いのである。
「せっかく大型二輪免許までとったのに、それでいいのだろうか」などと自尊心と戦いつつブツブツ言っていたら、「750とPCXを売って、ADV150の1台にするっていうのは? 維持費も1台で済むしいいよね!」と奥様が。お~とッ、そう来ましたか!?
ホンダADV150諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4ストロークOHC単気筒 ボア・ストローク:57.3mm×57.9mm 総排気量:149cc 最高出力:11kW<15PS>/8500rpm 最大トルク:14Nm<1.4kgm>/6500rpm 変速機:無段変速式
[寸法・重量]
全長:1960 全幅:760 全高:1150 ホイールベース:1325 シート高:795(各mm) タイヤサイズ:F110/80-14 R130/70-13 車両重量:134kg 燃料タンク容量:8L
[価格・発売日]
価格:45万1000円 発売日:2020年2月14日
レポート●モーサイ編集部・上野 写真●柴田直行(ADV150)/雪岡直樹(PCX)/モーサイ編集部・上野