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貴重な400ccデュアルパーパス、スーパーモトモデルの復活

2008年以降、空席となっていた国産の400ccデュアルパーパスモデルのカテゴリー。DR-Z400Sとその派生型のスーパーモトモデルDR-Z400SMの退場がその原因だが、スズキは後継モデルのDR-Z4SとDR-Z4SMの登場で、このカテゴリークラスを復活。待望していた一部ユーザーに歓迎され、注目を集めている。
国内モデルでは、従来軽二輪クラス(230~250cc)のデュアルパーパスモデルは存在するが、スズキがDR-Zを復活させたのは、ダートでも一般道でもモアパワーを求めるニーズがあると踏んだからだろう。実際に先代のDR-Z400シリーズは、北米・オセアニア市場で根強いニーズがあり、環境規制の違いから日本での販売中止後も長く延命されたようだ。
そうしたニーズも後押しし、新たな環境規制対応をしたのを機に日本でも復活となったのだが、改めて、400ccのデュアルパーパスのメリットがあるのかを、市街地、高速、一般道、ダート走行を通して全方位的に試してみたい。


■2000年に登場し、国内では2008年モデルまで販売されたDR-Z400Sを継承してこのほど登場したDR-Z4S。エンジン各部と車体の刷新、最新の電子制御技術の採用で、環境性能と400シングルとしての高い性能の維持を両立させたモデル。スーパーモトモデルのDR-Z4SMも同時発売された。LED採用のヘッドライトまわりが、最新DR-Zシリーズのアイコン的デザイン。

走破性向上=車高アップとなる、相応に大きな車体は手なづけられるか?
軽二輪よりモアパワーとなる400ccのデュアルパーパス車は、その性能に対応して車体は大きく、剛性も高いものになる。必然的に前後のサスストロークも長くされ、車格も当然250ccクラスより大きくなる。新たなDR-Z4Sのサスストロークは前:280/後:296mmで(軽二輪のCRF250<s>で前後:260mm、KLX230は前:220/後:223mm)、相応に車体(シート高)は高くなる。
身長173cm体重76kgの筆者だと、両足接地ではつま先が地面に着き、足先には力の入るレベルのぎりぎり許容範囲。ただし、片足は無難に着ける(わずかに尻をずらせば足裏半分は着く)ので不安はない。しかし、フットブレーキを使って左足を着く(正しい停車の仕方だ)動作が億劫で、減速を完了した後で右足を出す場合が多くなる(着地の足を入れ替えずシフト側の足操作をそのまま行いたいからだ)。DR-Z4Sのシート高はそういう高さだが、慣れればさほどの不満ではなくなる。
ストロークが短く、節度も良好な変速ペダルは操作しやすく、軽いクラッチも手伝って発進に戸惑うことはない。しかし、パワーモードが走り始めでA(アクティブ:一番パワーの出方が鋭い特性)だったため、無意識にスロットルを開けると簡単にウイリーしかけた。それくらいAモードは回転上昇が鋭く力強くてびっくりするので、改めて中間のB(ベーシック:通常のパワー特性)に戻して走り出した。

■身長173cm/体重76kgでのDR-Z4Sの乗車姿勢。カタログでのシート高は890mm(標準はローシート装着)。片足接地では足裏半分が着くから、車体保持には問題ないものの、両足を下ろした場合は、力の入る程度のつま先接地となる。
ATスクーターも置き去り可能、機敏なスタートとレスポンスが光る市街地走行
ショートストローク型の400cc単気筒は、トルクがあり回転上昇も速い。その力強さはBモードでも十分味わえ、ストレスがなくスムーズ。逆にBに対してAは鋭すぎるとさえ感じるほど。そんなわけで一般道をBモードで流すが、40~65km/hのレベルならば4速、それ以上の速度ならばトップ5速が守備範囲という印象。
4~5速を駆使する一般道では、普通にスロットルをひねれば常に加速でリードでき、発進では軽二輪や原付二種のスクーターに出足で負けるようなこともない。まさに400ccの機敏なショートストローク型シングルの面目躍如だし、シート高に慣れさえすれば、高いアイポイントから軽い車体をキビキビ操りつつ走れて爽快だ。フレキシブルに効く前後ブレーキも相まって、下道でのDR-Zは優越感を覚える走りを堪能できるだろう。

■基本は先代のDRZ-400系を踏襲した水冷398cc単気筒だが、吸気側=チタンバルブ、排気側=ナトリウム封入中空バルブとデュアルスパークプラグの採用のほか、カムプロフィール、ピストン、クランクケース、インジェクターなど多岐にわたり変更。ライドバイワイヤ電子制御スロットルを介したS.I.R.S.(スズキドライブモードセレクター)での3つのドライブモード選択、2モード(+オフ)とG(グラベル)モードを設定したトラクションコントロールなど最新の機構も装備。

追い越し加速の優位性を実感する高速、ワインディングでもキレの良い走りを堪能
高速道路も、400ccシングルの優位性を感じるステージだ。回転計がないので低・中・高回転の境はあいまいだが、メーター読み100km/hなら十分に回転の余裕が感じられる。120km/hでもそれは同様で、おそらく水冷単気筒エンジンは難なく130km/hを回り込み、140km/hも超えていきそう。軽二輪のデュアルパーパスモデルと比較して明らかに動力の余裕もある。
また、そうした高速域になっても気になる振動はなく、直進安定性は十分。しかし、120km/hレベルの速度で連続走行する気にはならない。そのアップライトなライポジで受ける風圧のせいだ。その辺は、こうしたカテゴリーモデルの性格上、仕方ない部分だろう。
高速から下道へ降りる。オンオフモデルとは言え、舗装路のワインディングでも気を使わず車体を傾けられ、ヒラヒラと軽快に切り返せるのはDR-Z4Sの長所だ。オンロードモデルに慣れているライダーにとっては、オンオフタイヤのグリップを心もとなくと感じる場面はあるかもしれないが、普段からオフ車(セロー225WEに標準的なトレールタイヤを装着)を使う筆者から見ると、DR-Z4Sの標準タイヤIRC製のGP410はオンロードでもグリップは良好で、なおかつロードノイズが少なく、舗装路でかなり攻められるタイヤという印象だった。
かくしてワインディングでもDR-Z4Sは良好なスプリンターぶりを発揮するものの、個人的には4~5速のレシオが意外と開いていると感じないでもない。これを6速化して、4~6速間を均等なギヤ比で刻んだら、ワインディングでのつながりのよさでも、また高速でのトップスピードの面でも、今以上のメリットを感じられるのではないか。

都会から田舎のダートへのワープ。欲しいのはあと少しのタンク増量

一般道、高速、ワインディングを味わい、ひとっ走りして山中に入ったところで、時々ガソリンマークが点滅するようになった。満タンスタート後の距離は190km。同車の取説をダウンロードしてスマホで確認すると(こういうのも時代の恩恵だ)これが最初の燃料警告で、この時点でのガソリン残量は約2.1L。ちなみに平均燃費の表示は32.9km/Lとなっている。乗り手によって差はあるだろうが、そんなにエコランを心がけなくともこの数値だから、DR-Z4Sはこのクラスの単気筒としてはけっこう好燃費。こうした燃焼効率の向上も、新型DR-Zで進化した点かもしれない。
山中で点滅しても、あと60km程度は走る計算であり、日本の田舎でも給油で困る場面はそうそうないだろう。首都圏から郊外のダートに出かける場合、DR-Zはさほど不満のない航続距離を確保しているが、あと1~2L燃料が多いほうが気楽(タンク容量10Lが希望)。そして、その分重量が上乗せになっても、DR-Z4Sの車体挙動に大きな影響はないのではと感じた。

河川を横目に見て、沿うように走るフラットダートも試した。足着きに不安があるとは言え、ガレ場のつづら折りでもない限りDR-Z4Sはそつなく小砂利の浮く路面を通過する。ややオン寄りの標準タイヤとは言え、路面のグリップも問題なく(あくまでダートでの話)、30~60km/hの速度レンジならそつなく流せる。
ここでは舗装路より介入度が低くオフロード向けのトラクションコントロールのG(グラベル)とABSのリヤオフ設定を試すが、意識的にスロットルを開けて横滑りが発生しても、後輪は10~20cm程度スライドしつつ車体を進ませる。ダートに慣れたライダーなら違和感なく、車体が適度に暴れながら破綻しないいい塩梅の挙動と感じるはず。乗り手優位に車体を操る自信があれば、トラコンをオフにすることも可能だが、標準タイヤでのGモードはなかなかにバランスよい挙動を味わわせてくれると実感した。

筆者自身は普段からオフ車を愛用しており、車体が股下で適度に暴れつつ流すような走りは大好きだが、日本の公道でダートを楽しむなら、個人的には軽二輪クラスのパワーで十分だと考えていた。それ以上だとパワーが活かす場面が限られると思っていたからだが、DR-Z4Sはそんな神経質さもなく、低速からフレキシブル。この状況ではAモードは必要なく、標準のB、もしくは雨の日も使いやすいC(=コンフォート)で十分。DR-Zが決してハードルが高くなく、そつなく使えるのは、そうしたモード選択が効いているのだろう。
ハイパワーを十分実感させながら、そこを使わなくてもいい電子制御技術での万能性。これが現在における進化だし、DR-Z4Sの真価とも言えるだろう。
DR-Z4S/DR-Z4SM主要諸元
※< >はDR-Z4SM
■エンジン 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク90×62.6mm 排気量398cc 圧縮比11.1 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力28kW(38ps)/8000rpm 最大トルク37Nm(3.8kgm)/6500rpm 燃費27.7<28.8>km/L(WMTCモード値)
■変速機 5段リターン 変速比1速2.285 2速1.733 3速1.375 4速1.090 5速0.863 一次減速比2.960 二次減速比2.866<2.733>
■寸法・重量 全長2270<2195> 全幅885 全高1230<1190> 軸距1465 シート高890(各mm) キャスター26°30′ トレール95mm タイヤF80/100-21 M/C 51P<120/70R17 M/C 58H> R120/80-18 62P<140/70R17 M/C 66H> 車両重量151<154>kg
■容量 燃料タンク8.7L エンジンオイル1.9L
■車体色 チャンピオンイエローNo.2/ソリッドスペシャルホワイトNo.2、ソリッドアイアングレー<スカイグレー、ソリッドスペシャルホワイトNo.2>
■価格 119万9000円
レポート●モーサイ編集部・阪本一史 写真●モーサイ編集部、スズキ
スズキ
TEL0120-402-253(お客様相談室)
https://www1.suzuki.co.jp/motor/





































