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シャシーとエンジンを共用する、ロードスターとボバースタイルクルーザー

2024年に登場したR12nineTとR12は、同じBMW製ヘリテージファミリーのモデルながら、趣を異にする2台だ。R12nineTは、車名のとおりネオレトロ系ロードスターRnineT(2014年登場)の後継モデルで、RnineTの雰囲気を継承しつつ進化させたモデル。素性からしてわかりやすいし、生産終了となったRnineTに興味を持っていたライダーは心を惹かれるだろう。
一方のR12は、意外とオーソドックスなボバーテイストのクルーザーという印象だが、既存のヘリテージ系クルーザーR18(2020年登場)の弟分と言える立ち位置でもある。だが雰囲気はけっこう異なる。長い車体にプルバックハンドルをセットして雄大に流すビッグクルーザーのR18に対して、R12はずっと軽量級だしフラットな形状のハンドルで、スポーティな走りを期待できそうな車体構成だ。
そんなシャシーとエンジンの基本を共用するR12シリーズの2台は、どう違うのか。試乗から明らかにしていこう。
車体の進化と乗車姿勢の適正化が光るR 12nineT


想像どおりR12nineTはわかりやすいモデルだった。簡潔に言えば、以下の2点が正常進化したからだ。
■ライディングポジションの適正化
2014年に初代のRnineTに試乗したとき、言葉は悪いがBMWの出す新型車にしては、乗車姿勢のしっくり感というか、完成度が足りないと思った。フラット気味のバーハンドルは、低く遠めで幅が広め。そしてグリップの絞り角が少なくて手首の角度が決まらず、若干操作しにくい。一方、タンクや車体まわりは意外にスリムで、ホールド感が今ひとつだった記憶がある。
これがR12nineTでは、相当改善され違和感はまったくなくなっていた。フレームがワンピース構造のタイプに改良され(チューブラーブリッジスチールスペースフレームと呼称される)、そこに載るタンクの長さが30mmほど詰められて着座位置が前になった。同時にタンクのホールド感も適正化され、バーハンドルは適度な幅と高さになり、ライダーに近くなった。絞り角も適正で操作に違和感がない。
RnineTのオーナーの中には、同様の印象を持って、個人レベルでライポジを自分にフィットするように変更した方はいるだろうが、R12nineTはライポジが最初から正しく感じる。
■前後サスペンションの動きがよくなった
RnineTは登場当初からサスの動きがゴツゴツしていてしなやかさが足りない、硬いと言われてきた。しかし、46mmインナーチューブ径の倒立フォークは調整機構がなく、設定変更ができなかった(2017年モデルからフル調整可能なフォークに変更)。リヤはプリロードと伸び側減衰調整を持っていたが、既存のRnineTオーナーはもっとしなやかな方向に設定をいじりたかったはずだ。
かくしてR12nineTのフロントフォークは45mmインナーチューブ径のフルアジャスタブルタイプとなり、リヤはプリロードと伸び側減衰調整が可能なのは従来と同様ながら、取付けレイアウトを大幅に見直した(車体側とスイングアームに大きく寝かせてセット)。各オーナーが好みの乗り味を設定しやすくなったし、標準設定でもしなやかさを増している。
ヘリテージロードスターとして、人気を獲得した先代の雰囲気はキープしつつ、上記の部分を改善したことが、まずR12nineTの大きな特徴で、正しい進化を感じさせた。
そして空油冷のボクサーツインは、EURO5+の排ガス規制をクリアしながら、ほぼ先代と同様の性能をキープしている。最高出力・最大トルクは、RnineTの80kW(109ps)/7250rpm・116Nm(11.8kgm)/6000rpmに対して、R12nineTは80kw(109ps)/7000rpm・115Nm(11.7kgm)/6500rpmとなっている。
元々空油冷ボクサーツインならではのフレキシブルさと、腰を落ち着けた感じで突き進める特性はそのまま健在。トップ6速80km/h≒2750rpm、100km/h≒3500rpm、120km/h≒4250rpmと増速していくマナーも大きく変わっていない。エンジンクランク後部に大径乾式単板クラッチと別体のミッションケースが一直線に並ぶ伝統的な構造の、回すほどに直進性が増すような味わいは個人的にも好みで、水冷ボクサーが主流になったとしても、この空油冷が長く生き残ってほしいと思うところでもある。
そうしたわけでR12nineTは先代から正常進化しており、RnineTオーナーにしてみれば恨めしい部分かもしれない。ただし、ユーザーレベルでRnineTをいじって自分流にしていくプロセスは、バイクとの付き合いとして無意味ではなかったはずだ。



■左グリップには現行BMWでは定番装備のコントロールリングほか各種スイッチが並ぶ。なお、車体の電源はスマートキー方式のため右グリップ側のボタン操作でオンオフ可能だが、給油口の解除、ハンドルロックにはスマートキーに付属の物理キーを使用する。






安定性とスポーツ性を程よくブレンドし、軽快にも走れるクルーザーR 12



■BMW初のクルーザーだった1997年登場のR1200C。大柄なプルバックハンドルや、引き起こして背もたれになるリヤシートを採用し、各部の造形も含めて強いアピールを感じたモデル。前テレレバー、後パラレバーも採用する意欲作だったが、カテゴリーをリードするほどにはならず2004年に生産終了。同車のキャラクターを現行モデルに照らせばR18寄りのものだったが、新たなR12はこの元祖クルーザーから大きく性格の異なるモデルと感じる。
一方で、新たなカテゴリーに切り込んだクルーザーのR12はどうか? 実車を前にして感じるのは、威圧感のないボリュームで取っ付きやすい印象ということ。またがってもシート高はR12nineTより若干低く、両足カカトまでべったり接地。ハンドルも適度に高い位置で、上体はアップライト。しかし、わずかに遠く感じるのは、着座位置が意外と後ろのくぼんだ場所に限定されるからか。
走り出しても、空油冷フラットツインはフレキシブルで、2500rpm以上の実用的な回転域を使って走れば、滑らかに流せる。前19インチ、後16インチのハンドリングも素直で、クルーザーというよりはスタンダードスポーツのそれ。共通性を感じるのは、ハーレーのスポーツ系(スポーツスターSやナイトスタースペシャル)というよりは、トライアンフのスピードツイン(1200/900)で、その気になれば自然にスポーツライドができるキャラクターだと感じる。
それというのも、前後輪のホイール径がクルーザーサイズであっても、タイヤの回転感にはゴロゴロした感触はなく、軽快で素直。加えて、R12nineTと基本骨格が同じでベースエンジンも共用するR12は、切り返しを含めたコーナリング性能など、オーソドックスなスタンダードスポーツの素性を感じる。そのためか、知らず内にR12nineTと同じようなペースで走ろうとしてしまうのだが、そうなると分が悪い。
バンク角は、クルーザー系としては深いものの中速コーナーを少し元気なペースで流せばステップは簡単に接地。加えて、元々硬めと感じる前後サスは、凹凸通過などで衝撃を吸収し切れずに車体を震わせる。もう少し挙動を抑え込みたいと思ってもフロントには調整機構はなく、リヤでプリロードと伸び側減衰調整は可能なものの、前後とも90mmという短かめのストローク(R12nineTは前後とも120mm)で衝撃に対するの許容量は高くない。
やはりR12はクルーザーなのだ。R12を筆者の好みに変更していくと、シートはもっとフラットにしたくなるし、リヤの車高をもう少し上げたいし、サスペンションもストロークの余裕がほしいし……という具合になって、行く着く先はおそらくR12nineTと変わらぬものになってしまうだろう。
つまり、R12に乗るということは、もっと鷹揚に構え、ナチュラルな素性を味わいながらゆったりクルージングすることなのだ。そういう意味で、R12はR12nineTと違う雰囲気重視のクルージングの世界を味わわせてくれる。そして、BMWのスポーツバイクという色眼鏡で見ると旗色はよくなくとも、クルーザーカテゴリーの尺度で測るならば、R12は相当に素直で運動性能も高いクルーザーという評価を受けられるだろう。
R12の市場での評価はまだ定まっていないが、「BMWかくあるべき」などとこだわる層ではなく、気軽に乗れるけれど外観に独特のこだわりを感じるマシンに乗ってみたいという新規顧客層をターゲットにできる持ち駒として、R12は賢明なトライを感じさせる1台と言えるのだろう。

■最高速度はR12nineTの215km/hに対して203km/hを公称するが、大きくデチューンされた印象は感じない。パワーモードは通常特性のROLL(ロール)と加減速が刺激的なROCK(ロック)モードを切り替え選択できる。


■試乗車の仕様はR12ツーリングで、マルチコントローラーを装備するが、スタンダード仕様は非装備。メーター手前にある台座は、R12nineTとR12ツーリングに標準装備となるスマートフォンホルダーで、BMW独自のコネクテッドライド機能を使用可能





R 12nineT主要諸元
■エンジン 空油冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク101✕73mm 排気量1169cc 圧縮比12.0 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力80kW(109ps)/7000rpm 最大トルク115Nm(11.7kgm)/6500rpm 燃費19.6km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.375 2速1.696 3速1.296 4速1.065 5速0.939 6速0.848 一次減速比1.737 二次減速比2.909
■寸法・重量 全長2140 全幅870 全高1070 軸距1520 シート高795(各mm) キャスター27.7° トレール110.7mm タイヤF120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量222kg
■容量 燃料タンク16L エンジンオイル3.9L
■車体色 ブラックストーム・メタリック、サン・レモ・グリーン・メタリック、アルミニウム
■価格 254万3000万円~

R 12主要諸元
■エンジン 空油冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク101✕73mm 排気量1169cc 圧縮比12.0 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力70kW(95ps)/6500rpm 最大トルク110Nm(11.2kgm)/6000rpm 燃費19.6km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.375 2速1.696 3速1.296 4速1.065 5速0.939 6速0.848 一次減速比1.737 二次減速比2.909
■寸法・重量 全長2210 全幅830 全高1110 軸距1520 シート高754(各mm) キャスター29.3° トレール132.5mm タイヤF100/90-19 R150/80-16 車両重量230kg
■容量 燃料タンク14L エンジンオイル3.9L
■車体色 ブラックストーム・メタリック、アベンチュリン・レッド・メタリック、アブス・シルバー・メタリック(※ツーリング仕様にのみ設定)
■価格 199万9000万円~(標準仕様)、226万8000円~(ツーリング仕様)

ヤエスメディアムックから「BMW R 12&R12 nineTシリーズパーフェクトガイド」が6月10日(火)発売

なお、BMWのR12シリーズをメインにした専門本(ムック)が、八重洲出版のヤエスメディアムックから、間もなく発売される。本稿で紹介した2台のほか、同車にフィットするカスタム&アクセサリーパーツの紹介、登場間近のR12G/Sも詳しくクローズアップ。そのほか、1923年のR32から始まる伝統のボクサーツインの歴史、歴代モデルの変遷なども大ボリュームで紹介。A4オールカラーの116ページで価格は2750円。6月10日(火)発売。
文●モーサイ編集部・阪本一史 写真●富樫秀明
BMWモトラッド
TEL:0120-269-437(カスタマー・インタラクション・センター)
https://www.bmw-motorrad.jp





































