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2024年のドゥカティは、MotoGPとスーパーバイク世界選手権というロードレースの最高峰で止まらない快進撃を続けている。その活躍を裏づけるかのように、ドゥカティは市販スーパースポーツ、2025年型パニガーレV4Sの試乗会を行った。舞台はイタリア・ローマ近郊にあるレーストラック、ヴァレルンガだ。
イギリスのモーターサイクルジャーナリストで、マン島TT参戦経験もあるレーシングライダーのアダム・チャイルド氏がそこに参加。ドゥカティ・コルセのテクニシャンが待機するなか、スリックタイヤ装着車両を含めた最新パニガーレV4Sの実力を感じてきた。
2025年型ドゥカティ パニガーレV4Sの進化ポイント
スーパーバイクがこれ以上速く、しかも賢く、驚くほど進化することはないと思うほど、昨今のドゥカティの完成度は高い。しかしドゥカティはそんな私の想像を簡単に飛び越えて新しいパニガーレを開発した。彼らは新しいパニガーレV4を「真のエンジニアリングの驚異」と表現しているが、ライバルの他メーカーたちもこれを安易に否定できないにちがいない。
1990年代には916がスポーツバイク愛好家の憧れだったが、それから現在に至るまで、ドゥカティは常にその地位をゆるぎないものにしてきた。世界中で行われてきたスーパースポーツの比較試乗テストで、最も速くて乗りやすいバイクの頂点と評されたことは数えきれない。
その功績に対して、ドゥカティのエンジニアたちは休暇を望んでもいいはずだが、彼らは前進し続けた。そして、ロードゴーイング・スーパーバイクのゲームチェンジャーとして216psもの強烈なパワーを生み出すニューモデルを発表したのである。大幅なアップデートを遂げたパニガーレV4Sは、より軽くいっそうパワフルで、これまで以上に先進的なテクノロジーが凝縮されている。
まず注目したいのは、両持ち式スイングアームを採用したことだ。片持ち式スイングアームは、ドゥカティ・スーパーバイクの象徴であったし、多くのファンに支持されてきた。だが、ますます高まるエンジン出力とそれに見合うグリップを得るために、MotoGPマシンGP24のデザインを踏襲したこの構造が必要になったというわけだ。エレガントなこのスイングアームによって、リヤエンド構造の重量は片持ち式と比べて2.7kg軽くなっており、横方向の剛性を37%落とし、新設計となったフロントフレームも横方向の剛性を40%低減させているという。
サスペンションには、オーリンズの最新電子制御式スマートEC3.0を採用し、フロントフォークはNPX25/30、リヤにはTTX36を装着している(スタンダードのV4はショーワ製BPFフォークとザックス製リヤショックの組み合わせで、従来型と同様にステアリングダンパーが装着される)。
ブレーキシステムは、新登場のブレンボ製ハイピュア(Hypure)キャリパーを採用。
逆回転クランクを採用する1103cc「デスモセディチ・ストラダーレV4」は、従来のエンジンにパワー不足を感じることはなかったものの、新しい話題を好む人を意識したのか少々パワーアップされた。
エアロダイナミクスを強化したスタイリングとディテールは、916を思わせるシルエットを獲得した。ライディングポジションも見直され、フットペグの改良とともにシートは長く、幅広になった。
恐るべき電子制御「自動でMotoGPライダーのようなブレーキングができる!?」
次に注目したいのは電子制御デバイス、とくに『ドゥカティ・ビークル・オブザーバー』(DVO)だ。これはドゥカティ・コルセのMotoGPエンジニアが開発したアルゴリズムを用い、トラクションコントロールとウィリーコントロールの介入レベルを正確に予測して最適化する技術だ。
また、市販車初採用となる『レースeCBS』(フロントブレーキに応じてリヤブレーキを自動で作動させる技術)を組み合わせた傾斜感知ブレーキシステムも導入しており、一般ライダーでもMotoGPライダーのようなブレーキングをすることができる。
ドゥカティがパニガーレV4Sに定めた目標は、ラップタイムの改善、ライディングの負担軽減、そしてライダーのスキルを効果的に向上させることだ。新設計のシャシーと電子制御デバイスを世界初公開するメディア試乗会は、イタリア・ローマ近郊にあるヴァレルンガサーキットで行われ、ドゥカティはこの場にMotoGPのテクニシャンを揃えた。
なぜなら、新型パニガーレの進化は電子制御デバイスが占める割合が多く、開発に携わった専門家が不可欠だったからだ。彼らは『ドゥカティ・データロガー』(DDL)を使ってラップタイムと区間タイムのデータをチェックし(データ分析オプションは近日中に登場予定)、ほぼ無数といっていい電子制御デバイスの設定値をセッションごとに変更し、タイムアップに貢献してくれた。
ドゥカティ・スーパーバイクのメディア試乗会はいつも特別なものだが、今回も例外ではなかった。ライダーごとにテクニシャンがつき(私の場合は一流のテクニシャン、フランチェスコ・ベルガミーニ)、周回ごとにラップタイムが上がることを期待しながら、この一日だけはまるでスーパーバイク世界選手権のファクトリーライダーになった気分を味わうことができた。
そうした完璧な体制のなかで、ピレリ製スリックタイヤを装着したパニガーレV4Sで6本のロングセッションが行われた。
新型パニガーレV4Sは「誰が乗ってもラップタイムを短縮できる!?」
新型パニガーレV4Sの試乗インプレッションの前に、少し時間を遡る。2022年、ドゥカティは当時の新型パニガーレV4Sのメディア試乗会を今回と同じヴァレルンガサーキットで行い、私も参加していた。その試乗会で従来モデルとなる2021年型との比較試乗も行われ、ピレリ製スリックタイヤを装着した2022年型のスタンダードモデルでのベストラップは1分49秒442で、従来型よりも0.7秒速かった。これが2025年型パニガーレV4Sでどのくらい速くなったかは、後ほどお伝えしよう。
このほかに、ドゥカティは事前にテストを行っている。ライディングスキルの異なる8人のライダーによるプライベートテストで、従来モデル(2022年型)と最新2025年型の比較試乗だ。この結果は、新型のほうが平均して0.94秒速かったという。こうしたテストデータをメーカーが公表するのは新鮮で、この新型パニガーレV4Sで私のラップタイムがどれだけ短縮されるのかに興味がわいたし、期待もした。なぜならメーカー主催の試乗会では、ラップタイムという客観的データで直接比較できる機会はないからだ。
時代がどれだけ変わっても、ドゥカティのスーパーバイクには心を揺さぶられるし、胸が高鳴る。今すぐに乗りたいとはやる気持ちを抑え、私は新型パニガーレV4Sのスタイルやディテールをじっくりと観察することにした。まず、そのスタイルはこれまでのスーパーバイクでもっとも魅力的で、セクシーで上品だ。
私は916に試乗したこともあるくらいの古株だが、最先端のエアロダイナミクスを持つボディには、なぜか当時の雰囲気を感じさせる。ボルトで後付けしたものとはちがい、一体型のウイングレットは美しい彫刻のようだ。もしも新型パニガーレがガレージにあったなら、いつまでも飽きることなく眺めることができるだろう。
スイングアームにも惹きつけられる。両持ち式に驚きを伴う感嘆はないが、ミニマリスト的な美しさがあるし、コーナリング時の繊細な路面追従性を重視した設計だ。
まずはパドックで新型パニガーレV4Sにまたがり、新しいコックピットとライディングポジションに身体を慣らした。従来型と似ている部分もあるが、明らかに異なる部分もある。幅の広いワイドなハンドルバーとスイッチ類は同じ(あるいはかなり似ている)ように感じるが、MotoGPスタイルの6.9インチTFTディスプレイは明らかに進化している。
パワー&トルク、Gメーター、リーンアングルはいずれもリアルタイムで表示される。スクリーンはより大きく、高さがあり、空力特性が向上しているはずだ。50mm幅広で、35mm長くなったシートはまたがった瞬間にその違いがわかる。体格の大きなライダーにとって強いメリットになるだろう。すっきりとしたフットペグは車体内側に10mm移動している。これはライダーの乗車姿勢の空力特性を考えてのことだという。
ヴァレルンガサーキットは、ミサノ、ムジェロ、イモラのように華やかなイメージはないかもしれないが、テトスコースとしては最適だ。スタートから3分の1までは高速で、その先は低速になるがテクニカルだ。私はまず、ライディングモードをレースBとミディアムパワーに、サスペンションをアクティブトラック2にセットした。レースBは「安全な」サーキット用モードで、電子制御デバイスのほとんどが機能するが、ハイグリップタイヤに最適化されている。
1周目と2周目はテストライダーのアレッサンドロ・ヴァリアの先導で走った。新型パニガーレV4Sに慣れるとともに、ヴァレルンガサーキットのコースを再確認する。慣熟走行レベルの速度域でも豊富なフィードバックがあり、新型パニガーレV4Sの真価の一端を感じられる。
3周目に入るとき、アレッサンドロはゴーサインを出した。3速でコントロールラインを越えた私は5速まで上げて第2コーナー(カルヴァ・グランデ)に入ってそのまま第3コーナーを抜け、ギヤを落とすことなくブレーキングして第4コーナーと第5コーナー(チミニ1、チミニ2)へ入る。このセクションは高速だ。
その気になれば、ドゥカティは逆回転クランクのV4エンジンをもっとパワーアップできたはずだ。しかし最高出力を216ps/1万3500rpmとした。この数値は従来型と比較して500rpm高く、わずか1psのアップに留まっている。最大トルクはわずかに下がり、発生回転数は9500rpmから1万1250rpmに上がった。
また、クイックシフト2.0はスムーズでスピーディだ。背の高いスクリーンに潜り込み、ダッシュボードのギヤインジケーターが点灯したのを視認したら、スロットルを固定したままギヤを上げるだけでいい。高回転域のフィーリングが良く、まるで昔のバイクのように五感を刺激してくる。
ハイペースで走らせているうちに気がついたのは、従来型よりも明らかに走行安定性が向上していたことだ。ヴァレルンガでは、とくに4速で真剣に攻め込んでいく高速コーナーでは、ウィーブ現象が起こってハンドルが振れ、マシンの限界を感じることがあった。そうしたセクションでは早めのシフトアップを強いられた。
しかし新型の挙動は予測しやすく、最初のセッションでもフルパワーで走れる自信があった。この安定性は、横方向の剛性を下げたフロント(メイン)フレームや両持ち式スイングアームに起因するのか、または刷新された電子制御デバイスなのか、あるいはそれらすべての相乗効果によるのか、いずれにせよ新型の進化は全開走行をしてすぐに感じられた。
セッション1を終えてピットに戻り、ラップタイムを確認したとき、それは確信に変わった。3周目のラップタイムは1分49秒3で、2022年に私が記録したタイムより約0.1秒速く、セッション終了時には1分48秒7まで短縮されていたのである。新型パニガーレV4Sのスムーズさと安定性は、高速コーナーでも如何なく発揮されていた。
セッション2では、フランチェスコと相談してレースAモード、ハイパワー(ただしフル出力ではない)、アクティブトラック1サスペンションを選んだ。オーリンズ製ユニットはまだ電子制御下にあるが、標準設定よりもスポーティだ。スライドコントロールとウィリーコントロールの介入度も低くなるがアクティブのままで、コーナリングABSは有効だ。
最初は戸惑っていた私の脳と身体だが、セッション2ではもう少し攻め込んで走ることができた。やはり走行安定性はすばらしく、ラップを重ねるたびに自信が強くなる。安定性を保つために早めのシフトアップをする必要はないし、神経質なスロットル操作も要らない。ギヤを維持したままエンジン回転を上げていき、パワーをしっかりと使える。
低速域からのスロットル操作と電子制御デバイスの効果にも同じことがいえる。コース終盤はタイトコーナーが連続し、2速で旋回するコーナーがいくつかある。そのたび素早く加速していくのだが、電子制御デバイスを信頼してすべてを任せ、スロットルを積極的に回して216psのパワーを引き出すだけでいい。ヴァレルンガのタイトコーナーの連続セクションを、これだけハードに攻め込み、速いスピードで駆け抜けたのは初めての経験だ。
1速や2速を使うコーナーの立ち上がり加速でトラクションコントロールが作動してもトルクの減少は穏やかで、挙動もマイルドだ。このような状況でもライダーが動じることなく安定して走れるのは驚異的で、まるでビデオゲームのような感覚で高速ラップを刻める。ダッシュボードに表示される私のラップタイムは、1分47秒56まで上がった。区間タイムはコースの1mごとに更新される。走りに集中しなければならないのはわかっているが、ついダッシュボードに見入ってしまう。
もっとも「肘スリ」しやすい市販車ではないだろうか
ブレーキシステムは、ブレンボの最新システム・ハイピュアキャリパーと、新たに採用された『レースeCBS』が組み込まれたABSがトピックだ。ABSの介入レベルは7段階で、レベル1はサーキット走行に特化した『レースeCBS』が設定される。フロントとリヤのブレーキを統合したこのシステムは、ブレーキレバーを握りながらコーナーへ進入した後に、レバーをリリースしてもリヤブレーキを引きずり続ける。
さらにトラクションコントロールなどを予測する『DVO』が介入して、最速かつ安全なブレーキングを作り出す。コーナリングでの車両の挙動と走行ラインを安定させる『レースeCBS』は効果は、まるでMotoGPで2度の世界チャンピオンに輝いたフランチェスコ・バニャイアになった気分だ。
従来型のブレーキも秀逸だったが、ブレンボ最新の『ハイピュア』キャリパーと新たなテクノロジーの組み合わせは非常に強力なパッケージで、優れた制動力とコントロール性で、ブレーキングはさらに自由になった。とくに制動力は本当に強力である。
急激なブレーキングでは、形状が改良された燃料タンクによるサポートと、比較的幅広になったハンドルバーがその衝撃を和らげてくれるとはいえ、身体に痛みを感じるほどだ。そんなときは多少の混乱が生じて、コーナリングをどう組み立てればいいかの判断が遅れてしまう。このブレーキシステムの欠点を挙げるなら、ライダーの身体能力の低さを思い知らせてくれることだ。
セッション2のラップタイムは1分46秒27で、前回よりも1秒以上も短縮されていた。走行データを見ると、第8コーナーではリヤブレーキに11barの圧力をかけていることも確認できた。それまでは3barと限界にほど遠かったこをを考えると、レベル1に設定した『レースeCBS』の効果が絶大であることがわかった。この事実は強烈なインパクトを私にもたらしたが、一抹の不安も否めなかった。
ともあれ、すぐさま「eCBS信奉者」となった私は、次にサスペンションセッティングを追求することにした。アクティブトラックモード1と2をすでに試していたので、モード3にトライする。これはあらかじめ保存してあった私用のセットで、フランチェスコの意見をもとにフロントフォークをレベル3から4に、リヤショックをレベル4から5へ変更した。そのほかのブレーキやアクセラレーション、ステアリングダンパーの設定はアクティブトラックモード1のままとした。
この変更が顕著に現れたのは、クリッピングポイントへの最初のターンインと低速コーナーだ。ステアリングがより正確になり、さらにギリギリまでクリッピングポイントを詰めることができ、タイトな走行ラインをトレースできる。サスペンションのわずかなセッティング変更で、とくに低速コーナーのスピードが高まったのか、ラップタイムは前回を0.3秒上回る1分46秒04を示した。
残りのセッションは2回となり、私はしばしラップタイムを忘れることにした。これまでのセッションで、ハイペースでも安全に走れることがわかったので、ドゥカティが得意とする「肘スリ」を楽しみたいと思ったのだ。
新設計のシャシーと最新の電子制御デバイス、200/60-17のワイドなピレリ製スリックを履いたリヤタイヤの驚異的なグリップ力は、クレイジーなバンク角を可能とする。肘スリをしたいと思うなら、このバイクで試すのが最適だ。新しいシャシーと燃料タンク形状は、MotoGPスタイルでイン側にぶら下がりながらコーナリングすることを促してくるのだ。
今までに乗ったバイクの中で、自然とリラックスしたまま肘を擦れるほどの車体を傾けられるものはない。これまでのセッションとは違い、ファンライド気分で走っていてもラップタイムは1分46秒台を刻んだ。2022年型より、明らかに速い。
シャシーからのフィードバックは精密で、なおかつ山の空気のようにピュアだ。シャシーとタイヤが調和し、ライディングレベルを引き上げる。電子制御サスペンションは、バイクとライダーの一体感を希薄することがあるが、新型パニガーレV4Sではその兆候はない。私はセッションの終盤でタイムアタックしたくなり、ファンライドモードから切り替えてヴァレルンガを攻め込んだ。そして危険を感じることはいっさいないまま、1分45秒5を記録することができた。
そして最後のセッションでは、自動的に最高出力を抑制するレースAモードではなく、フルパワーモードを選択した。このモードでは1速と2速でよりアグレッシブになるが、3速以上はレースAモードとほぼ同じになる。精度は良く、しなやかで、従来型の同等モードよりも扱いやすい。
写真撮影のため、ウィリーコントロールはオフにして走行した。そのため乗りやすさがスポイルされて疲労につながったが、スロットルを大胆に開けたらすぐにウィリーするわけではなかった。これはホイールベースを延長したこと、新設計の両持ち式スイングアーム、進化したウイングレットの効果、最高出力発生回転数が高くなったことなどの影響なのだろう。ラップタイムは0.3秒アップの1分45秒2を記録したが、それより遅い周回もあり、身体にかかる負担はラップごとに大きくなった。
新型パニガーレV4S総合評価
いくつかのセットを試して走り込んだ今回の試乗で、新型パニガーレV4Sをどう理解したか。ラップタイム短縮という結果もあるが、それとは別にライディングフィールだけでも大幅な進化を感じることができた。
そのひとつは、大きく向上した走行安定性による乗りやすさだ。前述したように、高速コーナーの立ち上がり加速で車体がブレないため、早めのシフトアップをする必要がない。すべてのコーナーでスロットルを全開にして、フルパワーをタイヤから路面へと伝えられる。当然、これはラップタイムの短縮に直結する。
もうひとつは、電子制御デバイスとブレーキシステムの驚異的な進化だ。ドゥカティのスーパーバイクで、かつてこれほどまでに安定して走れるバイクはなかった。新型パニガーレV4Sに乗るライダーは、電子制御デバイスを全面的に信頼し、従来のライディングを変えることになるだろう。
これまでの常識、あるいはほかのバイクでは「やってはいけない」とされていた乗り方をしても問題ないからだ。ライダーが持っているスキル以上のライディングを体験することができ、結果としてラップタイムが上がる。そして何よりも、走ることが楽しくなる。
2年前のラップタイムと比較するのは、いくら同じサーキットを走行した従来型のタイムとはいえ、装着タイヤをはじめさまざまな条件が異なるし、2年という間隔も無視できない。
だからこの比較はフェアでないことを前提としたうえで、それでも数字を出すと、2022年型パニガーレV4Sで私が記録したラップタイムは1分49秒442で、今回のベストラップは1分45秒23だ。新型パニガーレV4Sは、さらに速いバイクへ進化したし、より安全になった。ライダーにかかるストレスも少ないと断言できる。
今回の試乗はサーキットのみだったので、一般公道で新型パニガーレV4Sがどのような走りをするかはわからない。2025年型の車両価格は414万1000円で、2024年型の375万7000円との差額は38万4000円だ。とくにホンダやBMWといった強力なライバルとの対決は興味深い。
しかし、もしも私がドゥカティのライバルだったなら、彼らがMotoGPとスーパーバイク世界選手権で勝利したノウハウとテクノロジーを持ち、それを着実にフィードバックしたことに不安を覚えることだろう。ドゥカティはそれらを見事にロードゴーイング・スーパーバイクに移植し、すべてのライダーがエリートレーサーの気分を味わえるようにしたことは、実に素晴らしい事実だ。
レポート●アダム・チャイルド 写真●ドゥカティ まとめ●山下 剛
ドゥカティ2025年型パニガーレV4S主要諸元&最新電子制御を解説1
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