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「この先10年以上愛されるバイクに」インディアン新型スカウト開発スタッフが語る「主力モデル刷新に込めた思い」

新生スカウト、登場から10年の時を経て初のフルモデルチェンジ

ポラリス社がインディアンブランドを運営しはじめた後、2014年に復活した新生「スカウト」シリーズが、10年の時を経てフルモデルチェンジを行った。DOHC4バルブの水冷Vツインエンジンは1133ccから1250ccへと排気量を拡大。従来型ではアルミダイキャスト製だったフレームは、新設計のスチールパイプ製フレームとなった。
この新型スカウトシリーズは5タイプの車種がラインアップされ、2025年モデルとして、近く日本でも販売される予定だ。

日本での発売に先駆け、2024年4月半ば、モーターサイクルジャーナリスト松井 勉氏がサンフランシスコで行われたメディアローンチに参加。インディアンモーターサイクルのエンジニアに同車の開発の狙いを聞いた。彼らのコメントから、新型スカウトシリーズの魅力を紐解いていこう。


スカウトシリーズはインディアンの主力モデル

インディアンモーターサイクルのラインアップにおいては「ミドルクルーザー」となるスカウトシリーズ。このモデルは同社を支える屋台骨のような存在だ。
事実、インディアンモーターサイクル全体の販売では40%を占め、輸出マーケットでは半分がこのスカウトだ。そのユーザー層は28%が新たにバイクに乗り出したニューカマーであり、スカウトで初めてインディアンに出会う人が93%だという。

2014年に発売されて以降、10万台を販売してきた先代のスカウトシリーズは、満足度の指標であるネット・プロモーター・スコアも驚くほど高い。そうした大事な車種をフルモデルチェンジするにあたり、新生スカウトシリーズが築いてきたこれまでの10年、そしてインディアンブランドの歴史を踏まえたうえで、スカウトシリーズのプラットフォームをこの先10年以上も魅力あるものにすべく開発が進められたという。

インディアン新型スカウト(2025年モデル)

写真のモデルはオーソドックスなデザインにスポークホイールを組み合わせた「クラシック」

インディアン従来型スカウト(写真は2024年モデル)

インディアンの伝統を取り入れたデザイン

インディアンモーターサイクルのチーフデザイナー、オラ・ステネカルド氏はスタイリングについて「進化であり、革命的なモデルチェンジではない」と述べる。キーワードは「タイムレス」「シンプルでスッキリと」「カスタマイズのしやすさは重要」で、あくまでも伝統的でインディアンならではのアメリカンクルーザーを作り込むことをテーマとして掲げたという。

ディテールはインディアンのヒストリカルなモデルをオマージュ。燃料タンク上面から後輪車軸部へと続くなだらかなライン、タンク上部の前面から下へ、そして後方へと折り返すラインを表現。新設計のスチールパイプ製フレームが描く、エンジン下側からステアリングヘッド部へと連なるスワンネックラインもそのひとつである。

1133ccから1250ccとなった新エンジンのデザインもより存在感あるものに仕上げられたほか、オイルチェック窓を新設しメンテナンス性にも配慮された。また、細かなコトだがラジエターを20%サイズダウンしたことも、デザイン面に大きく貢献している。

インディアンモーターサイクルのチーフデザイナー、オラ・ステネカルド氏
新設計のスチールパイプを使ったフレーム。そのデザインはインディアンの歴史を表現している
エンジンの外観もイメージを一新

新型スカウトシリーズの開発は世界的なパンデミックと重なり、イメージスケッチという平面から、立体のクレイモデルを作る工程でエンジニア達はステイホームを強いられた。しかし、スケッチに落とし込んだタンクのラインが次第に平面に重なり消えてゆく微妙さをデザイン部門で共有するため、クレイモデルをシェイプする工程はインディアンモーターサイクルのデザイン施設にスタッフが集まり、実際の手触りも確認しながら開発が進められた。

そこでは、アメリカで根付いたカスタムカルチャー……二輪に限らず、四輪のホットロッドや1965年式のリンカーンコンチネンタルが持つ直線的だが穏やかなアールで描かれたドアパネルの面などから多くのインスパイアを得たという。

実際に新型スカウトシリーズをショールームで見て欲しい。そのプロポーションは、マット系カラーのモデルでも、101スカウトのように鮮やかなカラーと透明感のあるクリアコートのモデルでも、しっかりと伝わってくる。
と、同時にインディアンのヒストリカルなモデルを見る機会があったら、必ずや新型スカウトとの共通項に出会うだろう。それらは丁寧でキレイなのだ。

新型スカウトシリーズは、エンジンはもとより、パーツひとつひとつ、配線やケーブル類の処理といった細部まで丁寧に仕上げられた結果、ミドルサイズクルーザーというポジションながら上級モデルに比肩するクオリティーを有しつつ、100メートル離れてもスカウトだと解るデザインになったという。

新型スカウトのデザインスケッチ(ほぼ最終稿)
クレイモデル製作の様子
クレイモデル製作の様子

純正アクセサリーの充実化も大きな話題、しかもモデル問わず装着できる!

また、アクセサリーパーツの充実化も新型スカウトシリーズの特徴で、新しいアクセサリーが70種以上、先代からキャリーオーバーされたアクセサリーが30種以上あるという。さらに、どのアクセサリーも新型スカウト全モデルに装着できるよう共用化されている。これは嬉しい。

アクセサリー全体の内訳を見てみると、シートやステップ、ライザーなどライダーのエルゴノミクスに関するものが30種以上、ドライビングランプやグリップヒーターなど快適性を高めるアクセサリーが40種以上と、かなり豊富な設定であるのがうかがえる。

アクセサリーの装着とも関係する点として、新型スカウトシリーズのマフラーに注目してほしい。従来型では上下に2本並ぶサイレンサーを採用していた。確かにそれはカッコいいのだが……新型ではスイングアームと平行に1本出しマフラーとなっている。
その理由を聴くと「スーパー・スカウトに装着したサドルバックを見てもらうとわかる。バッグは左右がシンメトリックで同等の収納サイズになっている。スタイルと積載性という機能を両立するためだ」とのこと。

インディアン スーパースカウト 2025
サドルバッグ、着脱式スクリーンなどを標準装備する「スーパー・スカウト」

編集部注:スーパー・スカウトはサドルバッグが標準装備となるが、他モデルでもアクセサリーとして装着できる。

現代のバイクにふさわしい各種電子制御も搭載

最後に電子制御について。ABS、トラクションコントロール、クルーズコントロール、ライディングモードと最新モデルにふさわしい内容が一式搭載され、TFT4インチモニターを備える「リミテッド+テック」の装備を選択すれば、Bluetoothでスマートフォンとの連携機能も活用できる。


冒頭で説明したように、インディアンにとってアンバサダー的な存在がスカウトというモデルだ。スポーティーな走りだけでなく、バイクとともに多様なライフスタイルを過ごすための深化も考慮されている。ハード、ソフトともに長く愛せるプロダクトとして、なるほどこう進化したのか、と思う造り込みなのだ。

インディアン新型スカウトは全5モデル

スカウト・クラシック

インディアン スカウトクラシック 2025

ディープフェンダー、ワイヤースポークホイールなどを装備し、その名の通りクラシカルなデザインが特徴。ホイール径はフロント16インチ、リヤ16インチ。エンジンのヘッドカバーはシルバー仕上げ、マフラーはメッキ仕上げとなる。

スカウト・ボバー

インディアン スカウトボバー 2025

ローダウンサスペンションを採用したボバースタイルのモデルで、ヘッドライトカバー、バーエンドミラーを装備。エンジン、マフラーはマットブラック仕上げとなる。ホイール径はフロント16インチ、リヤ16インチ。

スーパー・スカウト

インディアン スーパースカウト 2025

サドルバッグ、大型スクリーン、タンデムシートを標準装備。エンジンのヘッドカバーはシルバー仕上げ、エキゾーストパイプはメッキ仕上げ、サイレンサーはブラックとなる。ワイヤースポークのホイールを採用し、ホイール径はフロント16インチ、リヤ16インチ。

スポーツ・スカウト

インディアン スポーツスカウト 2025

ヘッドライトカウル、バーエンドミラーを装備し、いわゆる『クラブスタイル』に仕上げられたモデル。エンジン、マフラーはマットブラック仕上げとなる。ホイール径はフロント19インチ、リヤ16インチ。

101スカウト

インディアン 101スカウト 2025

倒立フォーク、フロントダブルディスクブレーキ、ブレンボ製キャリパー、リザーバータンク付きリヤショックを装備するスポーティなモデル。また、同車のみ専用ECUでエンジン性能が高められている。エンジン、マフラーはマットブラック仕上げ。ホイール径はフロント19インチ、リヤ16インチ。

レポート●松井 勉 写真●インディアンモーターサイクル 編集●上野茂岐

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