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世界限定300台、419万円の走る宝石「MVアグスタ・スーパーヴェローチェ98」その妖しい魔力に魅入られる

スーパーヴェローチェ98 MVアグスタ

800cc並列3気筒「スーパーヴェローチ800S」がベース

イタリアのMVアグスタといえば、当初ブランドを興した人物がイタリアの貴族だったことや、レーシングシーンでの伝説的な活躍、そして走る宝石とも称される贅をつくしたバイク作りから、プレミアム中のプレミアムブランドといって差し支えないでしょう。

そんな彼らが通常ラインアップとは別に、「最初のエンジン」に敬意を表した限定モデルをリリースしたとなれば注目せざるを得ません。「スーパーヴェローチェ98エディツィオーネリミタータ」と名付けられたこのマシンは、世界限定わずか300台で、419万円というプライスボードが掲げられています。マニアやコレクターが惹きつけられるのは無論ことですが、果たして一般的なバイカーにとってこの限定車はどんな風に映るのでしょう。

スーパーヴェローチェ98エディツィオーネリミタータは、2021年に発売されたカフェレーサー的デザインの「スーパーヴェローチェ800S」がベース。手を入れられている箇所は外装パーツがメインで、それゆえ、逆回転クランクの798cc並列3気筒エンジンや足まわりなどハード面のチューニングは行われていません。

スーパーヴェローチェ98エディツィオーネリミタータ。なお現在MVアグスタの総輸入元となっているKTMジャパンによれば、2024年5月上旬時点でまだ購入可能とのこと

スーパーヴェローチェ800シリーズとは

2020年に初登場したスーパーヴェローチェ800。写真は現行モデルで価格は319万円。798ccの並列3気筒エンジンは最高出力147馬力で、性能はシリーズで共通
2021年に発売された上級グレード「S」(写真は現行モデル)。スポークホイールやアルカンターラのシートを専用に装備し、価格は380万円

海外ではレーシングキットが付属しますが……

ただし、MVアグスタは車両の付属品として右2本、左1本の3出しストレートパイプマフラー、並びにレーシングECUを用意することで通常モデルとの差をつけてきました。マフラーはイタリアのアロー製で耐熱ブラックに塗装されたもの。このパッケージに換装することで乾燥重量173kgが165kgまで減量できるとくれば、パフォーマンス向上への貢献も大いに期待できるというもの。
加えて、このキットは車両と別に豪勢な梱包で届けられるというから、オーナーとしては心躍ること間違いなし……なのですが、残念ながら日本国内ではこのレーシングパックは取り扱われることはないそうです。ああ、その快音を聴いてみたかった!

ところで、レーシングキットのエキゾーストシステムに見覚えがあると思った方はちょっとしたマニアに違いありません。実は2018年のEICMAで公開されたスーパーヴェローチェ800のコンセプトモデルが同じような黒い3本出しパイプを装着していました。が、こちらはアローでなく、同じくイタリアのSC PROJECT製でした。

車体とは別に梱包されて届くレーシングキットと限定車のサーテフィケーション。こういう演出は嬉しくなりますよね。日本で取り扱われないのが残念!
レーシングキットに含まれるアロー製エキゾーストシステム。スタンダードとは異なり、右2本、左1本の3本出しとなっています
2018年に発表された「スーパーヴェローチェ・コンセプト」。SC PROJECT製のストレートマフラーが装着されていました

元々美しいスーパーヴェローチェ800Sを、オリジナルペイントで艶やかに

先ほど、通常モデルとの違いは外装パーツがメインと言いましたが、逆に言えばそこに全力投球しているわけです。どこをとっても、イタリアの名門らしくクラシカルかつハイクオリティ。
例えば、ロッソ・ヴァルゲーラと名付けられた限定車だけのボディカラー。これは前述の歴史的エンジン……1943年に作られた98ccの2ストローク単気筒を搭載し、1945年に誕生したMVアグスタの第1号車「MV98」とほぼ同色というペイントになります。ちなみに、ヴァルゲーラとはMVアグスタの本拠地、ヴァレーゼにある集落にちなんだものだそうです。

1945年に誕生したMVアグスタの第1号車「MV98」(左)と、スーパーヴェローチェ98エディツィオーネリミタータ

限定車のお約束ともいうべきシリアルナンバープレートはステアリングのアッパーブラケットに装着されており、乗るたびに満ち足りた気分にさせてくれる仕組みかと。このほか、98のアイコンはリヤエンドに描かれているほか、レーシングキットのシングルシートカウルにもイタリア国旗とともにあしらわれています。そう聞くと「やり過ぎちゃうか」と突っ込まれそうですが、そこはイタリアのセンスですから悪目立ちなど一切していないのです!

ラジアルタイヤに対応し、独特の構造となっているスポークホイールもまた美しい。スーパーヴェローチェ800Sのものと同様ではありますが、フレームと統一したシルバー仕上げに。フロントホイールではブレンボのStylma M4.30とのコーディネートも見事というほかありません。一見して「高いんだろうなぁ」とため息がでるポイントです。

シリアルプレートには000/300のナンバーが打刻され、アッパーブラケットにねじ止めされています
スポーク、リムともにシルバーで統一されたホイール。スポークの組みにさえ「美」を感じてしまうのはアグスタマジックでしょうか(スーパーヴェローチェ800Sはゴールドリムにブラックのスポーク)
レーシングキットに含まれるシングルシートカバー。ボディ本体同様にロッソ・ヴァルゲーラという特別なカラーでペイント。複数の塗膜が重ねられ、美しい仕上げとなっています

リアルレザーを用いたクラシカルなタンクベルトもスーパーヴェローチェ800Sと同様の装備ですが、98エディツィオーネリミタータではブラックの専用カラーに(通常モデルはブラウン)。タンクキャップとの接合部品などはアルミの鋳物で、質感もこれ以上はないというほど豊かなタッチにあふれていました。

ともあれ、98エディツィオーネリミタータの宝石かのような仕上がりはベースとなったスーパーヴェローチェ800Sの素晴らしさによるところも少なくありません。驚嘆したくなる美しいアルミの切削痕や緻密きわまりない溶接ビードなど、イタリアの職人技をこれでもかと見せつけてくれるマシン。

それをさらに磨き上げてきたのが98エディツィオーネリミタータですから、出来栄えに注文をつける者もそうそういないはず。「そんな高級ブランドの限定車なんて興味ないよ」と言う方もいるかもしれませんが、実車を一目でも見ればその魔力にグッと引き寄せられてしまうこと請け合いです。値段を知るにおよんで、別の意味のため息が漏れてしまうかもしれませんが──。

「スーパーヴェローチェ98エディツィオーネリミタータ」の細部を写真で見る

リヤランプに配されたガードリングはアルミの切削仕上げで、これ自体が美しい逸品。細部にも贅を惜しまないところがアグスタ流
フロントのライトリングはどうやら樹脂パーツのようでした。クラッシュ時の安全性や補修のしやすさを優先したのかもしれません
レザーベルト上側の留め具はタンクキャップに接合
レザーベルト下側の留め具。金属の質感を引き立てる鋳肌の滑らかさ、その形状には目をみはるものがあります
座面をスエード調、サイドは表革調と表皮を切り替えたシート。ボディカラーと同系統のステッチで仕上げてくるあたりも粋なポイント
スチールパイプフレームの接合部ですが、ハンドメイド感ある溶接痕にご注目! 盛り方や均一性にイタリアの職人気質が感じ取れるはず
3本出しマフラーはベースモデルのスーパーヴェローチェ800Sと同様

MVアグスタ スーパーヴェローチェ98エディツィオーネリミタータ主要諸元

■エンジン 水冷4サイクル並列3気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク79mm×54.3mm 排気量798cc 圧縮比13.3 変速機6段リターン

■性能 最高出力108kW(147hp)/1万3000rpm  最大トルク88Nm(8.89kgm)/1万100rpm 

■寸法・重量 全長2015 全幅760 全高── 軸距1380 シート高830(各mm) タイヤF120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量173kg(乾燥)

■容量 燃料タンク16.5L

■価格 419万円

レポート●石橋 寛 写真●MVアグスタ/石橋 寛

CONTACT

KTMジャパン

https://www.mvagusta.com/jp/jp

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