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最近、スズキのデザインが尖ってきた理由「キーワードはGSX-R DNAとプラットフォーム」

ここ数年、スズキのデザインが変わってきている。

古くから「GSX」はスズキのスポーツバイクの重要な柱となるモデルだが、今日のGSXシリーズはフロントフェイスが共通化され、異なるプラットフォームであってもGSXとしてのアイデンティティを持たせようとしているようだ。
さらにスズキは2024年モデルとして、GSXシリーズにGSX-S1000GXとGSX-8Rの2車を追加。バリエーションをますます拡大している。

GSX-S1000GXは998cc並列4気筒、GSX-8Rは775cc並列2気筒という、まったく異なる排気量・形式のエンジンであるほか、クロスオーバーとフルカウルスポーツとカテゴリーの違いを見るまでもなく、それぞれのキャラクターの違いは明白だ。
だが、どちらもプラットフォーム展開から生まれたモデルという点は共通だ。

そこで当記事では「デザイン」と「プラットフォーム」について、GSX-S1000GXとGSX-8R開発陣へのインタビューを通して「スズキが目指すもの」に迫っていく。


プラットフォーム展開のメリットと難しさ

プラットフォームとは、エンジンとメインフレームなどを共通化し、キャラクターが異なるモデルを作り、広げていくための手法だ。たとえば、GSX-S1000(ネイキッド)、カタナ(ネオクラシックスポーツ)、GSX-S1000GT(オンロードツアラー)、GSX-S1000GX(クロスオーバー)の4種は、エンジンとメインフレームを共通としていながら、異なるカテゴリー、違うキャラクターのバイクに仕立ててそのバリエーションを広げている。

そして、GSX-8R(フルカウルスポーツ)は、GSX-8S(ネイキッド)、Vストローム800/Vストローム800DE(アドベンチャー)と、エンジン/メインフレームを共通とするプラットフォームモデルである。なお、これら「800シリーズ」は4機種同時に開発が進められ、モデルバリエーションのキャラクターづけや走行性能をよりバランス良く仕立てることができたという。

プラットフォームのメリットは、まずエンジンとフレームの開発コストを低く抑えられることにある。結果として、電子制御デバイスの開発や、それぞれのキャラクターに合った個別装備にリソースを割けるようになるだけでなく、車両価格を抑えられる利点が大きい。

GSX-S1000系モデル(998cc並列4気筒)

2021年に発売された現行型GSX-S1000
2019年に発売されたKATANA
2021年に発売されたGSX-S1000GT
GSX-S1000GX スズキ 2024
2024年に発売のGSX-S1000GX

デメリットとしては、たとえばVストローム800DEとGSX-8Rのように、オフロードも走れるアドベンチャーと、サーキット走行も楽しめるオンロードスポーツでは、求められる車両特性がかなり異なる。そのため、とくに車体設計に細心の配慮が必要になることだ。

ひとつの例としてフロントホイール径を見ると、Vストローム800DEが21インチ、Vストローム800が19インチ、GSX-8S/8Rは17インチである。もちろんキャスターとトレール量、フロントフォークのストローク長も異なる。そのため、GSX-8S/8Rでは一般的なオンロードスポーツと比べて、前輪とエンジンの距離が長く、かなり間隔(クリアランス)がある。

800シリーズ(775cc並列2気筒)

2023年に発売されたVストローム800DE
2023年に発売されたVストローム800
2023年に発売されたGSX-8S
GSX-8R スズキ
2024年に発売のGSX-8R

その点について、GSX-8Rのデザインを担当した遠藤勇太さんはこう話す。

「まず、デザインの初期段階で、4機種を想定したレイアウト線を引いています。もちろんそれですべてがうまくいくわけではありません。Vストロームに合わせる部分だったり、8Rに合わせる部分も当然出てきます。エンジンとタイヤのクリアランスが広いのはプラットフォームの宿命で、これはアドベンチャー(Vストローム)由来になっています。しかしそれをマイナスと捉えるのではなく、プラスの方向へ転化するよう、スタイルを昇華させることを目指しました。

具体的には、8Rを正面から見ていただくと分かりやすくて、前面投影面積がかなり細く見えるようにデザインしています。つまり、エンジンとタイヤの距離が近い場合、そこまでカウルで覆わなければならなくなるため前面投影面積が太く(広く)なってしまうのです。8Rではそれを逆手にとってカウルの前方を細く絞り込めたことで、スタイリングとしても格好良くすることができました」

一方、プラットフォームとはやや話が異なるが、GSX-Sシリーズは縦型2灯ヘッドライトを中心に、エアダクトとポジションランプを左右対称に配置するフロントフェイスで統一している。今でこそ車名からGSXが外されているが、このデザインはハヤブサも同じだ。

GSX-8R スズキ
GSX-8R
GSX-8R

800シリーズは、六角形のLEDヘッドライトを縦に2灯配置するデザインを共通としている。GSX-8Sではポジションランプをヘッドライトの左右に配置することで、GSX-Sシリーズ同様のフロントフェイスを作り出している。また、GSX-8Rはポジションランプこそ縦型2灯ヘッドライトの上部に配置しているが、ヘッドライトを中心に大きなエアダクトを設け、GSXであることを明確に打ち出している。

これはVストローム800/DEもそうだし、Vストローム1000/DEとカタナも同様だ。Vストローム1000/DE、そしてカタナの場合、一見しただけでは角型1灯に見えるデザインだが、ハイビームとロービームを縦に2灯並べる構造となっている。

最新スズキデザインを貫く「GSX-R DNA」

GSX-8S/8Rについて、遠藤さんはそのデザインコンセプトを「ネクストジェネレーション・スズキスポーツバイクスタイリング」と話す。

「800ccフルカウルスポーツはスズキとして初めての挑戦です。どうあるべきかという議論の結果、コンセプトはスズキスポーツバイクのDNAを受け継ぎ、さらに進化させることでした。それはやはり『GSX-R』である、と考えました。センターヘッドライトの両脇に配置したエアダクト、それを再解釈することです。それが『GSX-R DNAフェイス』です」

2017〜2022年まで販売されたGSX-R1000R。この型以降、新型は登場していないので、現状では最新のGSX-R1000となる(日本、欧州では販売終了、北米では販売が続いている)

エンジンやシャシーだけでなく、外装デザインも8Sと8Rは同時に開発が進められた。そして遠藤さんは、この2車を「双子の姉妹」と表現した。兄弟ではなく姉妹としたところが興味深い。今回は残念ながらその真相を尋ねる時間がなかったが、もしも機会があったらぜひ伺ってみたい。

GSX-R DNAフェイスは、GSX-Sシリーズにも800シリーズにも色濃く反映されている。さらにいえば、縦型2灯ヘッドライトはGSX-R125/S125、Vストローム650/XT、アヴェニス125にも採用されている。

「現行モデルにはかなりこのヘッドランプを使っていまして、スズキのイメージとして作っています。将来的には違う方向性になるかもしれませんし、あるいは進化を重ねていくかもしれませんが、現段階においてはこれがスズキの顔、イメージと捉えてもらっていいと思います」

そう話す遠藤さんは、2017年からおよそ3年間、イタリアにある欧州デザインスタジオに在籍していた経験を持つ。そのとき、スズキのデザインに対する見方がに変化があったという。

「8Rなどの機種もその時期にスケッチを描いてたのですが、一番の気付きは国外から見るスズキのイメージの変化でした。国内にいると『鈴菌』という言葉に代表されるように、ちょっとこう……おもしろい感じで語られることが多いんです。だけど、外側から見ると、スズキのバイクって非常に格好良くて、改めてスズキというブランドを捉え直すいい機会になりました」

曲面的なハヤブサ、シャープで直線的なGSX-S1000GX

また、GSX-S1000GXのデザインを担当した小川和孝さんはこう語る。

「私は2018年頃からデザインをまとめて見るようになったのですが、3代目ハヤブサ(現行モデル)以降はいろいろとトライをしています。デザイン制作の体制をある程度変えたこともありますが、一定レベルを超えないデザインのものは世に出さない。そこをきちんとコントロールしつつ、よりいいものが生まれるためのことを色々とやろうとしているところです。

スズキのオンロードバイクは丸いイメージがあると、よく言われました。今までは良くも悪くもスケッチ映えするようなデザインが選ばれがちだったのですが、そこから一歩脱却して、形そのものの新しさ、デザインそのものを見直すことで、これまでになかったアプローチなどに挑戦している最中です。そうした意味で、GSX-S1000GXなどのデザインはこれまでと違うものになっていると思います。

3代目ハヤブサは曲面をきれいに見せるよう、それでいて新しい形を追求しました。GSX-S1000GXでは直線やシャープな面を使い、レイヤー状に重ねたり、軽く見えるようにデザインを工夫したり、なおかつ空力性能などの機能性と融合させながら作り上げました」

2021年に発売された現行型ハヤブサ
GSX-S1000GX スズキ
GSX-S1000GX

GSX-S1000GXでは高速走行時に受ける風をカウルから剥離させることで空力性能を高めているという。それが必ずしもシャープなスタイリングに直結しているわけではないそうだが、GSX-S1000GXのスタイリングは機能美の結実といえそうだ。

しかし、GSX-S1000GXに限らず、ここ数年でスズキがモデルチェンジ、あるいはニューモデルとして発表したスポーツモデルは、いずれも直線を基調としたシャープでエッジが際立っている印象がある。しかし、そのなかで異彩を放っているのがハヤブサだ。よく観察すればシャープなディテールもあるのだが、全体的には有機的な曲面を生かした造形で、従来型のイメージを色濃く反映している。

そう考えると、GSXシリーズのシャープでエッジの効いた直線基調のデザインは、スズキの新しいデザイン手法であるとともに、GSXシリーズの個性を強調するものとして機能しているといえそうだ。さらにいえば、そうしたスズキの新しいデザインの中において、ハヤブサのデザインと個性を浮き上がらせる方法といえるのかもしれない。

スズキの縦型2灯ヘッドライトは、ハヤブサのようにLEDだけでなくプロジェクターランプを併用するものだったり、あるいはGSX-S1000のような階段形状、GSX-S1000GXのような逆スラント形状、カタナのような角型1灯風だったりと、そのデザインはさまざまだ。そしてプラットフォーム化が進む現在、そしてこれから、「スズキの顔」をどうデザインして個性づけしていくのか、という点も重要な課題のひとつといえるだろう。

GSX-S1000GXとGSX-8Rをはじめ、近年のスズキスポーツモデルのフロントフェイスを眺めて、次のニューモデルがどのような形の縦型2灯ヘッドライトデザインで登場するのか、想像をふくらませてみるのも楽しい。

ハヤブサのヘッドライト
GSX-S1000のヘッドライト

レポート●山下 剛 写真●スズキ/柴田直行

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