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ホイールは前後17インチ、アドベンチャースタイルだがオンロードに特化
スズキからVストロームシリーズとは異なる、スーパースポーツ由来の新たな足長モデル「GSX-S1000GX」が登場した。日本国内での発売は2024年1月25日だが、ポルトガルで先駆けて行われた国際試乗会にプロライダーの鈴木大五郎氏が参加。「The Supreme Sport Crossover」をコンセプトとする同車の走行性能から快適性までをレポートする。
鈴木大五郎●AMAスーパーバイクや全日本ロードレース選手権など数々のレースへの参戦経験、そして、国内外さまざまなメーカー・カテゴリーの市販バイクの試乗経験を持つ二輪ジャーナリスト。アドベンチャーモデルにも多数試乗し、造詣が深い。
スズキのラインアップに新たに加わったGSX-S1000GXは、ネイキッドスポーツモデルのGSX-S1000を発端としたシリーズの第三弾。ツーリングシーンに重きを置きフルフェアリングを装備するGSX-S1000GTに対し、GSX-S1000GXの特徴は、ツアラーとしての性能はGT同様に、より幅広いシチュエーションでの走りを想定したモデルだ。

いわゆるアドベンチャー系とも言えるパッケージングだが、同社の人気アドベンチャー、Vストローム1050とは異なり、よりオンロードに特化したキャラクターを持つ。搭載される水冷4気筒エンジンは、かつてスーパーバイクで活躍していたGSX-R1000(K5・K6型)のものがベース。
これは現行型カタナにも搭載されているエンジンである。かのGSX-R1000はレースシーンでは既に退役しているが、実は今でも多くのライダーから支持されている。その声はスズキ系のレーシングライダーだけでなく、ジャーナリスト勢からもよく聞くコメントであり、現在でもその性能は色あせていない。
国際試乗会で乗ったテスト車両は純正オプションのパニアケースを装着した状態だった(アメリカでは標準装備して販売されるとのこと)。それもあって車格はやや大きくも見えたが、またがってみれば意外やスリムでコンパクトに感じられる。例えばVストローム1050などと比較すれば圧倒的に小さく、実際の重量や取り回しも軽い。
シート高は高めだが、このマシンの狙いに深く関わるであろう設定なのだから、批判の対象にするのはお門違いだろう。身長165cmの僕であれば当然足着きが良好とは言えないが、足着きを考慮してシートスポンジを削るのではなく、むしろ厚めにして走行時の快適性を高めている。とはいえ、サイド部はしっかりとスリムにフィニッシュされており、数値でイメージするよりも足着きは悪くないとも言える。


エンジンを始動すると、懐かしくも心地良い4気筒サウンドが放たれる。エンストを防ぐローRPMアシストによって発進の際、特に神経を使うことはない。コントローラブルなアクセラレーションがK5・K6エンジンの特徴でもあったが、スロットル・バイ・ワイヤー化されてライディングモードも3パターン用意されたことで、さまざまな表情を見せてくれる。
Aモードではややアグレッシブな反応。市街地や先の見えないワインディングではやや勢いが付きすぎるようにも思えるが、走り慣れたシチュエーションではレスポンスの良さが味方になってくれるだろう。
Bモードはこのエンジンのスタンダードモードとも言うべき汎用性の高さが特徴。いい意味でのファジーさがコントロール性を高めてくれる。今回の走行の6割ほどはこちらを選択していた。
そしてCモードはやや穏やかなパワー曲線を描く。最高出力はほかと変わらないものの、開け始めからパワーの盛り上がりまでがマイルド。レインモードと混同されそうであるが、ドライ環境であってものんびり走らせるような状況ではマッチング良好である。
さまざまな場面において簡単に出力特性を選択できる機能はGSX-R時代にはなかったものであり、これがGSX-S1000GXの多様性に華を添えている。

スズキ初の電子制御サスペンション採用車
ポルトガルのリスボン周辺を2日間、400km弱の走行であったが、走行シチュエーションは多様であった。石畳をはじめとした路面の悪さは日本とは比較にならないほど。普通であればガタガタとしたショックが体に伝わってくる。ここはスズキのバイクとして初めて採用されたセミアクティブサスペンションが威力を発揮する場面である。

ソフト、ミディアム、ハードのほか、ユーザーモードではそれぞれの設定からさらに強弱3レベルの減衰調整が可能となる。ここでは、まずソフトを選択。猫の足を彷彿とさせるしなやかさで路面の凸凹をいなしてくれる。
しかしスピードが高まってくると、車体全体が動きすぎる印象で頼りなくも感じられる。ただ、これは放っておいてもじきに慣れる程度の動きかもしれない。また、想定外のギャップの連続などに遭遇した場合には、基本設定を超えた領域で減衰コントロールがされるうえ、エンジン出力にも補正が入るとのことだから、なおさらお任せのままにしてしまいそうになる。
しかし、シチュエーションによってミディアム、ハードとこまめに設定を変更することでマシンの挙動がはっきりと変わるのだからこれを使わない手はない。
基本的にはヒラヒラと軽快なハンドリングが持ち味だが、ワインディングで攻め込んだ際には、ダンピングをハードにしていればしっかり感がグッと高まり、スポーツバイクとしてのフィーリングも明らかに向上する。サーキットを攻め込むようなシチュエーションではもっとふさわしいマシンもあるはずだが、行き当たりばったりの道が連続するようなシチュエーションでのこの身のこなしは芸術的でもある(私の運転テクニックも貢献している!?)。
また、混雑する市街地では大柄なアドベンチャーマシンと異なり、パニア付きであってもスイスイと車の間を縫っていける俊敏性も確認できた。

ハイウェイでの巡航では、高いウインドプロテクション性能と嫌なバイブレーションのない快適性が味わえる。クルーズコントロールを使って楽をすることも可能だが、テスターとしてはその潜在能力を試さないわけにはいかない。
アクセルをワイドオープンすると、瞬時に200km/hほどに到達させるパワフルさとともに、長大な直線路を有する竜洋テストコースで磨き上げられた直進安定性が披露される。これはタンデムでガンガン飛ばしても不安はなさそうである。
ちなみに、タンデム時に限らずオートプリロードモードを選択していれば、前後サスの沈み込み量を検知してリヤプリロードが自動で適切に設定される。また、任意でソロ、荷物積載、タンデム、タンデムプラス荷物積載など幅広いセットアップから設定を選ぶこともできる。 開発ライダーはそれぞれの項目に関して、まずは電子制御のない素の状態でしっかり作り込んだと語っていた。
我々テスターは電子制御でどの程度課題点をごまかしているか?といった点にも着目しているのだが、それを聞いてGSX-S1000GXの仕上がりの良さに納得。電子制御というスパイスを適量で加えることで、よりマシンの完成度を高めていることを確認した。そんな開発工程も含めて、GSX-S1000GXはスズキらしい生真面目な姿勢が目に浮かぶようなマシンとなっていた。
ここが気に入った!
充実した電子制御装備の恩恵もあって、市街地から高速道路、ワインディングまでツーリング&スポーツライディングをそつなくこなせる実力。足まわりの快適性が高く、シートの座り心地もいい。熟成されたエンジンとモード変更によるキャラ変も◯。多様な機能の設定を変更するためのスイッチや操作方法がシンプルなのも美点。
ここが気になる
電子制御サスペンションは既に多くのライバルメーカーが採用している。付加価値として、ここは車高調整機構も欲しかったところ。また、クルーズコントロールも他メーカーで採用が進んでいる前車追従機能だったら。スクリーンはボルト留めだが、工具なしでのアジャストを希望。純正装着はダンロップ・ロードスポーツ2だが、タイヤの基本性能がもう少し高ければ……。
スズキ GSX-S1000GXの足着き、ライディングポジション(参考)
*テスト車は海外仕様でシート高845mm、日本仕様はシート高830mm。ライダーの身長は165cm


ネイキッドのGSX-S1000はもとより、スポーツツアラー・GSX-S1000GTに対してもよりアップライトでリラックスしたライディングポジション。ハンドル切れ角はやや少ないながら、Uターンなどでも外腕が伸び切りにくい設定。
シート高は高く、足着きが良いとは言えないが、これは快適性や運動性、ひいてはマシンのキャラクターに関連するだけに致し方ないところ。
スズキ GSX-S1000GX主要諸元(日本仕様)
【エンジン・性能】
種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク73.4×59.0mm 総排気量:998cc 最高出力:110kW(150ps)/1万1000rpm 最大トルク105Nm(10.7kgm)/9250rpm 燃料タンク容量:19L 変速機:6段リターン
【寸法・重量】
全長:2150 全幅:925 全高:1350 ホイールベース:1470 シート高:830 最低地上高:155(各mm) 車両重量:232kg タイヤサイズ:F120/70ZR17 R190/50ZR17
【価格】
199万1000円
【車体色】
トリトンブルーメタリック、グラススパークルブラック、パールマットシャドーグリーン



スズキ GSX-S1000GXの機能・装備

ヘッドライトは上下2灯のLED。写真はハイビーム時で、ロービーム時は上側のみが点灯する。両サイドにある鋭いライン状のLEDはポジションライト。

ウインドスクリーンは3段階の位置調整が可能。最低位置と最高位置では43mm高さが変わる。防風性能はフロントカウルやナックルカバーと併せて、風洞実験によって磨き上げられたものだ。

6.5インチフルカラー液晶メーターを採用し「SUZUKI mySPIN」をインストールしたスマートフォンと接続すれば地図(ナビ機能はサードパーティ製アプリが必要)などが表示できる。メーター左側面にはスマホ充電に便利なUSBソケットを装備。

メーターは自動で背景が黒の「ナイトモード」に切り替わる(任意での切り替えも可能)。

写真は日本仕様のシート。スポーティなデザインと長距離走行時の快適性を両立しているほか、グリップの高いシート表皮を採用しライディングポジションの自由度を高めている。タンデムシートも十分な快適性を確保するため、形状、クッション厚などを徹底的にこだわったという。
レポート●鈴木大五郎 写真●スズキ 編集●上野茂岐
スズキ
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