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ヤマハ YZF-R125、MT-125、XSR125試乗「ターゲットは若者らしいけど、オジサン世代はどのモデルが楽しめる?」

YZF-R125 MT-125 XSR125

原付二種=125ccクラスに力を入れるヤマハ「新型車を3車投入」

近年、自動二輪の免許取得者数が増加傾向にあるという。警察庁免許統計によれば、2017年を底にして国内の大型+普通自動二輪の免許交付数が2022年は+31%で約30万件。そんな状況下、50cc超〜125cc以下の原付二種クラスの販売台数は堅調に推移しており、こちらも2017年の約9万台を底に2021年は約12万台まで増加(日本自動車工業会調べ)。2022年は約10万台にとどまったが、まだまだこのクラスは需要を創出できるクラスというのがヤマハの考えだ。

「250ccクラスは価格が高くならざるを得ず、新車の乗り出し価格で70~75万円くらいが相場。免許取得代や装備費用など諸々を含めたら90~100万円近い費用になって、大学生や新社会人がエントリーしにくい。そういう意味で、手頃な価格や維持の面でメリットの大きい125ccクラスを充実させていきたい」という。
そしてヤマハはスーパースポーツのYZF-R125を2023年10月16日に発売。次いでネイキッドのMT-125を11月10日に、ネオレトロ系スポーツのXSR125を12月8日に発売し、125ccスポーツモデル3車をラインアップに加えた。

ヤマハはこうした125ccの展開に際し、具体的な訴求ターゲットとして「20歳・男子大学生」を設定。今後の意欲的な購買力を期待でき、エントリーしてもらいやすい層として狙いは間違っていないだろう。だがそこに限定するわけではなく、より幅広い層に乗りやすいクラスとして女性ライダーや年配世代にも乗ってほしいようだ。

MT-125、YZF-R125、XSR125の3車はエンジン・フレームを共用する兄弟車と言えるが、50代のオジサン的観点(筆者のことである)ではどのモデルが刺さるだろうか。ヤマハが千葉県の茂原ツインサーキットで開催した報道陣向け試乗会に参加し、各車のキャラクターを分析してみた。

左からYZF-R125、MT-125、XSR125。3車ともエンジンとメインフレームを共有する。

MT-125は「軽快かつ機敏なハンドリング、ライポジは窮屈感無し」

1000ccから250ccまで展開されてきたスポーツネイキッド・MTシリーズだが、MT-125はその最小排気量モデルとなる。排気量が上のモデルと同様、プロジェクターヘッドランプが独特なフロントフォルムから短くシェイプされたテールまで、MTシリーズ共通のイメージを継承している。
またがった印象は、すっきりとしたハンドル周りが軽快な取り回しを感じさせるが、昨今の小排気量モデルはけっこうボリュームのある車格にしているなと感じる。
MT-125、XSR125、YZF-R125はインドネシアで生産されるが、東南アジア圏でこの排気量帯のスポーツモデル(特に共通の車体の155cc系のほうが該当)は上級車的な位置づけとなり、相応に立派な車格を求められること。また、混合交通の中で自車の存在感(被視認性)を高めるためと走破性の向上も含め、ミニマム・コンパクトな作りにしていないことなどが背景にあるのだろう。

筆者は少し前にスズキ ジクサー150にも試乗したが、MT-125も似たような車格で、軽快ながらも小排気量車の小さいゆえの引け目や怖さを感じない大きさだ。ストリートファイター系ネイキッドでお決まりの前傾斜のついたシート座面も違和感がなく、適度なハンドル幅とステップ、シートの関係も身長173cmの体格で適正に感じた。またタンクは相応にボリュームがあり、適切にホールドできる安心感がある。シート高は810mmで、両足接地でカカトが少し浮く程度だから不安感も無い。

ヤマハ MT-125:2023年11月10日発売、価格は49万5000円

最高出力15馬力の水冷単気筒エンジンは、相応に軽い回転感ながらすごくシャープというわけでもない。時代的な傾向か、ロングストローク型のエンジンは好燃費と低中速トルクをねらった特性かもしれないが、走り出してみればごく軽い鼓動感をともないつつ滑らかに回転上昇していきあまり存在感を主張しない。
ただし、7400rpm付近を境に吸気側カムが低速向けから中高速向けへ切り替わるVVA(Variable Valve Actuation:可変バルブ機構)の恩恵で高回転まで回り切る感覚はあり、その切り替わり感も自然な印象だった。

ショートコースのサーキットで使うギヤは3速を中心にヘアピン手前で時に2速へ落とし、最後のコーナーからは3速、ホームストレートの途中まで引っ張り4速に入れるという繰り返しだが、ストレートから1コーナー前の時点で速度計は70km/h+α。125ccスポーツモデルに乗るのは久びさで、現代の125ccとしてこれが速いのかどうか定かではないが、街中ならばクルマの流れをリードするのに不便のない加速感だろう。

シフトタッチは軽いながらも節度のあるもので、違和感もないからいい操作感なのだろう。
「~だろう」という表現は試乗レポートではよろしくないあいまいな評価だが、サーキットでは回転の上下やシフトの操作がせわしく、エンジン特性などの把握が正直難しい……。ただし、このMT-125やYZF-R125、XSR125が共通で搭載する水冷単気筒はエンジン自体の主張は強くなく、さらっと回るエンジンなのだろう。
わかったのは、基本的にフラットなトルク特性で、最高出力を発生する1万rpmまでストレスなく回り切ること。クセや違和感がなく扱いやすい。

ハンドリングは軽快で機敏な印象だった。比較的スイングアームが短い小排気量車の常で、アクセルのオンオフでトラクションが掛かる実感は乏しいものの、軽快にコーナーを流すには不満がない。純正装着タイヤはIRC製RX-01で、サーキット走行では路面の情報がたっぷり伝わってくるグリップ感はなかったが、MT-125のハンドリングの切り返しの軽快さはよく感じられるものだったし、ブレーキは扱いやすく必要十分な制動力を発揮。自然なライディングポジションも含め、街中をスイスイと泳ぐように走るのにうってつけのマシンと言えそうだ。

MT-125の機能&装備

MT-125のコンセプトは「The most AGILE youngest MT」で、意訳すれば「最も若々しく機敏なMT」といったところだろうか。3車共通の124cc水冷単気筒OHC4バルブエンジンを搭載し、アシスト&スリッパークラッチ、トラクションコントロールを採用。
リヤフレームは後端部をショートにした専用設計とし、凝縮感をねらったフォルムを形作る。フロントにインナーチューブ径37mmの倒立式フォーク、リヤはリンク式モノクロスサス+アルミ鋳造スイングアームの足まわりはMT-125、YZF-R125、XSR125共通の仕様。
凝縮感のあるコンパクトなLEDプロジェクターヘッドランプ、その上部にLEDポジションランプを配置するフロント周り。生き物の目を連想させるデザインで、被視認性も良好。
コンパクトなモノクロの液晶メーターは、バーグラフの回転計、速度計、燃料計、ギヤポジションを大きく表示。そのほか、オド、トリップ、時計などを切り替えで表示できる。
ストリートファイター系ネイキッドらしい、テール部の短い前後一体型シート。前側座面はやや前傾しているが特に違和感はなく、つながりのよいタンクホールド部も併せて、「前乗り」でフィットする造形だ。

YZF-R125「なんちゃってではない、スーパースポーツらしい前傾ポジション」

ヤマハ YZF-R125:2023年10月16日発売、価格は51万7000円

これまで1000ccから250ccまでをラインアップしてきたヤマハのスーパースポーツ・YZF-Rシリーズだが、その最小排気量版として追加されたYZF-R125。先に乗ったMT-125と同じ理由で車格は相応に立派なものだ。
250ccクラスのスーパースポーツと比べても遜色のないサイズだが、正直に言おう。小排気量のこうしたスーパースポーツは苦手だ。何より、50代のオッサンが乗っても様にならないという先入観があるし、前傾の強いレーシーな車体でしゃかりきに走らねばならないなんて想像が働いて気乗りしないからだ。

スーパースポーツの中では、極度に強い前傾姿勢というわけではないだろうが、またがると前方は上目遣いで見る感じ。こういうスタイルのモデルに乗るのは5年ぶりくらいで、ちょっと慣れない。
しかし、タンクは相応のボリュームでホールドがしやすく、また3車中シート高の数値は一番高いものの(815mm)、絞り込まれたシート形状のせいで足が一番下ろしやすい。ミッション内から後輪スプロケットまで、変速レシオがほかの2台と共通なエンジンは、動力的な基本特性や走り味もよく似ている。

異なるのは前述した乗車姿勢で、ハンドルは上体を前傾して自然と手を伸ばした位置にはあるものの、クリップオンハンドルは絞り角が割と強めで左右幅が狭く、バーエンドがやや下がり気味な印象。ステップ位置は適正でシートとの位置関係も違和感ないものの、このハンドル位置がファーストタッチで窮屈に感じ、久びさのスーパースポーツの操作をぎこちなくさせる。
そのうち慣れてくるだろうかと思いつつサーキットを走り出したが、MT-125でエンジン特性に慣れていたせいかシフト操作での不安はなくなっていた。あとはスーパースポーツ的車体と格闘しつつ慣れていくのみと周回を重ねてみた。

すると車体の切り返しもシャープで、足元でステッププレートをホールドし、シートから腰をずらして内側に身体を入れる動作ともにすっぱりと決まる。さすがスーパースポーツのライディングポジションと思ったものの、普段使わない筋肉を動かしたせいで何周も走ると身体が音を上げ始める。
ただし、ショートサーキットでの箱庭的な走りの楽しさで熱くなれるものがあり、その面でYZF-R125が最も具合がいいのは間違いない。しかし、125ccなりのトルクでシフトダウンのすぼらを許さないエンジンのため、あと少しパワーが欲しく感じたのが正直なところだった。

YZF-R125の機能&装備

「Realize R Spirits」をコンセプトにしたYZF-R125。空力特性に優れたカウル、M字ダクト、細い2灯ポジションライトなどYZF-Rシリーズの特徴を継承。アシスト&スリッパークラッチ、トラクションコントロールを採用するほか、クイックシフターをオプションで用意。
スチール製のデルタボックスフレームほか、左右ピボットの軸間を209mmとワイドにし、強化部材を織り込んだ車体も3車共通。一方、燃料タンクは専用で11L、3車中で一番容量が多い。
M字ダクトの奥に配置される特徴的なヘッドライトは、ハイ・ローをひとつのLEDで切り替える「バイファンクションLED」。その左右にあるのがポジションライト。
YZF-R1のイメージを継承した液晶メーターは、中央にバーグラフ式回転計と速度計を大きく表示。表示モードをストリートとトラックに切り替え可能。写真はトラックモードで回転計が6000rpm〜となるほか、ラップタイマーが使用できる。
スリムに絞り込まれたフロントシートはスポーツ性重視で左右への体重移動がしやすい。リヤシートはキー操作で外すことができ、シート下にはわずかながら収納スペースがある。

XSR125「スポーティにものんびりも走れ、汎用性の高さが魅力」

ヤマハ XSR125:2023年12月8日発売、価格は50万6000円

走りのやる気を感じさせる仕様の2台に対し、新しさとレトロなおしゃれ感を融合した印象なのがXSR125だ。こちらも排気量が上のモデル、XSR900やXSR700のスタイルを継承したものだが、どこか長さの詰まった凝縮感や丸みのある各部パーツによって愛らしさも感じる。そういう意味では、コアターゲットという20歳の男子大学生のみならず、女性からも支持されそうなスタイルだと思う。

またがると、ハンドル位置はMT-125と同程度の高さだが幅は広め。シートは自由度が高く前後の着座位置を体格なりに選べそうなものの、シート高がけっこう高い。身長173cmの筆者でも両足接地ではカカトが半分くらい浮く。車重の重さに難儀することはないものの、ここが惜しいと思う。
自分の体格では問題ないレベルだが、150~160cm台の女性などは気を遣う高さだろう。並行輸入車として流通しているXSR155(XSR125と車体は共通)用としてアフターマーケット製ローダウンリンクキットがあるので、前側フロントフォークの突き出し量調整も含めて車体を低くする手もあるかもしれない。

この日の3機種目としてサーキットを走り出したXSR125は、確かに一番自由度の高いライディングポジションだ。ビシッと車体をホールドせずに街を流すような、リラックスした走りに向いている。3車の中では着座位置が一番後ろ乗りの印象で、位置が高めでワイドなハンドルバーは前輪荷重を高めて旋回するような走りには向いていないが、スポーツランにも対応しないわけではない。後乗りとはいえ車体は軽めのため、幅広なハンドルで舵角を付けて車体を倒し込んで旋回するのも造作ない。そして、このXSR125はその自由度の高い乗車姿勢から、ちょっとしたダート路面を走らせても面白いかもしれない。
パワー特性から減速比まで含めて、他の2台と共通のエンジンはフラットなトルク特性で、どんなシチュエーションにも対応するフレキシブルさを持っているからだ。

日常での街乗りから下道ツーリングまで、リラックスした姿勢で、疲れたらタラーっと走るのもいいし、気合を入れて飛ばせなくもない。そういう意味で最も汎用性の高いモデルがXSR125だ。この気軽さとゆったり感、サスペンションが意外と堅めで先鋭的な走りの印象が強いXSR900やXSR700と異なり、小さいながらも鷹揚な一面もあって気軽に付き合える1台という印象だった。

XSR125の機能&装備

「Arouse One’s Freedom」(自由さを呼び覚ませ)をコンセプトとするXSR125。バイクらしい普遍的なデザインでレトロさを醸し出しつつ、アルミ鋳造スイングアームやLED灯火類など最新のコンポーネントを融合。
XSR125はアシスト&スリッパークラッチのみの採用で、トラクションコントロールはついていない。純正装着タイヤはブロックパターンのIRC製トレールウィナーGP-211で、スクランブラー的な雰囲気も感じさせる。 
3車共通の124cc水冷単気筒OHC4バルブエンジンは性能も共通で、最高出力15ps/1万rpm、最大トルク1.2kgm/8000rpm。エンジン前部のラジエターは水温に応じて冷却水の循環経路を切り替える「バイパス式サーモスタット方式」で、暖気時間を短くして燃費性能向上に貢献。
レトロなデザインに似合う丸形液晶メーター。外周部がバーグラフ表示の回転計、中央に速度計というレイアウト。ギヤポジションや、燃料計も表示される。メーターの輝度がやや暗いのと、外周部が動くという点で、回転数を瞬時に把握しづらい面もあった。
タックロールのシートは着座ポイントの自由度が高いフラットな形状。ライトブルーの車体色はシートの色がブラウンとなるが、その他の車体色ではブラックになる。
アルミ鋳造のスイングアームとリンク式モノショックという組合せのリヤサス方式は3車とも共通。リヤスプロケット52Tサイズも共通のため、トータルの減速比も同様となる。

レポート●阪本一史 写真●山内潤也

ヤマハ新型125ccスポーツ「MT-125、YZF-R125、XSR125」のスペック&外観写真を見る

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