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イタリア『フィエラミラノ』ではじまったEICMA 2023(ミラノショー)。世界最大級の二輪モーターショーは2日目を迎え、世界中の報道陣のほかにも大勢の来場者が押し寄せた。初日のレポートでは日本メーカーをクローズアップしたが、今回のレポートでは海外主要メーカーの注目モデルを紹介する。どんな順番にするか少し迷ったが、ブランドのアルファベット順で紹介しきたい。
アプリリア:457ccの2気筒スーパースポーツ「RS457」実車を初披露
ピアッジオ、ベスパ、モトグッツィ、アプリリアの4ブランドを擁するイタリアの巨大企業だけあってブースも広く、どのブランドにもたくさんの来場者が訪れた。ブースにはサーキットのコーナーを模したポイントにフルバンク中のRS660が置かれ、華麗にコーナリングしていくだけでなく、なかには転倒シーンを演じる陽気な人も。
ブランニューモデル「RS457」は、RS125とRS660の中間を埋めるミドルスーパースポーツだ。マシンの存在は2023年9月に発表されていたが、実車の公開展示はこれが初。47psを発生する457cc水冷並列2気筒をアルミフレームに搭載。装備重量174kgという軽量フルカウルスポーツで、ミドルクラススポーツは激戦区の様相を呈してきた。
ビモータ:スーパーチャージャー搭載のクロスオーバー車「テラ」初公開
ブースには赤いベールで覆われた2台のマシンの姿があり、プレスカンファレンスで明かされたその中身は「テラ」。エンジンはカワサキ ニンジャH2系の998cc水冷並列4気筒スーパーチャージドエンジンを搭載する、アップライトなクロスツアラーだ。
フロントサスペンションはビモータならではのハブステアリングだが、ステアリングヘッドの下部あたりからリンクが伸びている点がこれまでのビモータとは異なる点だ。また仕様が異なる2グレードがあり、リヤサスペンションにマルゾッキ製セミアクティブサスペンションが装着するモデルと、オーリンズ製TTX36を装着するモデルが公開された。
ドゥカティ:659cc水冷単気筒「ハイパーモタード698」を実車初展示
『ドゥカティ・ワールド・プレミア2024』と題してニューモデル群を発表してきたドゥカティは、全7エピソードのうちエピソード6までをYou Tubeで公開済み。
そのエピソード6で発表したまったくのブランニューモデル「ハイパーモタード698モノ」がEICMAで初展示となった。
Lツインエンジンスーパースポーツ「1299パニガーレ」のテクノロジーをフィードバックしたパワフルな659cc水冷シングルエンジンを搭載し、テールスライドを楽しめるトラクションコントロールなどの電子制御デバイスによって、サーキットでの新たなファンライドをもたらす次世代ドゥカティだ。
ハーレーダビッドソン(ヒーロー):インド市場向けの440cc単気筒スクランブラーを発見!
今年のEICMAではBMWとハーレーダビッドソンのブース出展が見送られている。しかしEICMA会場内をくまなく探索していると、ヒーロー(インドの二輪メーカー)のブースで小さなハーレーを発見!
「X440」は、440cc空油冷単気筒エンジンを搭載するストリートスクランブラーだ。最高出力は27ps/6000rpm、最大トルクは38Nm/4000rpm。LEDヘッドライトに倒立フォークを装備し、丸型TFTメーターはコネクト機能つき。インドではすでに発売中で、わずか1日で2万5000台もの注文が入ったという。グローバルモデルなので順次販売地域を拡大していくとのことだ。
ハスクバーナ:701スーパーモトのニューカラーに注目
KTMのオレンジ、ガスガスの赤、MVアグスタの黒と隣接するなか(KTMグループとしてまとまっている)、白のブースで明るい空間を演出していたハスクバーナ。「701スーパーモト」はつや消しグレーの車体色にカモ柄が加わり、ポップな印象に。電動キッズバイクも展示されていた。
イタルジェット:スポーツスクーター「ドラッグスター」に大排気量モデル追加
トレリスフレームと片持ち式フロントサスペンション機構を持つ、独特のスポーツスクーター「ドラッグスター」は、125ccと200ccの水冷単気筒エンジンが揃っているが、278cc水冷単気筒の「ドラッグスター300」が新たに加わるようだ。最高出力は23.8ps/8250rpmで、前後ブレーキはブレンボを装着する。
そしてさらにモンスター級の「ドラッグスター559ツイン」も発表された。550cc水冷2気筒エンジンは58.33ps/8500rpmを発生し、A2免許バージョンも用意される。フロントサスペンションは48mm倒立フォークとなる。数値は発表されていないが、見るからに長いホイールベースがいったいどんなハンドリングを実現しているのか興味を引かれるスポーツスクーターだ。
カブト:ヨーロッパでも着実に市場を拡大中
海外メーカー編と言っておきながら、前日訪問できなかった「Kabuto」のブースへ行ってきた。MotoGPライダーのアレイシ・エスパルガロ選手と2023年から3年契約を結び、最高峰レースで彼を支えているカブト。そのフラッグシップモデル「F17」の発売を控えているが、エスパルガロ選手の活躍とともに、ヨーロッパのライダーたちのなかでカブトの認知度と支持も高まっているそうだ。
KTM:並列2気筒の「990デューク」が登場
かつてKTMの990といえば、スーパーデュークやスーパーアドベンチャーの排気量だったが、ついに時代は「無印デューク」が990の名を継承。
「990デューク」は、最高出力123psを誇る947cc水冷並列2気筒「LC8c」エンジンを搭載。このエンジンは890デュークRの進化系で、排気量拡大とともにピストン、コネクティングロッド、クランクシャフトを新設計し、車重は179kg(ガソリン除く)。ヘッドライトからクリアカバーがなくなり、これまで以上に独特のフェイスを作り出している。
モトグッツィ:水冷エンジンの新型アドベンチャー「ステルビオ」発表
2022年にデビューした新型水冷V型2気筒エンジンの第2弾モデルが登場する。「ステルビオ」は、モトグッツィ本社から2時間ほどのアルプスにある峠の名で、周辺国のバイクや自転車乗りの間ではもっとも有名なツーリングスポットだ。
かつて空冷Vツインを搭載したステルビオが生産中止となって以来の車名復活で、アドベンチャーツアラー市場に一石を投じる。
また、空冷Vツインエンジン搭載の「V85TT」がアップデートされ、パニアケースの質感アップや可変スクリーンなどで快適性が向上。さらにエンジンはユーロ5対応とすると同時に76psから80psへ高まった。
MVアグスタ:創立80周年記念車や限定モデルを展示
2023年10月に発表された、MVアグスタ創立80周年記念モデル「スーパーヴェローチェ98エディツィオーネ・リミタータ」がそのモチーフである1945年製「MV98」と並べて展示され、MVアグスタの歴史と伝統を体現。
また、300台限定で発売となる「ドラッグスターRR SCS アメリカ スペシャルエディション」のほか、2022年に発表された「スーパーヴェローチェ1000セリエオロ」のほか、MVアグスタならではのスペシャルなモデルがずらりと並んだ。
ピアッジオ:日常に寄り添う運搬ロボットを販売しているの、知っていますか?
ベスパ、アプリリア、モトグッツィを束ねるピアッジオは、スクーターを展示しただけでなく、アメリカを拠点とする「ピアッジオ・ファスト・フォワード」(PFF)を運営している。PFFはオーナーの徒歩移動に追従する運搬ロボット「ギータ」をアメリカ東海岸エリアで販売中。毎日の買い物や荷物の多い移動の際に便利で、生活を快適にしてくれる。最高速度は約15km/hだからジョギングにもついてくる走行性能を持っているそうで、ある程度の段差を越えることも可能だ。
ロイヤルエンフィールド:同社初の水冷エンジンを搭載したアドベンチャー「ヒマラヤ452」初披露
新開発の最新エンジンを搭載してモデルチェンジした「ヒマラヤ452」が、初日のプレスカンファレンスでアンベールされた。452cc単気筒エンジンは、ロイヤルエンフィールド初の水冷で、最高出力は40ps/8000rpm。標高5000mでも安定した出力を確保しており、スロットルはライドバイワイヤ、6段トランスミッションが組み合わされる。
車体面は前21インチ・後ろ17インチホイールに、カートリッジ式倒立フォークを採用。サスペンションストロークは前後ともに200mmを確保した本格アドベンチャーツアラーだ。
フルLEDヘッドライト、スマートフォンとの連携機能を持つ4インチ丸型TFTメーターなど装備も現代的。
またブースにはアメリカなどのカスタムビルダーが製作したロイヤルエンフィールドも展示され、英国生まれインド育ちの伝統的メーカーは新たなステージを走りはじめたことを強くアピールした。
ツアラテック:BMWの最新モデル「R1300GS」を旅仕様にして展示
ツアラテックはおもにBMW GSのパーツ、アクセサリーを開発・販売しているメーカーで、車両開発と同時にパーツ開発に携わるほどBMWから厚い信頼を受けている。前述したように今回のEICMAではBMWが不参加だったが、ツアラテックのブースには先日発表されたばかりのR1300GSがあり、しかもツアラテックのパーツやアクセサリーを装着した状態で展示されていた。これはちょっとしたサプライズだ。
R1300GSはコンチネンタルのブースにも展示されており、めざといBMWファンがR1300GSをじっくりと眺めていた。
トライアンフ:新型タイガー900シリーズやスラクストン最終モデルを実車展示
2気筒シリーズ、3気筒シリーズも順調なトライアンフは、先だって発表したタイガー900シリーズのニューモデルのほか、ボンネビル系スポーツモデル「スラクストンRS」をベースとする最終進化系「スラクストン ファイナルエディション(FE)」が展示された。イギリス車らしい深い緑色のタンクが美しいスラクストンFEは、2024年春に日本に導入予定となっている。
ベスパ:プリマベーラとスプリントSのマイナーチェンジ車を展示
イタリアの伝統的スクーター「ベスパ」は、ピアッジオグループとしてモトグッツィやアプリリアと隣接するブースを展開。ひときわ華やかで繊細なボディカラーでEICMAを彩った。プリマベーラとスプリントSのエンジンはユーロ5対応となり、ハンドルバー上部の構造や素材を刷新し、質感を高めている。
レポート&写真●山下 剛 編集●上野茂岐