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伝統の「ブリット」を冠した最新350ccモデル
ロイヤルエンフィールドが新型車「ブリット350(サンゴーマル)」を発売した。長い歴史を持つヘリテイジモデルが、遂に人気の最新350シリーズの4番目として加わったのだ。
インド南東部の街、チェンナイにあるロイヤルエンフィールド(以下RE)の工場で発表された新型ブリット350は、Jシリーズエンジンと呼ばれる排気量349ccの空冷単気筒OHC2バルブエンジンを搭載している。このエンジンは2020年にリリースされたクルーザーモデル、メテオ350に初搭載され、以降クラシックスタイルのクラシック350、ネイキッドスタイルのハンター350にも搭載。この3モデルはフレームの基本構造も共有し、日本におけるREブランドを一気に高めたことでも知られている。
新型ブリット350も、Jシリーズエンジンとともにフレームも共有。特にクラシック350とは多くのパーツを共有している。元来、クラシックシリーズはブリットシリーズの派生モデル。日本ではクラシック350が先に知名度を高めたために両モデルの関係が曖昧ではあるが、その類似性は必然なのだ。
初代ブリットから続く90年の歴史
■新型ブリット350(上)と1952年型ブリット350(下)。初代ブリットは前傾エンジンなどを採用していたが、1940年代後半には、新型ブリットに続くスタイルが完成している。なお、この1952年型ブリット350は、インド人オーナーが40年間所有していたもの。
そもそもREにとってブリットシリーズは、REブランドを世界中に、特にインドを拠点としてからはインド全土に、知らしめてきたモデルだ。初代ブリットがリリースされたのは1933年。250/350/500ccモデルがラインアップされた。当時は単気筒のフラッグシップモデルで、デビュー後すぐにマン島TTやISDT(インターナショナル・シックスデイ・トライアル)などで活躍。時を重ね、進化を続けながらもレースシーンで活躍した。
また同時に、その高い走行性能から、アドベンチャーモデルとして大陸横断など世界各国で冒険の旅の相棒としても好まれた。インドでは、英国REが健在だった1955年からブリットシリーズのCKD(コンプリート・ノック・ダウン)モデルの生産がスタート。
以来、インドでブリットシリーズの製造および販売が現在まで続き、そのバトンが新型ブリット350へと引き継がれたことから、ブリットは90年に以上にわたって製造され続けている世界最古のモデルとなったのである。
新規メカニズムで味わえる旧車感覚
そんな新型ブリット350に、短時間ながら試乗した。
簡単に言えば、乗り味が良い。爆発の角が取れたような発進時の鼓動感と、少し軽いフロント周りのフィーリングは、古いブリットシリーズをはじめとする単気筒旧車のようだった。Jシリーズエンジンは2020年に市場投入された新規開発エンジンだが、最新エンジン&フレームの組み合わせでこのフィーリングが味わえるのは、なかなか得難い存在だと感じる。
そして、その見た目とは裏腹に、クラシック350とは走行フィーリングが異なる。具体的には、エンジンの爆発感が穏やかでハンドリングも軽快。それによってクラシックバイク感が強まっていたのだ。ブリットらしい一体型段付きダブルシートによって、ほんの少し腰高なライディングポジションになっていたものの、エンジン周りや車体周りは、両車まったく同じなのに……。
時期は未定ながら日本入荷も決定したところなので、今度は日本国内でまたしっかりその違いを吟味したいが、ブリットシリーズが長くラインアップしてきたブリット500の最新モデルにも乗ってみたくなってきた。空冷・FIを前提に、最新のテクノロジーと素材を使ってREブランドが作る空冷単気筒500㏄エンジンを搭載した車両も、間違いなく楽しいだろうからだ。
■ハロゲンタイプ・ヘッドライトとそのカバーを兼ねるヘッドライトナセルは、クラシック350と共有。ナセルには中央上部のアナログスピードメーターと下段の液晶デジタルディプレイを配置。下段左にイグニッションスイッチが収まる。
■前後一体型の段付きダブルシートと、それに合わせたショートフェンダーはブリット専用の装備。
■エンジン周りは、エンジン自体に加え、吸排気系やFIのマッピングもクラシック350と共通だという。しかしアイドリング時のブリット350の排気音はわずかに優しく、乗り味も異なる。
■19インチの前輪は、41mm径フロントフォークと300mm径シングルディスクの組み合わせ。撮影車の装着タイヤはインド製CEAT(シアット)のZOOM PLUSで100/90サイズ。
■18インチの後輪は、ブレーキがディスク仕様で270mm径サイズ、ドラム仕様も存在。タイヤは120/80サイズだが、ホイールサイズやブレーキ周りの装備もクラシック350と共通。
■ブリット350のシート高はクラシック350と同じく805mmだが、シート形状の違いからブリットのほうがやや腰高に感じられる。ハンドルがやや手前に引かれ、グリップ位置がやや低めであることもその印象を助長している。テスターは身長170cm、体重65kg。
インド国内でリリースされた3つのエディション
日本に入荷するのが、どの仕様のブリットかはまだ発表されていないが、インド国内でのブリット350は、3つの仕様が用意された。
■「ブラックゴールド」カラーで、マット&グロスブラックのタンク、カッパー&ゴールドの3Dバッジ、カッパーのピンストライプで装飾。エンジンは流行のブラックアウト仕上げ。ブレーキはデュアルチャンネルABSとリヤディスクを装備。
■「スタンダード」と称される「ブラック」「マルーン」カラーの2種類で、外装にハンドピンストライプを施し、クロームどゴールドのバッジをあしらった仕様。デュアルチャンネルABSとリヤディスクブレーキを装備。
■ソリッドカラーとデカールの塗布で仕上げられた「ミリタリーレッド」と「ミリタリーブラック」カラーの2種類。ブレーキはシングルチャンネルABSとリヤドラムブレーキを装備。
●BULLET350主要諸元(インド仕様)
【エンジン・性能】種類:空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア×ストローク:72×85.8mm 総排気量:349cm3 最高出力:14.9kW<20.2ps>/6100rpm 最大トルク:27Nm<2.8kgf・m>/4000rpm 燃料タンク容量:13L 変速機:5段リターン 【寸法・重量】全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:── シート高:805(各mm) 車両重量:185kg タイヤサイズ:(F)100/90-19 (R)120/80-18 【カラー】ブラック×ゴールド、スタンダードブラック、スタンダードマルーン、ミリタリーブラック、ミリタリーレッド
インド現地価格●約30万7300円~約38万2100円
国内発売日●未定
試乗レポート●河野正士 写真●ロイヤルエンフィールド まとめ●阪本一史
ピーシーアイ株式会社(ロイヤルエンフィールド日本正規輸入総代理店)
https://www.royalenfield-tokyoshowroom.jp/index.html
ロイヤルエンフィールド(本国サイト)
https://www.royalenfield.com/in/en/home/