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【試乗レポート】ヤマハ YZF-R25は「スポーツ、旅、普段使いをフルカバーできる万能250ccマシンだった!」

YZF-R25 2023 ヤマハ パープル

2023年モデルはトレンドカラーのパープルを採用

日本市場には2014年12月から導入されているヤマハのYZF-R25は、スチール製フレームに249cc水冷並列2気筒エンジンを搭載した軽二輪スーパースポーツ。2019年3月には初のマイナーチェンジが施されて、世界最高峰ロードレースのMotoGPに参戦するマシン「YZR-M1」を意識した新デザイン、倒立フロントフォークやフル液晶メーター、LEDヘッドライトなどが新採用された。
さらに2022年5月にも熟成が施されて、35馬力の最高出力と2.3kgmの最大トルクを維持しながら最新排ガス規制に適合。前後ウインカーがLED仕様となり、シフトアップのみに対応するクイックシフターが純正アクセサリーに設定された。

そして2023年モデルでは、ブルーとブラックの車体色を継続する一方で(従来型から配色は変更)、これまでにない新鮮なトレンドカラーをチョイスしたパープルを設定。こちらは、ピンク&ホワイトのグラフィックでスポーティな雰囲気もプラスしつつ、上質な雰囲気が演出されている。
ちなみに、ヤマハらしいブルーは比較的落ち着いた色味と配色で、ブラックはソリッドカラー。スーパースポーツ系ながら派手すぎないカラーリングを選べるのもYZF-R25の魅力だ。

2023年のニューカラーはパープルで、正式には「ダークブルーイッシュパープルメタリック3」という車体色名。
ヤマハMotoGPマシンのYZR-M1を思わせる、M字型ダクトがあしらわれたフロントカウル。ダクトは、走行風をラジエターに送り込み冷却性能を高める役割を担っている。
レイヤード構造のカウルが、整流効果を高めるだけでなく質感向上にも貢献。サイドカウルには、小さなウイングも標準装備する。

ギヤチェンジの楽しさをたっぷりと

またがると、車体はとてもコンパクト。二輪免許を取得したばかりのエントリーライダーや小柄な女性ライダーでも、プレッシャーを感じづらいはずだ。車重は169kgで、250ccクラスの平均的なレベルにあり、サイドスタンドから引き起こすのも軽い。身長167cm/体重65kgの筆者がシート最前部にまたがると、両足の母趾球が接地し、ややカカトが浮く状態。かつて身長153cmの小柄な女性ライダーがYZF-R25に乗る撮影に同行したこともあるが、彼女もなんら不安なく操っていた。

クラッチレバーを握るのに必要とされる力は少なく、スッとつないでパッと発進できる。250ccクラスなので極低回転域のトルクは薄めだが、とはいえスロットルを大げさにあおる必要もない。エンジンは、タコメーターのレッドゾーンが1万4000回転からという高回転型だが、のんびり走るなら4000回転くらいでも十分に使える。

6速で4000回転だと車速は60km/hくらい。つまり、一般道でもトップギヤを使えることになる。これは、例えばリッタークラスのスーパースポーツにはまずない魅力だ。「モーターサイクルを操縦する楽しさ」につながる要素は多岐にわたるが、そのひとつは「マニュアル操作によるギヤチェンジ」。とくにエントリーライダーは、これを強く感じる傾向にあるようだが、YZF-R25はそんな「楽しさ」を味わえる回数が多いバイクと考えることもできるかも!?

燃料タンクおよび樹脂製の燃料タンクカバーは、サーキット走行時の運動性能も考慮。ストレートでの伏せやすさや旋回時のホールド性も高められている。
シートは前後セパレートタイプ。ライダー側シートの前方は、足着き性を高めるためスリムな形状となっているほか、角も落とされている。
スポーツライディング時のホールド性を考慮したステップバーを採用。ヒールガードに肉抜き加工が施されているのが、YZF-R3(320cc)と異なるポイントのひとつ。

スポーティに走らせても安心感が高い

そのスタイリングからも想像できるように、YZF-R25はスポーティに走るのも得意だ。とはいえそのフィーリングは、いい意味で尖りすぎておらず、気難しさを感じさせない。車重の軽さや大型クラスと比べて細い前後タイヤなどの恩恵により倒し込みは軽いが、フロントからグイグイ曲がっていくようなタイプではなく、スロットルを開けながらコーナーを立ち上がる段階で、リヤタイヤにトラクションをかけてギュインと旋回していくイメージ。このときフロントタイヤからは適度な接地感が伝わってきて、安心して操れる。

公道での常識的な範囲内でのスポーティなライディングでは、生粋のスーパースポーツというよりはスポーツツアラーの雰囲気があり、クイックすぎない性格でとても操りやすい。もちろん、サーキットで走らせればよりスーパースポーツ的な要素も見つかるだろうが、このバイクを所有するほとんどのユーザーは、公道のみでライディングを楽しむと思うので、イージーにスポーティな雰囲気を楽しめるこのパッケージは魅力と感じられるに違いない。

フロントブレーキはシングルディスク式で、キャリパーはベーシックな片押し2ポットのアキシャルタイプ。前後輪ともにABSを備える。
リヤブレーキキャリパーはシングルピストン。純正装着タイヤはIRCのバイアスタイヤ「RX-01」で、タイヤサイズはフロント110/70-17、リヤ140/70-17(なおYZF-R3はタイヤサイズは同じだが、ラジアルタイヤを採用する)。

エンジンは回転数で馬力を稼ぐタイプだが、公道で不足感は無し

搭載されている249cc水冷並列2気筒エンジンは、レブリミットが約1万4000回転に設定され、高回転まで引っ張ることで馬力を生み出すような仕様。1速では67km/h、2速では94km/h、3速では122km/hでレブリミットに達した。最大トルクを発揮する1万回転から上の領域でやや力強さが増す印象とはいえ、全体的には山や谷がなくフラットに回転が伸び、これまた扱いやすさに優れている。
ちなみに6速トップギヤでの巡航だと、100km/hで約7300回転、120km/hで約8600回転。100km/h巡航時なら、レブリミットに対して約半分の回転数なので、だいぶ余裕がある。

ビッグバイクに乗り慣れた身だとさすがに物足りなさを感じる反面、公道ならこれで十分と思える加速性能。法定速度内でも高回転域を使用できるというのは、250ccならではの楽しさだ。
またこのシリーズには、ほぼ同じ車体で排気量が71cc増となるYZF-R3もある、こちらは最高出力が7馬力アップの42馬力でさらに余裕があるので、車検取得の必要性が気にならないのであれば、こちらを選択するのも悪くない。とはいえYZF-R25には、「回せる楽しさ」がよりたっぷりと備わっていて、軽二輪クラスならではの手軽さとあわせ、これは多くのライダーが魅力と感じるだろう。

メーターはスクエア型のモノクロ液晶で、バーグラフタイプの回転計に加え、速度や時刻、ギヤポジション、燃料計などの情報が見やすく配置される。瞬間燃費や平均燃費も表示可能だ。
フロントサスペンションはインナーチューブ径37mmの倒立フォーク。フロントまわりの高剛性化に貢献している。
リヤのモノクロスサスペンションは7段階にプリロード調整が可能。車載工具に調整用フックが含まれている。

「毎日使える」がまさにぴったり

YZF-R25は、「毎日乗れるスーパーバイク」をキャッチコピーとしているが、これはつまり、スーパースポーツが得意とするスポーティなライディングだけでなく、ツーリングや日常的な移動でも使いやすいという意味だろう。そして実際に、コンパクトで軽量な車体、扱いやすいエンジン性能やハンドリング特性は、長距離走行や市街地移動での扱いやすさを生み出している。スタイリングは生粋のスーパースポーツだが、YZF-R25は守備範囲が広いオールラウンダーである。

免許を取得して最初に乗るモデルとして、この長所はかなり魅力的。YZF-R25なら、モーターサイクルに乗る楽しさを存分に体感できる。もちろんベテランライダーが気軽に操れるモデルでもあるのだが、あらためて最新型に乗ってみて、モーターサイクルの「入り口」として適切なバイクだと感じた。


ヤマハ YZF-R25の足着き性&ライディングポジション

スーパースポーツらしい前傾姿勢のライディングポジション。腕の余分な力を抜いて走るためにも、骨盤を立てて座り、ニーグリップでカラダを支えることも意識しながら操りたい。足着き性に対する印象も悪くなく、両足の母趾球あたりまでは着く。ライダーは身長167kg、体重65kg。

ヤマハ YZF-R25主要諸元(2023年モデル)

[エンジン・性能]
種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:60.0mm×44.1mm 総排気量:249cc 最高出力:26kW<35ps>/1万2000rpm 最大トルク:23Nm<2.3kgf・m>/1万rpm 変速機:6段リターン WMTCモード燃費:25.8km/L

[寸法・重量]
全長:2090 全幅:730 全高:1140 ホイールベース:1380 シート高:780(各mm) 車両重量:169kg タイヤサイズ:F110/70-17/R140/70-17 燃料タンク容量:14L

[車体色]
ダークブルーイッシュパープルメタリック3(パープル)、ディープパープリッシュブルーメタリックC(ブルー)、ブラックメタリック12(ブラック)

[価格]
69万800円

購入は新車3年保証、1年間無料ロードサービス、全国店舗でサービスが共有されるなど、安心のYSP(ヤマハ モーターサイクル スポーツ プラザ)へ。
YSPは全国に74店舗を展開中(2023年5月時点)。
https://ysp-shop.com/

MotoGPマシン・YZR-M1、1000ccスーパースポーツ・YZF-R1のイメージを受け継いだデザイン。2023年モデルの新色パープルは、光の加減で鮮やかにも落ち着いた雰囲気にも表情を変える。
車体はメインパイプ径35mmのスチール製ダイヤモンドフレーム+スチール製スイングアームという構成。
ハンドルクラウン(トップブリッジ)もMotoGPマシンのYZR-M1をイメージさせるポイントで、肉抜き加工が施されたアルミ鋳造製だ。
デュアルヘッドライト、テールランプおよび前後ウインカーはすべてLED仕様。ハザード機能も備わっている。
タンデムシートの下にはわずかなスペースがあり、ETC車載器も収納可能(販売店などでの装着実績多数)。車載工具はタンデムシート裏側に固定されている。
スーパースポーツモデルなので、荷物の積載はそれほど考慮されていないが、タンデムステップ部は荷掛けフックとして活用できる構造になっている。

レポート●田宮 徹 写真●岡 拓 編集●上野茂岐

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