アドベンチャー(ADV)モデルの中にあって、やや中途半端な存在だった400X。
今回フロント19インチの装着を始め、細部にまで及ぶ仕様変更を施されことで、国内の道路事情により適した本来のADVモデルへと進化した。
その魅力をより幅広いフィールドで検証する。
report●廣瀬達也 photo●岡 拓
※本記事はMotorcyclist2019年7月号に掲載されていたものを再編集しています。
大変身を遂げたニュー400X
ADVモデルといえば排気量の大きな車種が目立っていることに、どこか不思議な印象を抱いていた。
というのもADVといえば〝未舗装路も走れるバイク〟というイメージを持っているからだ。
ところが大排気量車は当然ながら車格も大きくなるし車重も重くなってしまい、結果として路面状況の悪い未舗装路では持て余し、コントロールしきれない事態に遭遇しやすくなる。
だからADVとは、ロードスポーツに対しアップライトなライディングポジションゆえに〝よりツーリング、それもよりロングな楽しみ方に適したバイク〟という位置付けなのだろうと勝手に納得していたのかもしれない。
そんな中にあってホンダ400Xは特異な存在のバイクだった。
400㏄のエンジンは決して高速道路の巡航で著しく不満を感じさせることはなかったし、ゆったりしたライディングポジションはロングランでも疲れを感じにくかった。
しかし、それは〝未舗装路だって走れそう〟程度の印象を抱かせるだけで、乗り味はツーリング指向の強い、いわゆるADVモデルに過ぎなかったのである。
そんな400Xが大変身を遂げた。その大きな目玉がフロントの19インチ化だ。
タイヤはより大きな方が、段差などを乗り越えやすくなる。
オン&オフモデルが総じて大径のフロントタイヤを装着する理由はそこにある。
もちろんその大きさに限度はある。例えば21インチを装着し、それに合った設計の変更を行えば、未舗装路の走破性や安定性はより向上するだろう。
反対にその分だけオンロードでの安定性は損なわれるに違いない。
果たして現在の交通環境において未舗装路を走行する機会がどれだけあるだろうか?
400というADVモデルとしてみればメリットもある小さなエンジンではあるが、車格も車重も未舗装路を思い切り走るには少々大きい。
だが、未舗装路を快適に走破するなら、これほど頼りになる旅バイクも少ないだろう。
並列2気筒のエンジンは低中速域でも力強さを発揮する。
速さはさておき、それはロングランにも余裕を作り出してくれる。加えて20㎜大型化されたスクリーンやアシストスリッパークラッチは実に軽やかな操作性を発揮する。
ハンドル取り付け部の高さに大きな変更はないものの、ハンドルの形状がよりフラットになったことでいわゆる〝押さえ〟が利くようになったことも、未舗装路での扱いやすさがより容易になったと感じられる秘密のひとつだろう。
このカテゴリーの〝迷い子〟とも言える存在だった400Xだが、今度は 〝幅広いフィールドで遊べる、旅するバイク〟として、その魅力を明確に携えて再登場したのである。
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