フロント19インチのアドベンチャーモデルは17インチモデルより乗りにくいのか? 答えはNO。
乗り方は特別? これもNO。
メリットは? これはたくさんある。
各クラスの代表モデルを検証すれば明白だ。妙な先入観だけが弊害なのである。
report●石橋知也 photo●柴田直行
※本記事はMotorcyclist2019年7月号に掲載されていたものを再編集しています。
19インチは高速道路でも快適 継ぎ目のショックも最小
フロント19インチのメリットは色々ある。
19インチは17インチより大径で走破性が高くなり、ジャイロ効果がより大きいので安定感も増す。
同時にタイヤが細くなるから、接地面の形は縦長で幅が狭くなる。
接地感は19インチが線で、17インチが面という感じだ。多少のギャップや割れ目なら乗り越えやすいし、うねりや轍の影響も受けにくい。
ジャイロ効果や走破性ではより大きな21インチが勝るが、オンロードではネガというほどではないけれどクセもある。
単純に言えば(安定性が勝って)ステアリングの応答性が鈍くなり、クイックにレーンチェンジなどをしようとすると、少し大きな入力やアクションが19インチや17インチより必要になる。
その点で17と21の中間の19インチは、オン/オフ兼用のオン寄りという設定のモデルに多い。
フロント19インチは1980年代のパリ・ダカールラリーでも一時使われたが、やがて定番の21インチに戻った。
モトクロスではハンドリングのクイックさを狙って20インチも試されたが、これもすぐに戻った。
ちなみに、19インチは90年代になる頃にモトクロスのリヤで採用され、現在の主流になった(エンデューロではリヤ18インチのまま)。
大径化、小径化といろいろあったが、どれもジャイロ効果の影響が一因ではある。
さて、新旧のホンダ400Xを比較すると新型は前110/80R19、後160/60R17で、旧型は前120/70ZR17、後160/60ZR。フロントタイヤを計測してみると17インチがセンター外周1875㎜でセンター直径597・1㎜。
19インチがセンター外径2070㎜でセンター直径659・2㎜。同じ車体・サスセッティングなら、19インチはフロントの車高が31㎜高くなる。
他モデルはどうかとういうとVストローム650は前110/80R19、後150/60R17、R1250GSは前120/70R19、後170/60R17だ。
だいたいアドベンチャーモデルのリヤタイヤは150~170㎜幅で、ミドルクラスでダートでのトラクション性能を考えればもう少し細くてもと思うが、見た目の問題で少し太めを選択しているのだろう。
GSは重量車(満タンで車重256㎏)だから少し太めの前後タイヤを履くが、リヤは17インチオンロードモデルより1サイズ細い。これはダートでのトラクション性能を上げるためだ。
今回比較した19インチ3モデルは、現代のアドベンチャーモデルらしく前後タイヤはラジアルで、当然チューブレスだ。
速度レンジは同クラスの17インチオンロードモデルのようなZ規格=240㎞/h以上ではないが、動力性能・ギア比・空力性能を考えれば最高速度域を充分にカバーする。
タイヤパターンがオンロードメインの大きいブロックであることも、Zレンジではない理由だ。
また、チューブレスはパンクしてもチューブタイプのようにパッチ貼りや、チューブ交換など面倒な作業が必要ないから安心だ(ラバーステックを穴にねじ込むだけ)。
もちろんラジアルの方がバイアスより転がり抵抗が小さく、タイヤがよじれずに進むべき方向に転がるから、ハンドリングもグリップ力も優れているし、高剛性な割にしなやかだから乗り心地もいい。
少し前は19インチ、18インチなど大径タイヤではラジアル化が難しかったが、現在は19インチもラジアル化できる。
タイヤ技術の進化もアドベンチャーモデルの19インチ化を推し進めている要因だ。
しかも、オン/オフタイヤ装着の200㎏級バイクなのにオフロードで真っすぐ走り、普通に減速できるのはトラクションコントロールとABSのおかげだ。
最新19インチモデルならこのサポートも最大限に受けられる。昔のビッグオフローダーとはワケが違う。
今回の19インチ3モデルは普通のライダーが戸惑うような特性はどこにもない。
19インチに慣れない本誌スタッフも、気持ち良さそうにワインディングロードを走り、撮影のために強いられるUターン(舗装路)も、短い距離だったがオフロードも難なくこなしたし、高速道路を普通に走るには全く問題なく快適だったという。
ちょっとコツがつかみきれなかったようなのが、オフでのUターンと高速道路でのクイックなレーンチェンジだった。
前者は自信がなければバイクから降りてやればいいし、足が届くならベタ足で何度か切り返せばいい。
オフではハンドルを切る=進む力が横に逃げやすくなるので、スタンディングでならスロットルとリヤブレーキ操作で進む力を加減する。これは19インチに限らず経験が必要だ。
後者はハンドルやステップ操作、体重移動などの入力加減を、17インチより少し強めにしてみるなどで解決できる。メリハリを利かせてみるといい。400Xでは順次公開される開発陣インタビューでも分かるように、19インチ化(大径化)で出やすいネガが乗りにくさを生み出さないように細かな調整をしている。ハンドリングの応答性を良くするための姿勢や剛性の改良だ。
また、一般道の荒れた舗装(工事中の路面や山道の割れ目、落ち葉、轍わだちなど)、雨など条件が悪くなるほど19インチの強味が出て来る(フロントが細いので単一面積当たりの接地圧が高い)。もちろんオンロード重視のSTDタイヤ(大きめのブロック)でもフラットダートぐらいなら心配いらない(無茶は禁物)。
だから、ツーリング、特に一般道で山奥に入るような場合には19インチはかなり心強い。オンロードでの快適さ、スポーツ性も充分過ぎるほどに備わっている。その万能性や応用性が、新たなバイクライフをもたらしてくれるかもしないのだ。
→次ページ:各モデルの足着き紹介、本誌スタッフによる各モデルのインプレッションがあるぞ
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