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ホンダ初の一般ユーザー向け電動スクーター「EM1 e:」は、日産や三菱の軽EVのようにブームとなるか

EM1 e: ホンダ 電動バイク

ホンダの未来における電動スクーターの必要性

四輪モータースポーツの最高峰といえるF1に、ホンダがパワーユニット・サプライヤーとして2026年からの参戦を発表したことが話題となっている。2026年からのレギュレーションではエンジンと電動モーターの出力比が50:50となり、燃料もカーボンニュートラルのe-fuelを使うことが5度目の参戦につながる理由ということだ。

とはいえ、F1に復帰するからといってホンダの量産車におけるカーボンニュートラル計画が変わることはないようだ。参戦発表会見においても同社の三部敏宏社長は「電動化に舵を切っているので、内燃機関を残す計画はない」という旨の発言をしている。

F1参戦発表会見なのであくまで上記の言葉は四輪を念頭としたものかもしれないが、そんなホンダの脱・内燃機関は当然ながら二輪にも影響している。
ホンダ全体として「2050年カーボンニュートラルの実現」という目標を掲げているからには、二輪部門も全般的にエンジンが残るというわけにはいかない。二輪の電動化を推進する必要がある。当然ながら製品を出すだけでなく、市場で評価され、売れなければ企業としてのカーボンニュートラルは実現できない。

というわけで「ホンダとして初めて一般向け発売する電動スクーター・EM1 e:はユーザーに受け入れられるのか」をテーマにいくつか考察をしてみたい。

ホンダ初となる一般ユーザー向けの電動バイク「EM1 e:」。2023年8月24日発売で、価格は29万9200円。

ユーザーの日常的な原付の使い方を満たす性能

EM1 e:の開発コンセプトは『日々の生活スタイルにマッチする ちょうどe:Scooter』というもの。ハードウェアの特徴をまず記せば、定格出力0.58kWのインホイールモーターでリヤを駆動する原付一種(いわゆる50ccクラス)に分類される電動スクーターだ。

バッテリーはホンダが推進している交換型リチウムイオン電池「モバイルパワーパックe:」を使う。重量は10.3kgとなっており、車体から取り外して専用の機械で充電する方式となっている。EVなどの電動車両では重要なスペックとなるバッテリー総電力量を計算すると約1.3kWhとなり、30km/h定地走行での航続距離は53kmと発表されている。

後輪にインホイールモーターを内蔵。左がモバイルパワーパックe:で、重量10.3kg、高さ298mm、幅177.3mm、奥行き156.3mm。
モバイルパワーパックe:と専用充電器ホンダパワーパックチャージャーe:。ゼロから満充電までは約6時間。

航続距離の数字から「こんな航続距離じゃ使い物にならない。だってスーパーカブ50のカタログスペックから計算すると満タンの航続距離は450kmなんだぜ」という声もある。
たしかに数値だけを見ると、電動スクーター・EM1 e:はガス欠寸前となったスーパーカブくらいの航続性能しか持っていないように思える。しかし、エンジン車と電動車の航続性能を横並びで比較するのはナンセンスであるし、最低限の航続性能を満たしていれば、ユーザー的には意外に問題にならないという見方もできる。

原付一種というのは、一部のマニアを除けば近所の移動手段として使われていることが多数だろう。EM1 e:の開発責任者の方に話を聞いたところ「原付一種の使われ方を研究し、満充電で40kmを走ることができればご満足いただけると考えました」ということだから、EM1 e:の航続距離はユーザーニーズに対して余裕を持たせているともいえそうだ。

原付スクーターと同様に、近距離の移動手段として使われることの多い軽自動車では、すでに日産 サクラ/三菱 eKクロスEVという軽EVがヒットモデルとなっているのはご存じの通り。
これらの軽EVの満充電航続距離はカタログスペックで180kmとなっている。一方、同クラスの軽自動車(エンジン車)の満タン航続距離をカタログの燃費値・燃料タンク容量から算出すると500〜700kmとなることを思えば、軽EVの航続性能については比較にならないレベルといえる。

軽自動車のEV、日産 サクラ。ゼロ→満充電まで、普通充電で約8時間。航続距離(WLTCモード国土交通省審査値)は180km。価格は254万8700円〜だが、国から55万円、自治体によってはさらに70万円の補助も受けられる。

しかしながら、あれだけ売れている軽EVの航続距離への不満というのは大きな声にはなっていないし、電欠で止まってしまったというアクシデントが頻発しているわけでもない。電動車両の粗探しをしたい人からすると航続距離の短さは使えない要素として指摘したくなる点だろうが、現実の日常ではそれほど問題となっていないのも事実なのだ。

通勤通学で使うような原付スクーターでは毎日の走行距離は10〜20km程度というユーザーも多いだろう。そうしたユーザーにとって電動スクーターの航続距離は問題になり得ない。

さらにいえば生活圏内にガソリンスタンドがなく、給油のたびに遠回りするようなケースであれば自宅で充電できる電動スクーターのほうが有利。
そもそも近距離ユースはエンジンの暖機がしっかりできず、マシンに負担をかけるという声もあるが、電動スクーターであればエンジンが温まることを意識する必要もない。むしろ近距離ユースがメインであれば電動車両を選ぶことはメリットが多いのだ。

液晶メーターは中央に速度計、右下にバッテリー残量を表示。下部にオド・トリップ・時計を切り替えで表示する。

出力をマイルドにする「ECON」モードを使用するとインジケーターが点灯。通常時より約15%航続距離を伸ばすことができるという。

交換型バッテリー「モバイルパワーパックe:」1個をエネルギー源とし、シート下に搭載する。
「モバイルパワーパックe:」を搭載したうえで、シート下には約3.3Lの収納スペースがある。さすがにヘルメットは収納できないが、ヘルメットのDリングが掛けられるフックが装備され、ヘルメットホルダーとして活用できる。

一見、価格が高く感じられるが補助金も活用できる

ただし価格面においては車両本体が15万6200円、バッテリーが8万8000円、専用充電器が5万5000円で合計すると29万9200円となるため原付スクーターとしては高価な部類となる。

編集部註:ホンダの場合、ガソリンエンジンの原付一種スクーターで最も安いのがタクトで17万9300円、最も高いのがビジネス用途向けのベンリィで24万2000円(3輪のジャイロシリーズを除く)。

とはいえ、価格に見合った車格感となっていると評価することもできる。フロントが12インチタイヤでディスクブレーキとなっているのは上級感があり、見ての通りシートサイズにも余裕がある。このあたり、欧州では二人乗りモペットとして販売する計画があることも影響しているのだろうが、原付二種相当のボディを与えられていると思えば、30万円近い価格も納得できそうだ。

ちなみに、四輪EVでは政府から多額の補助金が給付されることが話題となるが、EM1 e:についても国からの補助金2万3000円が給付される予定だ。さらに東京在住であれば東京都から3万6000円の補助金が期待できる。この2つの補助金を前提にすると、実質的なユーザー負担は20万円ちょっとということになる。

この価格感であれば積極的に電動スクーターを選ぼうと考えるユーザーも増えてくるはずだ。はたして、まったく新しい電動スクーターEM1 e:は21世紀のスーパーカブになれるのか、大いに注目していきたい。

フロントタイヤのサイズは90/90-12、フロントブレーキは190mm径シングルディスク。
リヤタイヤのサイズは100/90-10。リヤブレーキは110mm径のドラムだが、リヤブレーキ操作(左レバー)で前後ブレーキが連動する「コンビブレーキ」機構となっている。

ホンダ EM1 e:主要諸元

[モーター・性能]
種類:交流同期電動機 定格出力:0.58kW<0.8ps> 最高出力:1.7kW<2.3ps>/540rpm 最大トルク:90Nm<9.2kgf-m>/25rpm
[バッテリー]
種類:ホンダモバイルパワーパックe:(リチウムイオン電池) 定格電圧:50.26V 定格容量:26.1Ah 定格電力量:1314Wh 連続放電出力:2.5kW
ゼロから満充電までの充電時間:約6時間(ホンダパワーパックチャージャーe:使用)
[寸法・重量]
全長:1795 全幅:680 全高:1080 ホイールベース:1300 シート高740(各mm) タイヤサイズ:F90/90−12 R100/90−10 車両重量:92kg(ホンダモバイルパワーパックe:搭載の状態)
[車体色]
パールサンビームホワイト、デジタルシルバーメタリック
[価格]
29万9200円(車両本体15万6200円、ホンダモバイルパワーパックe:8万8000円、ホンダパワーパックチャージャーe:5万5000円)

ホンダ EM1 e:の装備

■灯火類は全て高輝度LEDとし、省電力化に貢献すると同時に、夜間走行時の安心感を高めている。

■ハンドル下には500mlペットボトルが入るボケットとコンビニフックが設けられている。

■ハンドル右下、キーシリンダーの脇にはUSBタイプAの給電ソケットを装備。

■トップケースの装着にも便利なリヤキャリヤがオプションで用意されている。

レポート●山本晋也 写真●山本晋也/ホンダ/日産 編集●上野茂岐

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