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原付二種でも、軽二輪でも車両代やガソリン代はあまり変わらない?
現在、新規の二輪免許取得者が増加中です。理由はともあれ、昨今の情勢から電車やバス移動などの代替手段として、二輪車が注目されているのは間違いないでしょう。
さて、通勤をはじめとした生活のための移動手段として選ばれているのが原付二種スクーターです。かつては「通勤用=原二!」という式が成立していました。しかし現在は状況が変化しています。125ccよりちょっと上、軽二輪となりますが、150ccクラスのバイクが多数登場。こちらもしっかり市民権を得ています。どちらを選んで乗ればいいのでしょう?
*原付二種は第二種原動機付自転車のことで排気量50cc超125cc以下の車両となるが、当記事では「125ccクラス」と記す。それ以上の排気量車は軽二輪=排気量125cc超250cc以下の車両となり、通常は排気量区分の上限に近いモデルが多いことから「250ccクラス」とよく呼ばれるが、当記事では注目している車両の排気量に近い「150ccクラス」と記す。
125ccクラスと150ccクラス、外観に違いは無し
■ホンダ PCX(125)
写真のフォギーブルーメタリックなどが新登場し、2022年6月9日にカラーバリエーション変更を受けたばかりのPCXシリーズ(発売は6月23日)。今回の比較検証の代表的車種です。
■ホンダ PCX160
違いはテールカウルの車名エンブレム、フロントフェンダー先端に原付二種ならではの白いステッカーの有無くらいで、外観上はほぼ見分けがつきません。ちなみに、ホンダの国内における年間販売計画台数はPCX(125)が2万1700台、PCX160が8000台と、125ccが圧倒的に多いですが……。
普通自動二輪免許を取ってしまえば、125ccだろうが150ccだろうが乗れてしまいます。さらに困ったことに、例えばホンダのPCXのように、同一車種で125ccクラスと150ccクラスの両排気量が揃えられているパターンが多く、また価格帯もそう変わらない。
125ccクラスか150ccクラスか……どちらを選ぶべきか、価格やコストの面から検証します。また「できること」の違いもありますので、その辺りも。
当記事で比較するのは、いずれも人気のホンダ PCX、ヤマハ NMAXとヤマハ トリシティになります。まずは一番重要な車体価格(メーカー希望小売価格、税込)を見てみましょう。最高出力と最大トルク、公表燃費(WMTCモード)も記載します。
ホンダ PCX(125)
ホンダ PCX160
ヤマハ NMAX(125)
ヤマハ NMAX155
ヤマハ トリシティ125
ヤマハ トリシティ155
どの車種でも125ccクラスと150ccクラスの差はおおむね4万円となっています。ヘルメットを1つ買える分ということですね。30万円超の買い物となれば、ヘルメット1つの差は誤差の範囲内と言えなくもありません。
しかし、それ以上に出力とトルクの差は大きいと思います。特にトルクは加速力そのものですので、市街地での運転のしやすさに直結します。
一方、排気量が上がればその分燃料も消費するわけですが、その差は125ccクラスと150ccクラスで2km/Lほど。いずれの車両も40km/L以上の好燃費をマークしたうえでの2km/Lの差ですので、ほとんど同格と言えるでしょう。
125ccクラスか150ccクラスか、まずここまでで言えることは、ものすごくコストを気にするなら125ccクラスを選ぶべきですが、150ccクラスを選んだところで大差はないということです。
税金や保険料も大差とは言えないレベル
両者で最大の差となるのは「高速道路を走れるか否か」です。125ccクラスはNGですが、150ccクラスは問題なく走行可能。東京在住の場合、下道が混んでしょうがないときは首都高を使ってのワープができます。利便性を取るなら間違いなく150ccクラスを選ぶべきですね。
ちなみに150ccクラスには車検がありませんので、250ccクラスのほかのバイクと同様に、その分はランニングコストを抑えることができます。
比較論の本筋からは逸れますが、原付二種=125ccクラスしか乗らないと最初から決めていて、新たに二輪免許を取るのであれば「普通自動二輪車免許(小型限定)」という手も。免許取得費用を安く済ませることができます。
次に税金や保険関係の費用を比較してみましょう。まずは税金。これは50ccも含めて全てのバイクに軽自動車税がかかります。しかし額面は違っていて、125ccクラスは2400円、150ccクラスは3600円が1年ごとにかかります。さらに150ccに関しては、新規登録時に4900円の重量税がかかります。ちなみにこの150ccの重量税は登録時のみ払えばよく、あとは何年乗ろうがかかりません。
それでは保険の金額を見てみましょう。まずは全員に加入義務がある自賠責(自動車損害賠償責任保険)ですが、1年契約の保険料は125ccが7070円、150ccが7540円。長期の5年契約では、125ccクラスが1万3980円、150ccクラスが1万6220円となっています(保険料は令和3年4月1日以降保険始期の金額)。
強制保険である自賠責とは別に、万が一を考えると任意保険も必須です。任意保険料は、保険会社と補償内容により金額が変わるので一概には言えませんが、125ccクラスと150ccクラスで大きく違うのは、「ファミリーバイク特約」が使えるか否かです。
125ccクラスなら活用できるファミリーバイク特約とは、四輪車を持っていて任意保険に加入済みの場合、その任意保険に付帯させる特約のひとつで、原付二種のみを対象に認められているものです。
ただ、ファミリーバイク特約にも一長一短があり、四輪車とセットにできるため保険料を抑えることができる半面、通常は搭乗者障害保険の適用がなかったり、人身傷害保険がオプション扱いだったりと制限がついてしまうのが難点です。
もちろん、ファミリーバイク特約は四輪を持っていなければ入れないので、二輪車のみを保有する人はバイク用保険一択となります。
バイク用任意保険も125ccクラスと150ccクラスで料金に差があり、これも保険会社によりますが、最低の見積価格で両者の差は1万円以上の違いがあります。もちろん高いのは150ccクラスの方です。
ただ、安い保険は万が一の際に絶対に後悔します。ここは排気量にかかわらずケチってはいけないところ。それを考えながら見積もりをしていくと、125ccも150ccも金額的には大差は無くなっていくはずです。
費用に大して差がないのなら……乗って楽しい150ccクラスがいいのでは!!
ここまで、お金の面で125ccクラスと150ccクラスを比較してみましたが、両者にそんなに差がないことが改めて分かりました。日常利用なら、どちらを選んでも大丈夫でしょう。
ただ、125ccクラスも150ccクラスも立派なバイクです。バイクに乗ると誰もが楽しみを覚えると思います。そんな時、絶対に後悔しないのは150ccクラスです。なぜなら走る道に制限がないからです。日常だけでなく休日は趣味としてバイクを走らせてみたい──そんな願望が少なからずあるならば、迷わず150ccを検討した方が良いでしょう。
ちなみに筆者は第2世代と第3世代のPCX150に乗っていました。日常から休日のツーリングまで一台でこなせる素晴らしいバイクでした。逆に1台でなんでもできてしまったため、それ以外のバイクへの興味がなくなるというのが、難点といえば難点でしたね。
レポート●ABT werke 写真●ホンダ/ヤマハ 編集●上野茂岐
■ホンダ・PCXシリーズ
■ヤマハ・NMAX(125)
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/nmax/
■ヤマハ・NMAX155
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/nmax155/
■ヤマハ・トリシティ125
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity/
■ヤマハ・トリシティ155