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警察官になれば運転免許をタダで取得できるウワサは本当?
警察官は常日頃、クルマやバイクでパトロールをしていますが、警察官になるにも運転免許は必須です。なぜなら、警察官になるとパトカーや原付に乗る機会は避けられませんし、白バイ隊員は白バイに乗るために大型自動二輪免許を取得しなければ仕事ができないからです。
そのため、警察官になる前に運転免許を取得しなければいけないのですが、たとえば自衛隊では、基本的に自衛隊が運営している自衛隊自動車訓練所で運転免許が取得できる(場合によっては自衛隊自動車訓練所でなくとも費用は出してくれる)ので、「同じ公務員である警察官もタダで運転免許が取得できるのでは?」と思いますよね。
では、運転免許を取得する際に「警察官になる予定なら教習所に通う費用を出す」「警察学校に通えば教習所や免許など諸々を負担してくれる」といった特別待遇が本当にあるのでしょうか?
SNS上でも「警察官になればバイクの免許を取らせてくれる」「警察官になれば『仕事の上で必要だ』という理由で運転免許の取得費用を負担してもらえる」といったウワサがあるようです。
これが本当なら、とりあえず警察官になって運転免許をタダで取らせてもらい、あとで辞めればいいなんて考える人もいそうな気がします。
仕事をする上では運転免許は必要不可欠なのだから、運転免許を持っていない人には警察側が費用を負担してくれてもよさそうですが、現実はそう甘くはありません。
運転免許の取得費用は自己負担、つまり「自腹」です。警察の運営費用を捻出するのはもちろん税金。国民が収めた税金で運転免許を持っていない人に免許を取らせてあげるなんて甘い話……自衛隊ではあっても警察ではないのです。
警察官の採用条件に「運転免許有り」は含まれていない
警察官にはクルマやバイクの免許が必須といっても、実は採用に「クルマやバイクの免許を取得していること」といった条件はありません。
2022年度の警視庁の採用ページを確認しても、受験資格には年齢と学力、身長や体重といった身体要件、さらに国籍や前科などの条件が挙げられているだけで、運転免許のことなんてどこにも書いていません。
つまり、クルマやバイクの免許を取得しなくても便宜上は警察官になることは可能です。
しかし、ほとんどの都道府県警察では、採用後の説明会で「警察学校への入校までにクルマ・バイクの免許を取得しておくように」という指示を受けます。バイクに関しては、交番勤務なら小型自動二輪免許を取得していれば十分なはずですが、必ず普通自動二輪免許を取得するように指示されます。
「警察官になったら運転免許を取らせてくれる」と考えていた人は、説明会が終わったら青ざめているかもしれませんね。バイクとクルマの免許を同時に取るとしたら、格安の合宿免許でも25万円前後、自動車学校に通いながらの取得なら35万円前後が相場ですから。
運転免許を取らずに警察学校へ入校したらどうなる?
採用の条件には挙げられていないといっても「運転免許を持っていない警察官」なんて実際の現場では役に立ちません。運転免許を持っていない警察官に交通取り締まりを受けるなんて、運転者にとっては不安かつ悪夢のような話です。
しかし、採用後の説明会で「運転免許を取得しておくように」と言われても、いろんな事情があって警察学校の入校までに運転免許を取得できない人も存在します。たとえば、高校在学中に採用試験に合格したけど誕生日が3月だから4月の入校までに間に合わない、実技試験に落ちてしまったなど……。
もし、警察学校への入校までに運転免許を取得できなかった場合は、入校中に自動車学校などへ通いながら運転免許の取得を目指すことになります。警察学校のカリキュラムには「公用車検定」という内部検定があり、これをパスしないとパトカーなどの公用車を運転させてもらえないので、検定のためにも早急に運転免許を取得しなければなりません。
しかし、警察学校の入校初月は1ヵ月の外出禁止、その後も週末を除いて急病などの特別な事情がなければ外出禁止で、外出するためには(面倒な)申告が必要です。ただでさえ警察学校での生活は過酷なのに、一日のカリキュラムを終えたあとで夜間教習に通うのだからヘトヘトです。
筆者が所属していた県警察学校では、入校中の事故・違反を防ぐために警察学校の教官が送迎していたので「ちょっと途中でコンビニに寄って買い物しよう」なんて息抜きもできません。
「警察学校で運転の練習をして、試験場で一発取得」という優しい制度もないので、息苦しい思いをするのは必至です。同じように自腹で運転免許を取る必要があるなら、できれば気楽なほうがいいでしょう。
もし警察官を志望するなら、余裕をもって運転免許を取得しておくことをおすすめします。
レポート●鷹橋 公宣 編集●モーサイ編集部・小泉元暉
元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。