バイクライフ

「オートブリッパー」の普及がバイクの走りを変える!? 回転数合わせからの解放が制動への集中力を高めてくれる!

クイックシフター付きでも、オートブリッパーがあるとは限らない

オートブリッパー、オートブリップ機能という言葉を見かける機会は増えている。いまや250ccクラスであってもカワサキ ニンジャZX-25R SEのようなスポーツモデルであれば標準装備化していることもあるし、ホンダ CBR250RR、ヤマハ YZF-R25のようにオプション設定されていることも珍しくない。

あらためてクイックシフターの機能を説明すれば、クラッチレバーを操作することなく、シフトペダル操作だけで変速ができるというものだ。シフトアップ時には点火間引きなどによりエンジン回転数を落とす方向で合わせ、シフトダウン時には逆に回転数を上げる方向で合わせる。そして、主にシフトダウン時にエンジン回転数を自動的に合わせる機能を果たすのがオートブリッパーなのだ。

オートブリッパー=クイックシフターと思っている人もいるかもしれないが、厳密にいえば異なる機能を示す言葉であり、結果としてはセットで装備されているべき機能ともいえる。

なぜ、オートブリップ機能がクイックシフターには欠かせない要素といえるのか。そしてシフトダウン時にエンジン回転数を合わせるということには、どんな目的があるのだろうか。

カワサキ ニンジャZX-25R。現在クラス唯一の並列4気筒エンジンを搭載する250ccスーパースポーツ。最高出力は45馬力(ラムエア加圧時は46馬力)。
ニンジャZX-25Rのオートブリッパー機能付きクイックシフター。上級グレードの「SE」には標準装備、スタンダード車は純正アクセサリーで後付け可能(4万4880円、取り付け作業代別)。
ホンダ CBR250RR。最高出力41馬力の並列2気筒エンジンを搭載する250ccスーパースポーツ。
CBR250RRのオートブリッパー機能付きクイックシフター。純正アクセサリーの扱いで、販売店で後付けが可能。価格は2万5300円(取り付け作業代別)。

エンジン回転数を合わせることのメリットとその仕組み

実際、オートブリップ機能どころか、クイックシフターも備わっていない古いキャブのバイクであっても、慣れたライダーはクラッチ操作をすることなくシフトチェンジを軽々と決めることができる。シフトダウン時にはブリップし(アクセルを瞬間的にあおる)、シフトアップする場合にはアクセルを緩めるなどしている。ミッションギヤの駆動荷重を抜くことでスムーズに変速しているのだ。

シフトダウンにおいては速度とギヤ比の関係から変速ショックが少ない高めのギヤで実行するほうが簡単だ。極端な例を上げれば、走行中に1速ギヤに落とすようなシチュエーションでは、クラッチ操作をせずに無理にシフトダウンをすると強いエンジンブレーキが瞬時にかかってしまい、非常に危ない。

そうして後輪が急に高回転になりすぎて路面へのグリップを失うことを緩和したり、ホッピングを防止するためのテクノロジーとして「アシスト&スリッパークラッチ」という装備もあったりするが、仮に通常のクラッチシステムであったとしても、適切にエンジン回転を上げておけば少なくともグリップを失うことはないし、エンジンブレーキもマイルドに感じられるようになる。

「アシスト&スリッパークラッチ」のカム作動イメージ図。減速時に強い回転差が生じたときにはプレッシャープレートカムを押し上げ、半クラ状態を自動的に作り出し、ショックを和らげる。

たとえば、2速:40km/h走行時のエンジン回転数が3000rpmで、そのまま1速に落とすと4500rpmまで上がってしまうギヤ比のバイクだとする。

オートブリップ機能などを持たないバイクでは、クラッチを切ってアクセルを回し、エンジン回転数を適切に上げてクラッチをつなぎ、シフトダウンを完了させたときに4500rpmになるようにするとスムーズなシフトダウンができる。

しかしオートブリップ機能があれば、シフトダウン操作を検知して、速度に応じたエンジン回転数まで自動的に上げてくれるので、そうしたアクセルコントロールは不要。当然ながらエンジン回転数が適切なのでクラッチも切らずにショックなくシフトダウンできるというわけだ。

こうしたオートブリップ機能に欠かせないメカニズムといえるのが「バイワイヤ」のスロットル系だ(電子制御スロットル)。キャブ車や通常のインジェクション車は、アクセルがケーブルによってキャブやスロットルボディにつながっているが、バイワイヤというのは電気信号によってスロットルの開け閉めを行うことを指す。

バイワイヤのスロットル系であれば、ライダー側のアクセル操作にかかわらず、バイク側の判断でスロットルを開けたり閉めたりできるわけで、ライダーがアクセルをオフにしっぱなしで減速しながらシフトダウン操作をしても、自動的に適切なエンジン回転数にブリップで上げるくれるというわけだ。

逆に、オートブリッパーが備わっていてもライダーがアクセルを閉じずに操作していると、人間側の操作が優先されるという仕組みによりオートブリップ機能がきちんと作動しないこともある。クイックシフター&オートブリッパー搭載モデルの機能を活かすには、減速時にはアクセルを全閉にして動かさず、ブレーキングに集中する意識が重要といえるかもしれない。

オートブリッパー付きクイックシフターが標準装備されるCBR1000RR-RファイアブレードSP、スタンダードのCBR1000RR-Rファイアブレードは純正アクササリーで用意される(写真は2020年モデル)。

■ホンダ CBR1000RR-RファイアブレードSPのクイックシフター。シフトロッド上部にあるストロークセンサーでシフトペダルの操作荷重を電気信号に変換してECUへ。車速、エンジン過減速状態、ギヤポジションの情報と合わせて、燃料噴射停止タイミング、スロットルバルブ開度、点火タイミングをコントロールし、最適なエンジン回転数とする。マイナーチェンジが行われた新型(2022年モデル)では制御がさらに熟成されているという。

218馬力を誇るホンダの1000ccスーパースポーツ、CBR1000RR-RファイアブレードSP(2022年モデル)。

オートブリッパーは後付けできる?

さて、そんなオートブリッパーやクイックシフターは純正アクセサリーやサードパーティ製のチューニングアイテムとしても用意されている。純正アクセサリーについてはメーカーが設定していないモデルには装着不可であるし、サードパーティ製オートブリッパーについても装着可能モデルは限られる。

絶対的な条件といえるのが、前述したようにバイワイヤのスロットル系を持つインジェクション車であることだ。その上で、パーツメーカーやショップなどが適応させることができたモデルだけがオートブリッパーを装着できる。

なお、純正でクイックシフターを備えているモデルの中には、シフトアップのみ対応というケースもある。クイックシフター付きだからといってシフトダウン時にもアクセル操作が不要と思うとしっぺ返しをくらうこともあるので、愛車の仕様についてはきちんと確認しておきたい。

■CBR1000RR-RファイアブレードSPのTFT液晶メーター。右下にQS(クイックシフター)の作動状態を示す表示がある。ON/OFFなどモードの状態を確認しての乗車が求められる。

レポート●山本晋也 写真●ホンダ/カワサキ 編集●小泉元暉

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