教習車はハーレーダビッドソン ストリート500
バイク免許や自動車免許を取得する際に、必ず行かなければならない場所といえば自動車教習所・自動車学校。合宿もしくは通いながら学科や技能講習を受け、技能教習の「みきわめ」や「修了検定」に合格したのち、仮免学科試験で90点以上を取る必要がある。
一発試験という方法もあるが、一般的には教習所または自動車学校に通い、学科試験や卒業検定を受けて合格したら、運転免許センターに行って免許証を取得するという流れだろう。
しかし、これはあくまで日本の場合でアメリカの場合は話が違ってくる。そこで当記事では、アメリカの教習所ではどんなカリキュラムを受けているのか、教習車にはなにを使っているのかなど、実際にアメリカの教習所に通ったことがあるタクさんに話を聞いた。
タクさんが通ったのは、アメリカにあるハーレーダビッドソンの正規ディーラーが運営している教習所。教習車はハーレーダビッドソンのストリート500を使用している。教習所によっては、ホンダ、トライアンフのバイクなど日本のようにどこへ行っても同じ教習車が使われているわけではないようだ。また、6〜8人の受講者を1人の講師が受け持つ形となっている。
日本と最も違うところは教習のスケジュールだ。日本であれば、休憩時間や講習時間がきっちり決められているが、アメリカでは教官のひょんな気分からスケジュールが変わることもある。
「基本的にゆるゆるのスケジュールでやっています。教官も『ハンバーガー食べたいから休憩していいか?』って言うぐらい(笑)」
そんなゆるい環境下だからか、もし運転技術が上達しない人がいてもその人が出来るようになるまでやってから、次のステップに進んでいく。実技試験もスラローム走行や急制動など、日本でも馴染みのある試験内容かつ比較的誰でも合格可能なレベルになっているようだ。
「基本的なことしかやらないので、日本と比べて結構ラクな感じはしますね。教習所のサイトを見てみると、『受講すれば合格しますか?』というQ&Aの質問に『大体8〜9割の人は受講すれば合格します』と答えていたぐらいなので、そんなに難しくはないと思います」
ちなみにバイクについて、アメリカの免許区分はM1、M2の2種類だけ。M1とは150cc以上の二輪車、M2は150cc以下の二輪車に乗ることができる。日本でいうM1は大型二輪免許で、M2は小型限定普通二輪免許みたいなものだ。
「まれに都市部で原付に乗って通勤している人は見かけますけど、大体の人がM1を取得すると思いますね」と、アメリカの免許について語っていた。
日本とは違い、アメリカでは基本的にアメリカの試験会場(DMV)で日本の一発試験のような制度を使って免許証を取得する人が多いとのこと。なお、教習所の料金は高くても300ドル(日本円で約3万6000円)から。日数も2日間だけなので、少し遠くても通えなくはないのだ。
2ヵ月経っても免許証が届かない
こうしたエピソードを聞いていると「アメリカの教習所は楽で簡単そうだな」と思ってしまうが、アメリカでは学科・実技試験に一回落ちてしまうと、日本のように補修を受けることはできないので、一から教習所に通わなければいけない。もちろん、費用も2倍かかることになる。
しかも、学科・実技試験に合格してもさらなる問題がある。それは免許証が届かないことだ。免許証はDMV(日本の陸運局のような機関)という場所で発行されるのだが、職員が一向に免許証発行の手続きをしてくれないそうだ。
「免許証が届かないので電話をしたら『じゃあ、やるよ。一週間後まで待ってください』と返事がくるのですが、一週間経っても免許証が届かないのでまた電話をするというループ(笑)。そういった事を2ヵ月ほど繰り返しても免許証を取得できなかった知人もいましたね」
これにはワケがあるようで、DMVでは交通事故や違反の処理、クルマやバイクの登録手続きなど様々な業務があるものの、日本の町役場みたく規模が小さく、人員も少ない。そのため、ほかの業務に追われて免許証交付の手続きが遅くなり、雑な対応をしてしまう背景があるとタクさんは話す。
「ただ、それでもちょっと不親切かな……。(DMVに関して)いい噂を聞いたことがない」
レポート●モーサイ編集部・小泉元暉 写真●タクさん