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日本は地震大国だ。世界で発生しているマグニチュード6以上の地震の約20%が日本で起こっている。そのため、各地で地震による家の倒壊、道路の崩壊などが時折起こっているわけだが、実際に大地震が起きたら水や食料が確保できない状況が想定される。
消防隊員や自衛隊員たちは一刻も早く現地に向かおうとするが、崩壊した道路や瓦礫が立ち塞がったり、電話やインターネットなど連絡手段が取れない可能性もあるため、救助活動に遅れが生じるはずだ。
そういった場面で活躍するのがバイク隊だ。自衛隊の情報収集任務にあたる「第1偵察隊」は、道が整備されていない災害時でも現地に向かえるように、訓練されたバイク隊員たちで編成されている部隊があるのだが、緊急事態に活動するバイク隊は自衛隊以外にも存在する。
たとえば、神奈川県横須賀市で活動している「災害二輪調査隊」、通称「ブルトラ隊」という隊員数18名で編成されているバイク隊がある。
そこで当記事では、神奈川県横須賀市上下水道局の「ブルトラ隊」の活動内容やバイク隊を設立した理由など、話を伺うことにした。
1986年4月からバイク隊「ブルトラ隊」を設立

1986年3月、神奈川県の県央地区で起きた大雪による停電の影響で、横須賀市への送水が減少したことにより、大規模断水が発生した。
その際、応急給水活動をするときに現場の情報収集・連絡を取るのが困難であったという教訓から1986年4月に神奈川県横須賀市で「ブルトラ隊」を設立することになった。
「ブルトラ隊」とは、神奈川県横須賀市の上下水道局職員によって編成されているバイク部隊。山道や林道など悪路を走行できるトライアルバイクを使用し、地震災害などの緊急時には上下水道施設の被害調査や情報収集・連携を行っているのが主な活動だ。
バイク隊員は災害時には情報収集を行うが、普段は職員たちもそれぞれの部署で通常業務をしている。また、被害を想定した調査ルートの走行、被害状況の調査方法の確認や慣熟走行など、月に1回程度の訓練を行って緊急時に備えているという。
そんな「ブルトラ隊」に所属する隊員たちは、バイクの免許を持つ職員が指名されている。強制的に選ばれているわけではなく、バイク隊に所属したい職員を募って集められているのだ。
以前は、定年退職となる60歳まで活動する隊員もいたそうだが、ベテラン隊員はバイクによる調査ではなく復旧作業が中心となるため、体力面を考えて現在は45歳までとしている。
ホンダ CRF250L、エイプ50、スコルパ TY125を採用している

さて、気になるバイク隊「ブルトラ隊」が採用している車両は、ホンダ CRF250L、ホンダ エイプ50、スコルパ TY125となっている。
そんなバイクは市販車とは違う特殊装備が加えられているわけではなく、ノーマル車を使っている。あくまで目視調査がメインのため、必要なものだけをリュックに持ち運ぶだけで済むので、サイドバッグやシートバッグなどを取り付ける必要がないのだ。
ちなみに「ブルトラ隊」という名前は設立当初、ホンダのトライアルバイク TLM200Rを使用し、青いトライアルバイクで活動していたことが由来となっている。

東日本大震災でもバイクで現地の調査を行った
2004年10月の新潟中越地震、2011年3月の東日本大震災では、協力要請を受けた「ブルトラ隊」が現地まで赴き、バイクならではの機動性を活かした初期調査を実施した。
東日本大震災では、全隊員で横須賀市内を1日、福島県郡山市(隊員2名派遣)で計2日間の初期調査を実施。これにより、横須賀市内のポンプ所や配水池など主要施設の調査を3〜4時間で完了し、その調査内容を現地の対策本部に報告したとのことだ。
しかし、災害現場によってはスマホや携帯電話が繋がらない状況も想定されるため、隊員たちは無線機を常備している。最近では、電波が繋がる状況であれば、スマホを活用して写真や文章での調査報告も行っているそうだ。
とはいえ、普段は通常業務を行っている職員たちがバイク隊の活動をしているというのは、初めてオフロードバイクに乗るので不慣れな運転だったり、体力的にキツイ訓練があったりなど、苦悩があったかと思われる。
神奈川県横須賀市だけではなく、協力要請があればほかの地域でも駆けつける姿は、バイク好きや神奈川県にお住みの方も、なにかジーンとくるものがあるのではないだろうか。

レポート●モーサイ編集部・小泉元暉 写真提供●横須賀市上下水道局
神奈川県横須賀市上下水道局
https://www.water.yokosuka.kanagawa.jp/history/suido/14.html