雑ネタ

水素と相性のいいエンジンとは? カワサキのバイクは水素+スーパーチャージャーを模索中、トヨタはターボでレース参戦!

カワサキはスーパーチャージャー+直噴エンジンを実験機としている

実質的にCO2排出量をゼロにするというカーボンニュートラルの波は否応なしに二輪業界にも迫っている。クルマより趣味性が濃い「乗り物」だけにエンジンの鼓動を求めるユーザーは多いが、電動化は避けられない情勢だ。

実際、国内4メーカーの一角であるカワサキにしても、スポーツタイプの電動モーターサイクルのプロトタイプを発表している。電動化でもトランスミッションを組み合わせ、シフトチェンジの楽しみを残しているのはさすがだが……。

同時に、カワサキは水素エンジンについても試作機を発表しているのはご存知の通りだ。水素は燃焼させても水しか出さない。内燃機関でカーボンニュートラルを実現するソリューションとなるのである。

カワサキが2021年10月に公開した直噴水素エンジン。Ninja H2系の998cc直4スーパーチャージャー付きエンジンをベースとした実験用だという。
一見Ninja H2用エンジンと大きな違いは無いように見えるが、エンジン側面からヘッドカバーへ取り回された太いホースや(燃料供給用のラインか)、ホースに接続されたタンクなどが異なる。
タービン部分はベースとなっているNinja H2のエンジンと同様のように見える。

カワサキの水素エンジンは、Ninja H2系の発展型といえるもので、遠心式スーパーチャージャーを搭載した4気筒ユニットとなっている。また、水素については直噴インジェクターによって、シリンダー内にダイレクトに供給される仕組みになっているという。なおH2というのは水素分子の記号であるが、そうしたダジャレでこのエンジンをベースにしたわけではないだろう。

スーパーチャージャーであり、直噴システムとする必要があるはずだ。その理由について考察してみたい。

スーパーチャージャー付き998cc並列4気筒エンジンを搭載するカワサキ Ninja H2 CARBON。2015年登場時から年々進化を遂げ、2021年モデルでは最高出力231馬力、ラムエア加圧時242馬力という性能に達している。

何故スーパーチャージャー+直噴にする必要があるのか

まず筒内直接噴射の理由は、水素が燃えやすいからだ。従来のポート噴射では吸気バルブからシリンダーに吸い込まれる前に燃焼してしまい、その熱エネルギーを無駄にしてしまう。水素を燃やすには直噴であることは必須といえる。

スーパーチャージャーと組み合わせているのは必要なパワーを得るためと考えるのが妥当だ。そもそもガソリンというのは炭化水素で炭素と水素の化合物だ。その熱エネルギーについては炭素が圧倒的に多くを担っている。

つまり水素だけを燃やすということはガソリンに対して取り出せるエネルギーが小さいということになる。スーパーチャージャーで過給、それに見合った水素を噴射するというのはガソリンエンジンと同等のパワーを得るために、これまた必須といえるのだ。

カワサキが実験中の水素直噴スーパーチャージャー付きエンジンのイメージイラスト。インジェクターの位置をNinja H2のエンジンと見比べてほしい。
水素直噴スーパーチャージャー付きエンジンのベースとなったNinja H2のエンジン(写真は初登場した2015年モデルのもの)。

他のメーカーの動向は? クルマではトヨタがターボと組み合わせる

実際、四輪ではトヨタが水素エンジンを積んだカローラで、スーパー耐久というレースに出ていることが知られているが、その3気筒エンジンもターボで過給されている。レースでの戦闘力を求めてということもあるが、水素エンジンと過給機という組み合わせは四輪のほうでもスタンダードとなっていくだろう。

なお、トヨタの水素エンジン開発にも参画しているヤマハ発動機が、試作した5000cc V8の水素エンジンは、最高出力335kW(455ps)/6800rpm、最大トルク540Nm(55kgm)/3600rpmというスペックを実現するという。ベースとなったガソリン仕様のスペックは351kW(477ps)/7100rpm、530Nm(54kgm)/4800〜5600rpmだから、上手に水素に置き換えることができればガソリン同等の出力を得ることができるというわけだ。

さらに水素はガソリンと燃焼特製が異なり、エンジンとしても違うキャラクターに仕上がるという話もある。その意味で、水素エンジンはカーボンニュートラルに対応したガソリンエンジンの代替ではなく、新しい楽しみや味を持つ内燃機関の登場ともいえる。

スーパー耐久シリーズ2021に参戦している水素エンジンのトヨタ カローラ。
ヤマハ発動機が試作した5000cc V8の水素エンジン。

バイク×水素の今後は? 考えられる課題と燃料電池の可能性

水素ステーションの水素ディスペンサー。

では、モーターサイクルの未来は水素エンジンが主流になるのかといえば、そこには大きな課題がある。エンジン自体は既存ユニットに水素インジェクターを追加して、制御プログラムを最適化すればいいともいえるが、水素タンクをどのように搭載するかは問題だ。

現在、モビリティ全般においては高圧水素タンクを使う方向であり、そのタンクには高コストであることと、積載レイアウトの難しさという課題がある。高圧に対応するためにタンク形状が円柱状となってしまう。そのため、従来のレイアウトでモーターサイクルに実際に搭載しようと思うと、非常に小さなタンクしか詰めなくなってしまう。航続距離が短くなってしまうのだ。

水素タンクの搭載性まで考えると、スポーツタイプではなくスクータータイプのボディのほうが適しているだろう。その場合でもシート下のメットインスペースはタンクに置き換わってしまうだろうが。
また、高価な水素タンクを積むのであれば、水素と酸素を反応させて発電する燃料電池によって電気駆動したほうが全体としてのレイアウトが有利な部分もある。

さらに厳密にいえば、水素エンジンはゼロエミッションではない。それは、エンジンオイルをわずかに燃やしてしまうためだ。モーターサイクルでの水素活用は、水素エンジンと燃料電池という2つのアプローチで考えていく必要があるだろう。
いずれにしても、コスト面で考えると単純な電動化には敵わないといえる。少なくとも、近距離移動が中心のスクーター的なモデルについては、外部充電をするか、バッテリーを交換して走る電動タイプが主流になるのは間違いないだろう。

岩谷産業株式会社が運営する水素ステーション。写真は東京都芝公園店のもの。
クルマに水素を充填する様子。ガソリンの給油と同様にノズルを車体に差し込んで行う。

レポート●山本晋也 写真●八重洲出版/カワサキ/岩谷産業株式会社(水素ステーション)
編集●モーサイ編集部・中牟田歩実

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