大雪が積もる雪国では、屋根に積もった雪を落とす、除雪車などで道が通れるようにする光景が当たり前のようにあります。
そんな雪国では、転ぶときは踏ん張らずにわざと転んで大怪我をしないようにする、道路の端や軒下を歩いてはいけないなどといった地域ならではの習慣があります。後者に関しては、雪で埋もれて見えない段差や溝を避けるため、屋根の上に積もった雪が落ちてくるのを避けるためです。
とはいえ、クルマやバイクで走っているときに建物の屋根から突然雪が落ちてきら……回避が難しい状況もあるでしょう。そのように落下してきた雪の影響で交通事故が起きた場合、誰がその責任を問われることになるのでしょうか? 刑事事件や交通事故に詳しい坂口 靖弁護士に話を聞いてみました。
建物の所有者だけでなく実は運転者も交通事故の責任を問われる可能性がある
──建物の屋根から落ちた雪がクルマのフロントガラスやバイクを運転するライダーに当たって、前方が見えなくなったことで交通事故が起こった……。このような場合、責任は誰が負うのでしょうか?
民法717条第1項には「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じた場合、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」と規定されています。
この規定に基づき、建物に関して落雪防止のための措置等の管理が不十分であったような場合には、その建物を占有し使用している方、または建物の所有者が落雪による事故の責任を負うことになる可能性があります。
また、自動車等の運転者においても前方が見えなくなったら直ちに車両を停車させるべき義務を負っていますので、適切な処置を取らなかったのであれば、運転者も事故の責任を問われることがあります。
このような場合、建物の占有者等の責任と運転者の責任は「共同不法行為」として連帯責任となります。
──現実的ではないかもしれませんが、嫌がらせのような形で意図的に建物の屋根から雪を下ろして、クルマやバイクに当てて交通事故が起きたとします。その場合、雪を下ろした本人はどんな罪に問われますか?
確かに、意図的に屋根から雪を落とすという状況が想定しづらい気もしますが、民法では故意または過失を問わず、第三者に損害を生じさせてしまった場合には、損害賠償責任を負うことになっています(民法709条)。
故意の場合は別としても、屋根の下にクルマやバイクがいないか確認することは可能ですから、第三者に損害を生じさせる可能性があることを予見できる状況であります。
その損害発生を防止し得る状況であったのであれば、過失が認められて第三者に発生した損害を賠償するべき責任を負うこととなります。
監修●坂口 靖 まとめ●モーサイ編集部・小泉元暉
弁護士としてさまざまな刑事事件に携わり、YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」でも活動中。
事務所名:プロスペクト法律事務所