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装備によっては250ccクラスでも乗り出し100万円近い!!
2020年に発売され、2021年も話題となっていたカワサキ Ninja ZX-25R。
久しぶりの250ccクラスの4気筒エンジンモデルということもあって、幅広い層から注目度の高いモデルとなりました。
とはいえ、ベーシックグレードで84万7000円(税抜き77万円)、クイックシフターなどを備えた最上級グレードの「SE KRTエディション」で93万5000円(税抜き85万円)というメーカー希望小売価格は、250ccクラスとしてはあまりにも高価という指摘があったのも事実です。
4気筒だから高いとばかりはいえません。同じ250ccクラスのホンダCBR250RRは並列2気筒エンジンですが、グランプリレッドカラーのメーカー希望小売価格は85万4700円(税抜き77万7000円)となっています。ZX-25Rと変わらない価格帯なのです。いまや250ccのスーパースポーツは、消費税込みで考えると80万円オーバーは当たり前で、装備によっては100万円に迫る勢いなのです。
「昔は、こんなに高くなかった」という声もあります。実際に、歴代CBR250RRの価格を調べてみましょう。なお、ここからは消費税の有無、税率の違いもありますので、すべて税抜き価格で表示します。
「CBR250RR」の価格は約20年で24%程度上がった
元祖CBR250RRとして1990年に誕生したMC22型のメーカー希望小売価格は59万9000円でした。この価格で並列4気筒エンジンを積んでいたのです。1994年には62万円に値上がりしましたが、それでも現在のCBR250RRと比べてみると、圧倒的に割安です。
そんなCBR250RRが現行のMC51型として復活したのが2017年です。エンジンは2気筒になりましたがメーカー希望小売価格は税抜き70万円~76万7000円とかなり上昇していました。もっとも、そこには四半世紀の時間がありますから当然といえば当然です。他のものの物価も上昇していると考えられるからです。
軽自動車N-BOXも10年間で10%~20%の価格上昇!!
では、バイク以外のエンジン付きモビリティの価格はどのくらい上がっているのでしょうか。日本の自動車産業を支える軽自動車、その中でも2021年に最も多く売れたホンダN-BOXの価格を見比べてみましょう。
初代N-BOXのデビューは2011年12月で、最初のモデルの価格帯(税抜き)は118万953円~169万5239円となっていました。それが10年後の2021年12月にはどうなったのかといえば、同じく税抜き価格で131万7000円~204万8000円となっています。
最新のN-BOXには電子制御パーキングブレーキが備わっていますし、先進運転支援システムや衝突被害軽減ブレーキも標準になるなど価格上昇は致し方ないといえるほど機能や装備は充実しているのですが、それでも10年間で10%~20%は価格が上がっています。
もっとも、N-BOXがデビュー時から今に至るまでずっと好調に売れていることを考えると、このくらいの価格上昇は社会的に認められているといえるのかもしれません。
グローバルモデルも含めると、乗り物の価格は20年間で3割以上上昇
軽自動車は基本的に日本専用のクルマですが、もうひとつの例としてグローバルモデルの価格変化も見てみることにしましょう。メーカーの違いによるわかりづらさを排除するために、こちらもホンダが世界各国で販売しているコンパクトカー「フィット」の価格を調べてみることにします。
初代フィットの誕生は2001年6月で、エンジンは1300cc 4気筒だけの設定。メーカー希望小売価格は税抜きで106万5000円~144万円でした。1年後に追加された1500ccエンジン車は135万円~153万円となっていました。
2007年にフルモデルチェンジした2代目も1300ccと1500ccという2種類のエンジンをラインナップ。1300cc車の税抜き価格は114万円~148万円、1500cc社は150万円~170万円となっていましたから、1300cc車で2~7%、1500cc車では11~15%くらい価格帯が上がっています。
2代目の途中からハイブリッドが追加されていますが、ハイブリッドを含めると価格変化がわかりづらくなるのでガソリン車だけに絞ると、2013年9月にフルモデルチェンジした3代目では、1300cc車が120万4762円~168万4762円で、5~17%の価格上昇。1500cc車は150万4762円~171万4286円となり、ほぼ据え置きとなっています。
2020年2月にフルモデルチェンジした現行の4代目では、ガソリン車は1300ccエンジンだけと原点回帰しています。その価格帯は、141万6000円~203万8000円。3代目と比べても17~21%、初代と比べると33~41%も価格は上がっています。これをグローバルスタンダードだと仮定すると、エンジンで動くモビリティの価格は20年間で3割以上も上昇していると理解することができます。
そう考えると、20年の時を経て価格が24%程度しか上がっていないCBR250RRはむしろ価格がそれほど上がっていない一例となるのかもしれません。もちろん4気筒のMC22と2気筒エンジンのMC51を並列に比べるのは適切でないかもしれませんが……。
日本経済が成長していないので、相対的にバイクの価格が高く感じられる
とはいえ、250ccクラスで90万円前後の価格帯をというのは消費者にとってけっして安いとはいえません。ここには大きく2つの原因要素があります。
ひとつは消費税。ここまでの計算で消費税を外していたのは、消費税がなかった時代、5%だった時代、8%だった時代、そして10%になっている現在という違いがあるためですが、消費税率が上昇していることで、メーカーの出荷価格では適切な価格上昇だったとしても、ユーザー心理としての価格はもっと上がっている感じてしまいます。
2つ目には日本経済の成長率が低いことも相対的な高値感につながっています。2000年代から世界経済は実質GDP成長率で3.5~4.0%あたりで推移していますが、日本経済については0.3~1.2%程度となっています。これほどの差が毎年のように積み重なっているわけです。今日は多くの車種がグローバルモデルとなっている以上、世界経済の成長率に合わせて価格上昇してしまうわけで、グローバルでの物価上昇に合わせた値段は、日本では割高に感じてしまう部分もあるでしょう。
ただし、すべてのモデルが割高で手が届かないというわけではありません。250ccクラスでいえば、独自の油冷エンジンを積んだスズキ ジクサー250(税抜き40万8000円)のようなモデルもありますし、大型二輪でも2022年2月に発売予定のヤマハ YZF-R7は税抜き90万9000円。YZF-R7は税込みでも99万9900円と非常にリーズナブルです。
世界経済が成長しているのだから日本のユーザーは我慢すべし!! ではなく、各メーカーは手の届きやすいモデルを用意しているという面も認めていかなければいけないでしょう。
また、世界経済の成長が与えるのは「国産バイクの値上がり」という負の影響だけではありません。
縮小してしまった日本市場だけをターゲットとしていては新規車種の開発もままなりませんが、グローバルモデルとして開発できれば全世界での販売を計算に入れることができ「商売として成立」するわけです。
結果的に日本にも魅力的なニューモデルが供給され、ライダーにとっては車種選択の幅が広がっているのです。
レポート●山本晋也 写真●モーサイ編集部 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実