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地下鉄・東京メトロの「バイク隊」とは?
「東京メトロ」──正式な会社名は「東京地下鉄株式会社」といい、日本の首都・東京の縦横無尽に走る地下鉄を運営管理する大手私鉄企業だ。
運営する路線は、銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線、半蔵門線、南北線、副都心線の9路線にもわたる。
そんな東京メトロには「バイク隊」なる部隊があるという。一体、地下鉄とバイクにどのような関係があるのだろうか?
東京メトロ「バイク隊」設立のきっかけは、2011年の東日本大震災
東京メトロ「バイク隊」の創設は、2013年1月と割と新しい組織だ。
そもそも「バイク隊」を作るきっかけになったのは、2011年3月に起きた東日本大震災だった。東日本大震災では鉄道網が分断されるだけでなく、道路も通行止めが相次ぎ、交通インフラが完全にマヒした。
「もし首都直下型地震が起きたら、どうなるのか?」と首都・東京における公共交通の一端を担う東京メトロは考えた。地下鉄を動かすためには、線路の安全を確認しなければならず、そのためには保線区の担当者も動かなくてはならないし、もちろん運転士や車掌といったスタッフも必要だ。
そこで、災害発生時に鉄道施設や地上部の被害状況を機動的に情報収集するための部隊として、「バイク隊」が生まれたのだという。
車両基地に「緊急用自動二輪車」を配備
具体的には、機動性の高いバイクを使うことで本社から被害を受けた駅までのルートを確認、人的応援を可能とすることが主たる目的だという。バイク隊は当初、東京都台東区にある本社に4台の「緊急用自動二輪車」を導入することからスタート。その後、より広範囲に情報収集を行なうため、2014年には以下の4車両基地にも「バイク隊」が配備されている。
- 中野車両基地(東京都中野区)3台
- 深川車両基地(東京都江東区)2台
- 綾瀬車両基地(東京都足立区)3台
- 鷺沼車両基地(神奈川県川崎市)2台
東京メトロ「バイク隊」が採用するのはヤマハ セロー250
さて気になる「バイク隊」が採用している車両は、写真を見ても分かるようにヤマハ セロー250となっている。
その採用理由は、各種行政機関で導入実績があるというものだが、それだけではないだろう。
「バイク隊」のメンバーは、車両部(車両点検・検査をする部署)や安全・技術部(各部署をまとめている)から選ばれるているが、あくまで「本業」はそちら。白バイ隊員のように、バイクに乗ることがメインの業務ではない──つまりバイクのプロフェッショナルが乗るわけではない。
足着き性や取り回しのしやすさ、そして災害時の走破性などを考えたときに、扱いやすいヤマハ セロー250がベストチョイスというのは、バイク好きの人なら納得できるだろう。
バイク隊が採用しているヤマハ セロー250は、基本的に特別な改造はしていないというが、乗員の安全を確保するためエンジンガード、ナックルガードを装着しているほか、ナビゲーションシステム、スクリーン、リヤボックスも装備している。
また、「バイク隊」の隊員は、乗車時にヒジ、ヒザ、胸部、背部にプロテクターを装備することになっているという。災害という非常時に活動するためには、まず乗り手自身が十分な安全対策をするのが大前提だということだろう。
なお、2014年の創設から幸いにも大きな災害が起きていないこともあって、「バイク隊」の出動実績はないという(2021年10月15日時点)。
東京メトロ・バイク隊はバイク14台、隊員約60名で編成
もちろん、いきなり本番というのでは想定外の出来事にも対処できないため、月に1回程度のペースで災害出動を想定した走行訓練を実施している。2020年度までは、警察の指導による運転訓練を行ったという。いざというときに活躍できるよう、常に腕を磨いているのだ。
そんな東京メトロの「バイク隊」は約60名で編成されており、メンバーは車両部と安全・技術部から半々の割合になっているという。「バイク隊」業務のために免許を取得するのではなく、二輪免許を持っている希望者から採用しているというので、メンバーにはもともとバイク好きな人が多いのではないかと推測する。
そんなライダー達で編成されている「バイク隊」が首都・東京の地下鉄を守っているというのは、バイク好きにとっては親近感を覚えると同時に、何か誇らしい気分にならないだろうか。
レポート●山本晋也 写真提供●東京メトロ 編集●モーサイ編集部・小泉元暉
東京メトロ ホームページ
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