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新品タイヤにはワックスや剥離剤が塗られている
愛車のタイヤを新しく換えると気持ちがいい。減っていたタイヤに比べると表面はピカピカしているし、いかにもグリップしそうな気になってくる。
とはいえ、ご存知のように新品タイヤでいきなり全開走行をするのはNGだ。それはタイヤ表面がピカピカしていることに理由がある。
通常、タイヤというのはゴムやカーカス(タイヤの骨格となる強靭な繊維をゴムで覆った層)などを組み立て、それを金型に入れて加熱・加圧することで成型している。そして、型からスムーズに抜き取るためには、表面に剥離剤などの化学薬品を塗っておく必要がある。
つまり、新品タイヤの表面にはワックスが薄く塗られている状態なのだ。
本来、ゴムの変形や表面摩擦などでグリップを発揮するのが、タイヤの役割だ。その表面にワックスが塗ってあるのでは、正しく性能が発揮できないことは火を見るよりも明らかだ。
タイヤ表面の薬品を落とす作業を「皮むき」という
そこで表面のワックスを落とす作業が必要となるわけだが、それを一般的に「皮むき」と呼ばれている。
これは俗称ではあるが、各タイヤメーカーでも普通に使っている言葉で、どんなメーカーのタイヤであっても「皮むき」は必須だ。
とはいえ、それほど神経質になることもない。レース専用タイヤならまだしも、難しい「皮むき」作業が必要なタイヤを一般向けに売っているはずもないからだ。
逆にいえば「皮むき」をしないと、怖くて走れないほどグリップしないなんてことはない。経験則でいえば、交換が必至といえる状態まで使い込んだタイヤより、ワックスのついた新品タイヤのほうがグリップ感は上回っている。
だからといって「皮むき」が不要ということではない。表面にワックスが付着している状態ではタイヤの性能を十分に発揮できないからだ。
そのために必要なのが「慣らし運転」だ。ここでも特別な運転テクニックを意識する必要はない。タイヤの慣らしというのは、ワックスによって多少滑りやすい危険性を意識しつつ、急減速や急加速を避けて走り込むだけでいい。
慎重に100kmほど走ることが慣らし運転の目安
徐々にワックスが取れてくるとグリップ感が安定したり、グリップ自体が増してきたりするので、そうした感触を味わっていれば、自然と慣らしは終了する。
その目安は多くのタイヤメーカーでは100kmと説明しているが、走り方によっても変わってくるので、もっと短い距離で皮むきが終わることもあるだろう。
もっとも、ご存知のようにモーターサイクルのタイヤは真っ直ぐ走っているだけではセンター部分しか接地していない。極端な話、直線しか走らないという実験をすれば、ショルダー部分の皮むきが終わらない……なんてこともあり得なくはない。
ただ実際には、公道を走っている限りまったくコーナリングをしないというのは非現実的な話であって、100kmを目安にして慎重な走行をすれば最低限必要なタイヤの慣らしは終了するだろう。
ケミカルを使うより慣らしをする方がいい理由
一方、サーキット走行をするユーザーなどはタイヤ表面のワックスを別の手段で落とそうとすることもある。
その中でも、研磨剤の入った家庭用洗剤やパーツクリーナーなどのケミカルを使うのが定番だ。なかにはヤスリで表面を削り取るという強者もいる。
しかし、いずれの方法においてもタイヤに対して攻撃性があるのは否めない。たしかに経験豊富で慣れたメカニックやベテランライダーが実施するのであれば、素早くワックスを落とせるかもしれないが、生兵法で真似するのは大怪我のもとだ。
そもそも一般ライダーのレベルでは、新品タイヤのグリップ限界をいきなり掴むというのは無理な話だ。
皮むきを意識しながら、様子見的な慣らし運転をすることで、タイヤと会話をしてグリップ感を把握することをおすすめしたい。
また、新品タイヤを組んだ直後から慣らしをしていくと空気圧が低下する傾向にある。
一般的には月に一度はタイヤ空気圧をチェックするよういわれているが、新品タイヤを組んだ際には、もっとこまめに空気圧を確認することもお忘れなく!


レポート●山本晋也 写真協力●住友ゴム(ダンロップ)/ミシュラン
編集●モーサイ編集部・小泉元暉






























