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「走る広告塔」として、地域の風景や観光資源を図柄とすることにより、地域の魅力を全国に発信することを目的に、2018年10月1日から開始された「地方版図柄入りナンバープレート」通称「ご当地ナンバー」制度。
埼玉県の深谷市では原動機付自転車ナンバープレートに幕末から明治を代表する経済界の偉人である「渋沢栄一」の肖像をアレンジしたデザインが登場し、2019年9月17日から交付が始まっています。
渋沢栄一は2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公としてもお馴染みで、2024年度の流通開始を目指して印刷が始まっている新しい1万円札の「顔」としてもよく知られています。
渋沢栄一は埼玉県深谷市生まれの「日本資本主義の父」
渋沢栄一は1840年3月16日に埼玉県深谷市の裕福な農家に生まれます。
5歳で漢字を読み書きし、7歳で中国春秋時代(紀元前500年ころ)の思想家である孔子など言行を記した「論語」を学ぶなど、かなり天才肌の幼少期を過ごし、青年期には江戸で儒学と剣術を学びます。その後、徳川慶喜の家臣として取り建てられ武士となります。
慶喜が将軍となったことにより幕臣となり、1867年のパリ万国博覧会に将軍の名代として出席する慶喜の異母弟、徳川昭武の随員としてフランスへと渡航、パリ万博を視察したほかヨーロッパ各国を訪問する昭武に随行します。
明治維新の後に大蔵省に入省し国立銀行の設立に尽力、大蔵省退官後は自らが設立に尽力した国立第一銀行の総監となります。そして銀行家として、またヨーロッパ視察で得た知見により様々な企業の設立に関わり「日本資本主義の父」としてその名をとどろかせています。
そんな「日本資本主義の父」である渋沢栄一は、彼の出生地である深谷市にとって無二の英雄であることは間違いありません。そこに新1万円札のデザイン発表、NHK大河ドラマの主人公という注目のタイミングから肖像をモチーフとしたナンバープレートが交付されたのです。
ナンバープレートにも新1万円札にも描かれる「レンガの建物」の謎
この渋沢栄一デザインのナンバープレートの下部には何やら建物が描かれています。そういえば渋沢栄一の描かれる新1万円札にもレンガ造りの建物が描かれています。
新1万円札に描かれる建物は1914年に竣工した東京駅の丸の内駅舎ですが、ナンバープレートに描かれているのはJR深谷駅の駅舎となります。
東京駅の丸の内駅舎を建築する際に使用したレンガは渋沢栄一が深谷市内に設立した日本煉瓦製造のものが使われていました。そういった縁の元、JR深谷駅が改装する際には東京駅の丸の内駅舎をモチーフとしてデザインされており、機械式の大量生産レンガ製造を日本で初めて行った街としての矜持を見せています。
なお深谷市に所在していた日本煉瓦製造の施設は、重要文化財を含めて所有権を深谷市に移転し、一部は煉瓦資料館として一般に公開しています。
渋沢栄一のご当地ナンバーはどこで手に入る?
この渋沢栄一ナンバープレートは埼玉県深谷市内に使用の本拠がある原動機付自転車(一種、二種)のみに交付されます。
交付場所は深谷市役所の市民税課で、交付にあたっての必要書類は通常のナンバープレートとかわりありません。色は排気量に応じて3種類となりますが、番号自体の指定はできません。
なお既にナンバープレートを取得している車両でも必要書類と500円の交換代金を支払えばナンバープレートの交付を受けることが出来ます。ただし交換以前と同じ番号にはなりません。
ちなみに深谷市では公認ゆるキャラの「ふっかちゃん」ナンバープレートもあり、通常の無地のものと合わせるとなんと3種類のナンバープレートデザインから選べるのもうれしいところです。
ご当地ナンバープレートはその自治体の特色を表したデザインが多く、遠出をした際にその地域のご当地ナンバープレートを見かけるとちょっとうれしくなったりもします。コロナ禍が落ちついた際に出かけるツーリングでは、そういったご当地ナンバーに目を向けてみるのも面白いかもしれませんね。
追記2021年9月28日18時40分:「渋沢栄一デザインのご当地ナンバー」の交付開始日を2020年9月17日としていましたが、正しくは2019年9月17日でした。訂正の上、お詫びいたします。
レポート●松永和浩 写真●深谷市役所 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実