雑ネタ

タイでは小中学生でも「学生服を着ればバイクに乗れる!?」ナゾの習慣があるその理由とは?

タイは地方に行くと娯楽がなく、中学生・高校生くらいになるとみんなバイクで走り回って遊んでいる。常夏で気温が高いので自転車に乗る文化は根づかず、農村だとトラクターやバイクで移動するのが当たり前だ。

朝、郊外の小学校や中学校、そして高校を見ていると、普通にバイクで通学してくる生徒を見かける。
ときには3人乗り、すごいケースでは5人乗りくらいで現れる。高校生ならともかく、小学生・中学生は確実に無免許である(タイでは15歳で二輪免許<110cc以下>で取得でき、クルマは18歳から取得可能)。

当然ながら、無免許運転はタイでも違反になる。せいぜい数百円の罰金刑でしかないが、法律違反であるのは間違いない。
タイは朝食を家族で食べず、学校の前の屋台などで済ます。そのため、早朝の学校前はちょっとした朝一のようで賑やかになる。

そういう場所にはだいたい警察官が立ち交通整理をするのだが、なぜか生徒のバイク通学は無視するのである。いったいどういうことなのだろうか。


学生服を着ていれば無免許運転でも捕まらない!?

タイ南部で見かけた中高生と思しきふたり乗りライダー。ヘルメットすら被っていない……

郊外の人に話を聞こうとすると、あまりにも当たり前のことのようで、質問の意図がつかめない様子だ。

あるとき、結婚を機に地方の農村へ移住した日本人男性に話を聞くことができた。タイ人の奥さんとの間に当時13歳くらいの子どもがいて、毎日バイクで通学しているという。

「タイはね、学校の制服を着ていたら通学ということで、無免許でも捕まらないんですよ」

日本だったらそんな特例はありえないが、タイならありそうな気がしてくる。ただ、バンコクでは制服を着た小学生がバイクを運転する姿はまず見かけない。タイ人に再び話を聞くと、いろいろな事情が出てきた。

「うちは共働きだから、朝、学校に送っていく時間はない。夕方も迎えに行くのは難しい。だから、バイク通学は仕方がないこと」
「みんなやっているんだから、うちだって」
「子どもも友だちと放課後に遊ぶのにバイクがあった方が便利でしょ?」

主にこういった事情がある。大きいのはやはり、親に送迎の時間がないことだ。特に農村の場合、若い世代は首都バンコクに出稼ぎに行き、子どもたちは物価の安い地元に置いていくことがよくある。
祖父母がほかの子どもの面倒を見ている世帯だと、なおさら学校に送るのは難しい。

バンコクは公共交通機関がタイの中では発達しているので、三輪のトゥクトゥク、バイクタクシー、それから路線バスで通学もできる。
郊外は路線バスもないし、そもそもバンコクでさえ、スクールバスがあるのは私立だけ。郊外は公立校しかない。

また、公立の小学校は村の寺に併設されていて、徒歩圏内であることが多い。
一方、タイの中学校・高校は中等教育課程として6年間セットになっているか、日本でいう中学校の課程は村内、高校の課程はほかの学校と統合されて遠くの村に行く。

村内に中学校・高校があればいいが、なければなんとかして通う手段が必要だ。
そこで、バイクがある家庭はバイクに乗り、なければ友人のバイクにタンデムをして行くというわけだ。

子どもの無免許運転による事故多発で社会問題に!?

市街地では警察官が立っている。ヘルメットに赤い帯が交通課の目印

警察もそういった事情があることをよく理解しているので、黙認している。これを取り締まっては教育の機会を奪うことになり、村民の反感を買ってしまう。

そういう意味では、タイの警察官は非常に合理的というか……人情味がある。
ただ、それはあくまでも現場の話。タイ政府としては無免許運転を容認するわけにはいかない。

実は、学生の無免許運転には問題も少なくないのだ。
2019年には北部チェンマイ県で、13歳の少年が運転する1100ccの大型バイクが老夫婦の運転するバイクと乗用車1台に衝突し、大けがを負わせた事故が発生している。
この少年は元々バイクレースに参加し、優勝経験もあったことから親もレース用を兼ねて大型バイクを与えていた。

そもそもタイでは、大排気量バイクの増加による事故多発が問題視され、最近になって「大型免許」の区分ができたくらいだ。
それなのに、中学生に運転させていたとなると、どんな親なんだという意見がニュースを見た人々から噴出した。

タイでは交通検問をはじめ、多くの場面で日本ほど運転免許証の確認が行われていない。
無免許運転でもせいぜい数百円程度の罰金で済んでしまうので、より遵法精神に欠ける部分がタイ人にはある。

郊外の移動手段が少ないという理由はわかるが、事故を起こしたときに当然保険は使えないし、誰が補償をするのかということまでは考えていない。

こういった問題もあり、タイ政府や運輸省などは未成年者の運転免許証の取得を推し進めるキャンペーンなどを不定期で行っている。

一説では800万人がバイクの無免許運転をしていると言われ、先のチェンマイの事故を受け運輸大臣は2019年から2020年に『新生徒 みんなで運転免許取得しよう』というキャンペーンを実施した。
これにより、2019年には2万人超がバイク免許を取得したという。

タイでは40年前から15歳で運転免許が取れるが……

少女たちが違反切符を切られている場面。本来はこのときに免許証を提示する

先述のようにタイ人は遵法精神が低い面もあり、物事をよく調べずに思い込んでいる節がある。実はタイでは1979年制定の法令の中で、学生のバイク免許について枠を作っている。

本来、タイのバイク免許は18歳から正式に取得できる。
しかし、大通りや夜間の運転禁止などいくつかの条件、さらに排気量110cc以下のバイクであれば満15歳からバイクの免許証を取得して運転ができる。
仮免のような扱いなので、1年ごとの更新が必要だが、中学3年生から運転はできるのだ。

ただ、先に述べた日本人男性の娘さんのように、年齢に満たない子も確かにおり、そういった子は相変わらず制服を免許代わりにしているようではある。
いずれにしても、郊外ではバイク通学が多いこともあり、また制服から学年を判断できないので、警察官も取り締まれないという事情もあるだろう。

タイの若者も日本の若い人と同じで、特に男子ならバイクの運転がうまい、速く走れるといったことが男らしさの象徴でもある。
また、日本円換算ではそれほどしないにしても、物価の安い郊外だとバイクはそれなりに高い買い物で、買えない世帯だってある。

そういう意味では、バイクを持っていることはステータスの証と言っても過言ではない。だから、余計にイキがってしまう男子生徒も中にはいる。
そのため、バイクでゼロヨンごっこをしたり、飲酒運転をしたりと、男子が数人集まればだいたいロクなことをしない。

だから法令では、18歳未満に対しては大通り(幹線道路など)の走行を禁じられ、夜間(といっても23時から朝5時まで)は運転してはいけないとしている。これらの条件は2014年の法改正で追加された内容らしい。

地方の家庭では多くの親がなんとか非行に走らせないようにすることで頭を抱えている。映画館もゲームセンターもないような郊外でやることといったらバイクか飲酒か異性とのデート、ひどい場合は麻薬くらいしかない。

その中では、まだ実用性もあってバイクを与えていた方がいいと考えるのは当然かもしれない。少なくとも地方の村では小中学生の無免許運転は今後もなくならないだろう。

レポート●高田胤臣 編集●モーサイ編集部・小泉元暉 写真●高田胤臣/タイランドハイパーリンクス

プロフィール

■高田 胤臣(たかだ たねおみ)

1998年からタイで過ごしはじめ、2002年にタイへ移住。タイにある「華僑系慈善団体」でボランティア、現地採用会社員として就業。2011年からライターの活動をし『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)をはじめ、書籍や電子書籍を多数発行。
noteではタイにまつわる出来事を綴っている。

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