雑ネタ

キャブレターの不具合を徹底的に『洗い出す』「カワサキ ZZR600」リフレッシュ計画【第6話】

燃料系の問題か、急加速時の微妙な不調が持病のようなZZR600・2号機。
購入した中古バイクショップでは、タンクの錆取りをするとのことで納車まで時間がかかったのですが「時間をかけて燃料系もしっかり清掃してくれたのかな」なんて思っていたんですけど、もしかして、まだキャブの中など燃料系に汚れが残っている?
そこで第6回となる当記事では、キャブの分解点検に取りかかってみました。

時間の取れた某日、じっくりとキャブ整備に没頭。作業当日はホコリの入りにくい風の弱い日でよかったです。

クランクケース上で、ナゾの放置ネジ発見!

当「カワサキ ZZR600シリーズ」では毎度おなじみの作業となりつつありますが(笑)、まずはシート、サイドカウルなどをはじめタンクやエアクリーナーボックスやらをそっくり外し、キャブまでたどり着きます。
エンジンと接続しているマニホールドも点検しつつ、キャブの底に付くアイシング対策の冷却水ホースもひっこ抜き、ようやくキャブがエンジンから外れます。
しかし、何回やっても時間のかかる作業ですね。外した部品類を踏んだりしないように離れた場所に移動させ、作業台の上で上下に分解しますが、まずはフロート室やドレーンの様子を見てみます。

例によって、外装やタンク、スロットルケーブルも外してキャブを取り出します。クーラントホースの止めをうっかり取り忘れて、少々お漏らしさせてしまいました。

すると、フロートチャンバー下側に錆の粉が凝固していました。各気筒ともにまあまあの量で錆の粉の固まりがありました。
これをピックツールで優しく、かつしつこく突ついて隅々の粉までを除去。一方で洗浄前にドレーンネジを外すと、3番キャブのドレーンの先端に錆が。交換すべきかもしれませんが、ジェットではなくドレーンなので錆部分の研磨除去でオーケーとしましょう。

そのほかでは、不思議なことに、外した覚えもない1、2番間のスロットル調整のネジが外れてクランクケース上で見つかるという怪奇現象(?)が発覚。見つかってよかったものの、これでは同調が狂っていてもおかしくない状況。
キャブの同調は4連のバキュームを使ってきちんと調整しないとダメな作業です。そこで、応急的に外れていたネジを、リンクに他と同じ程度に仮にねじ込んでおき、後日対処することにしました。
この作業で、不調解消へググッと前進できそうな気がしてきました。

パッキン類のほか、キャブ内部のメインノズルとメインジェット、スロージェットは新品を用意。
フロートチャンバーの底には錆の粉が凝固していました……。しつこくこそぎ落としてキレイにしよう。
特に3番のドレーンプラグが錆がひどく、先端付近はこんな状態。320、600番のペーパーを当てて地金まで磨いて復元。Oリングはまだ大丈夫。

キャブ内部の分解チェック&ジェット類の新調

キャブの下側とリンクまわりのチェック後は、上側=ダイヤフラムとスロットルバルブの点検です。ダイヤフラムに破れがないか、作動が正常なのか、上側の端にある小さな穴が詰まっていないかも点検しました。
ZZR600の吸気系は、キャブが負圧式でラムエア機構付きという複雑な構造ですから、負圧なり加圧のかかりそうな箇所がどこか詰まっていないかの確認は重要でしょう。

目視でチェックした限りでは、ダイヤフラムは大丈夫そう。ただし、1番のスライドバルブが荒れていたため、細かいペーパーで滑らかに上下するように修正&洗浄。次に、エンジン側へ混合気が向かう直前のバタフライバルブもチェック。ここもブローバイガスのせいか汚れていたので、キレイに清掃し磨きました(やや「過剰整備」かな?)。

負圧で上下するスライドバルブですが、1番が削れ傷が多い状態。引っ掛かりが出るとイヤなので、ここも手作業で研磨してスムーズな動作を確認。
フロートチャンバーと本体の透き間から燃料漏れがあるとマズいですね。念のため合わせ面をオイルストーンで軽く研ぎ、パッキンを仮組みして密着性を確認。微量な漏れの痕跡のあったキャブは、特に丁寧にこの作業をしておきました。
エンジン側に向かうバタフライバルブ。吹き返しで茶色っぽく汚れていたので、ボア付近の傷をチェックし磨きをかけました。写真をよく見ると、左側の調整ネジが無いのが分かるでしょうか? なんと3、4番キャブ中間の同調ネジが落ちてたのョ。
ネジを元に戻し、磨きもかけた後の状態。スプリングが入ってるし、そう簡単にネジが落ちるってことはないでしょーに。隣接キャブのスクリューの高さを測り、ねじ込んで暫定で再セットしました。一体何があったんだ??

ところでZZR600に限らずですが、仕向け地(輸出国)によってキャブに付くジェットの仕様が違うのが海外専用車らしさでもあります。
ここは、標準で135番と思われたメインジェットはそのままでしたが、新品で後年型の140番のジェットとメインノズルを注文していたので、それを組み込んでみました。
一方スロージェットは、おおむねどの仕向け地でも35番だったので、標準35番の新品に交換。ちなみにメインノズルに開く穴の数が変わっていましたが、ものは試し。
「メインジェットから吸い上げられたガソリンが、どんな感じでキャブの中に噴射されるんだろう? 」と興味が湧き、パーツクリーナーのノズルに接続してクリーナーの噴出する写真を撮ってみました。面白い!

キャブ内部の通路を洗浄+エア通しをした後に、新しいメインノズル、メインジェットまで組み込んだキャブです。清々しい気持ちになりますねぇ。
元通りにしやすいように、並べて保管しておいたキャブ部品。古いパッキンやジェット類はここでサヨナラ。ただし元々付いていた135番のメインジェットは保管しておきます。
キャブの上側・ダイヤフラムの端にある小さな穴ボコ。負圧キャブではここもちゃんと点検・清掃をしておくべきポイントかも。詰まってはいませんでしたが、ここはソレ用の掃除ツールが必要か。
経年劣化で黒がすっかり抜けて色褪せていたダイヤフラムのカバーを補修塗装。耐熱ではないけど、樹脂ブラックを塗布して化粧直ししてみました。
タイトルにもしたこの写真は「キャブ内部で吸い上げられた燃料ってこんなふうに飛び散って空気と混合→エンジンに吸い込まれるのかな?」とパーツクリーナーを注入しがてら実験撮影したもので、1993年型より新しいE4以降用メインノズル。まだまだ頑張れ!のケイヒンCVKD-36です。

撮影しながら細かく掃除をしたりしていると、4連キャブの作業だけで2日くらいかかっちゃいました。
分解した内部には錆の粉や各部に傷みとかもありましたが、それを見ると「自分が手に入れる前まで、このバイクにも放置期間前には色々歴史があったんだろうなー」なんて思いましたね。
そして、キャブを一旦組んでみたものの、エンジンをかけての同調調整を住宅地の中でやるのはさすがに……と、かつて散々お世話になったショップの社長に作業を打診。ちなみにそのお店は四半世紀以上前(Z400GPやらZ750GPなどが新車販売されていた時代です)、10代後半だった私がザッパーで通ってはバイトをしていたときからの長~いお付き合い。社長さんは、筆者にとって「バイクの師匠」と言える存在です。

「もう引退に近い状態だし、常連さんの整備しかやってないよ~!」とのことでしたが、作業していただけました。やっぱり師匠の作業、勘所はすごかった!
こうした作業の結果、調子が一気に向上してゴキゲン♩だったんですが……別の問題も見付かったりしちゃって。

筆者の「師匠」がいるショップにZZR600を持ち込み、ダイヤフラムの小穴部品のチェックも実施。やっぱり専用ツールがあって(!)丁寧に通り具合を確認してもらいました。
同調調整中の師匠の手元。ゲージの流入の絞り加減も手慣れたもので、振れを敏感にさせたり抑えたりしつつ各キャブの同調をいい感じに調整。イマイチだった吹け上がりが段違いによくなり、かつて新車購入したZZR600・1号車のようなレスポンスへ復調。

次ページ:レース参戦用マフラーを手掛けてくれたビート本社へ、ZZR600に乗ってインタビューに!

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