走行中にリヤタイヤがパンクしたらどう停車する?

今回紹介したさっつんさんのケースでは、リヤタイヤがバースト状態でも冷静に対処したことで、転倒せず停車することができました。
では、もし同様のケースが自身に降りかかった場合、どのようにバイクを停車させればいいのでしょうか?
「リヤタイヤバースト時の停車方法はバイクの車種や走行速度、タイヤの状態にもよりますが、おもにふたつの停車方法が考えられます。ひとつめは“急”の付く操作はせず、フロントタイヤが進行方向へ真っ直ぐ向くよう注意しながら緩やかに停車する方法です。」
そう解説してくれたのは、多くのパンクを経験しているモータージャーナリストの柏 秀樹さん。
リヤタイヤがバーストしてエアが抜けると、タイヤのケーシング剛性のみで車体を支えて停車することになります。そのため、路面の凹凸や車体からの入力によってタイヤが大きくたわみ、リヤ側が左右に振れやすくなります。
当然のことながらリヤが左右に振れると、車体が進行方向に対して真っ直ぐに向かなくなってしまいます。
その振れを収めるため、フロントタイヤが進行方向に対し真っ直ぐになるようハンドルで制御しつつおだやかに減速する……というわけです。
ダート走行のように、逆ハンドルを切ってカウンターを当てるようなイメージと言えばわかりやすいでしょうか?

気を付けなければならないのは、車体を操作するときに急ハンドルや急ブレーキにならないようにする、という点。
ハンドルを握る手に力が入っていたり、強くブレーキをかけたりすると、車体の動きに対応できず転倒してしまう可能性が高くなります。
パンク時のハンドル操作は、手の力を抜いてフロントタイヤを進行方向へ向けることに注力し、ブレーキもジワーッとゆるやかにかけるよう心がけましょう。
あえてリヤタイヤをロックする、という方法も
柏さんは上記の方法以外にも、リヤタイヤバースト時に停車する手段はあるといいます。
「ふたつめは、あえて後輪をロックさせて止まる方法です。タイヤ接地面を1点に固定することで左右の振れを抑え、さらにタイヤと路面の摩擦で減速を行います。その際フロントタイヤは、進行方向の制御を行うジャイロとして利用するというわけです。」
後輪をロックすることでバイクの不規則な挙動を抑えられるのと同時に、操作次第ではゆっくり停車するより制動距離を短くすることも可能になります。
「なおABS装着車で前後輪連動式ではない場合は、ABSを作動させるぐらい強い減速で一気に速度を落とすという方法もあります。後輪ロックもABSも必ずしも最良の結果になるとは限らないですが、バランス補正よりも速度低下が最優先できる状況なら、もしもの転倒を考えてできるだけ早めの減速が良いかもしれません。」(柏さん)
速度やシチュエーションによってはより危険な状況になる可能性もありますが、どちらも使用する状況やライダーのスキル次第でより早く安全に停車できる方法と言えるでしょう。
「停車の選択肢を増やす」ためのスキルアップも視野に入れる
多くのライダーは自車のタイヤがバーストした場合、パニックを起こしてしまう可能性が高いでしょう。
「だからこそ、安全に停車するための選択肢と操作技術が必要になるのです。」
これまで幾度もパンクを経験し、時には高速道路でバーストしてフルカウンターを当てながら停車(!)したこともあるという柏さんは、そう指摘します。
「バースト時の対処方法を練習するのもいいですが、停車方法を『ひとつだけ』と決めつけるのは避けたほうがいいでしょう。なぜなら、停車方法を複数知っていれば、状況に合わせた最適解を冷静に選択できるからです。もちろん、その停車方法を実行できるだけの操作技術は必須となりますので、もしもの時のために対応できるスキルを、ライディングスクールなどで磨くことも重要です。」
バーストが起こったときにバイクと自分の身を守れるのは、結局自分だけなのです。「もしも」は起こらないのが一番ですが、万が一起こった場合に対処できる技術と、どんなときも冷静に判断できるメンタルは身に付けたいものですね。
text:モーサイWEB編集部・日暮/画像提供:さっつんさん
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