1990年代に一世を風靡した、「ジャメリカン」ことジャパニーズアメリカンモデル。
特に人気だったのが普通二輪免許で乗れる250cc〜400ccまでのミドルクラスモデルで、多くのライダーが愛車にアメリカンモデルを選択していた。
カスタムベースとしても人気で、当時は勇ましいエキゾーストノートを轟かせながら疾走するライダーをよく見かけたものだった。
90年代後半にヤマハ・TW200に端を発するスカチューンブームやヤマハ・マジェスティ250を始めとするビッグスクーターブームが起こるとアメリカンブームは沈静化したわけだが、大きなブームとなっただけあり中古市場でのタマ数は豊富。
車両によっては価格もこなれており、同クラスのアメリカンモデルに乗るには絶好の機会と言えるのかもしれない。
今回は1990年代に人気を集めた400cc国産アメリカンのなかから、特にオススメのモデルの中古相場価格を調査して紹介。往時の400ccアメリカンモデルは現在「買い」なのかどうかを検証していこう。
【ホンダ・スティード】10万円台から豊富にあるがノーマル車両は少ない
1988年に登場し、アメリカンブームの火付け役となったホンダ・スティード。乗りやすさと外観の美しさを両立させたことでアメリカンクルーザーブームの中心的存在となり、派生車種も複数投入された。当時価格59万9000円。
中古相場は10万円〜70万円台と幅広く、台数も80台前後が常時流通しているが、大抵カスタマイズされているので、ノーマル車両を探すほうが大変かもしれない。
20万円台がボリュームゾーンなので、自身の好みに合う車両をリーズナブルに探すこともできる。ただし、カスタマイズの関係でメーター交換を行っている車両が多いため、走行距離が車両状態を判断する目安になりにくい。30年近く前の年式の車両が多いこともあり、状態の見極めは困難を伴うだろう。
自信がない場合は信頼できるショップさんに探してもらうなどしたほうがいいが、今の目で見ても素晴らしいスタイリングの車両なので、アメリカンモデルを検討しているならぜひ候補に入れてほしい1台だ。
【ホンダ・スティードVLS】シリーズ随一のインパクト! ノーマルが多いが若干高値安定傾向
スティードシリーズ随一のインパクトを誇るのが、1998年2月に登場したスティードVLS。国産アメリカンでは珍しいスプリンガーフォークを採用し、堂々たるスタイリングをしているのが特徴だ。当時価格は64万9000円。
生産期間が短かったが現在でも中古市場に20台前後流通しており、タマ数が極端に少ないわけではない。むしろディッシュホイールを装備する派生車種、スティードVSEのほうがひと桁台の流通しかなく、今後さらに減少する可能性が高いくらいだ。
中古車価格帯はおおむね20万から60万円台で、30万円台の車両が比較的多い。
なかには新車状態で残っているタマもあり、そちらは100万円近いプライスが付けられている。
メーカーカスタマイズドモデルと言えるスタイリングのためか、いじっていたとしてもマフラー交換やハンドル交換程度のライトカスタマイズに留まっているのがほとんど。むしろノーマル車両のほうが多く、比較的状態のよいタマがそろっているのもポイントと言えるかもしれない。
他人と違う、でも目立つ車両がほしいという人にはうってつけのモデルだ。
【ホンダ・シャドウ400】意外や2000年以降のモデルが多し ボリュームゾーンは20万〜30万円
クラシカルなロー&ロングのスタイリングで1997年2月に登場したホンダ・シャドウ400。各所にクロームメッキが施されたパーツを配し、これぞクルーザーモデル! という豪華さで人気を集めた。当時価格62万9000円。
2000年代に入っても生産されており、中古車の流通は60台前後。意外なことに1990年代よりも2000年代以降の年式のほうが流通量は多いため、根気よく探せば状態のよいものに出合える可能性は高い。
中古価格は10万〜60万円台で、走行距離の短いタマは新車価格に迫る金額で流通している。年式が新しいこともあるのか、ボリュームゾーンは30万〜40万円台。スティードに比べて少々高めで推移している。
そのほか2000年代以降に追加されたシャドウスラッシャーやシャドウクラシックなどの派生車種もあるので、自身の好みに合うスタイルの車両を探してみるのがいいだろう。
【ヤマハ・ドラッグスター400】圧倒的流通量! あなた好みの車両が見つかる……かも?
1996年2月に登場するや瞬く間に人気を集め、400ccアメリカンモデルの中心的存在となったドラッグスター400。XV400ビラーゴ同様に後輪の駆動はシャフトドライブで、ロー&ロングフォルムを採用して一躍人気車となった。当時価格62万9000円。
休止期間を挟みながら2010年代後半まで販売されていたため、300台以上の圧倒的流通台数を誇る。ノーマル状態からフルカスタマイズモデルまで、様々な車両が流通しているので、好みに合う車両を探すだけでも楽しめる。
20年近く生産されていたこともあり、中古市場価格も10万〜110万円と幅広い。ボリュームゾーンは20万〜50万円台。しかし20万円台は走行距離を重ねている車両が多いので、購入を検討するなら各部の状態をきちんと確認したほうがいいだろう。
現代の基準と照らし合わせても、ヤマハらしい大胆かつ繊細なデザインは、国産400ccアメリカンモデルでトップクラスの美しさがある。乗ることはもちろん、眺めたり磨いたりする“所有する楽しさ”も十分味わえるモデルだ。
【ヤマハ・ドラッグスタークラシック】クラスを超えた迫力のスタイリング 価格帯は20万〜100万円前後
ドラッグスターをベースにディープフェンダーやファットな16インチフロントタイヤを装備し、さらにクラシック度合いを高めたのがドラッグスタークラシック。当時価格64万9000円。
当モデルも2010年代後半まで生産されていたため、中古市場で160台前後が流通している。ドラッグスターに比べ、カスタマイズした車両が少ないのが特徴と言える。
ドラッグスターと同じく低価格帯は走行距離が伸びているモデルが多いが、意外や中価格帯でも走行距離がかなり伸びている車両も。
しかし車両の特性上、荒く乗られた車両は少ないはずなので、メンテナンスの頻度や修復歴の有無、ヤレ具合などを見ながら決めるといい。自信が持てない場合は信頼できるショップさんを見つけて購入すれば問題ないだろう。
20万円台前半の価格から流通しており、ボリュームゾーンは30万〜40万円台。状態のよいものは100万円近い値が付いている車両もあり、予算を考えつついい塩梅の落とし所の車両を探っていけば、きっとピンと来る車両が見つかるはずだ。
【スズキ・イントルーダー400】中古価格は20万円台とリーズナブルだが市場流通はわずか
アメリカンブーム時はスティード&ドラッグスターに押され、今ひとつ人気がでなかったのが1994年4月発売のスズキ・イントルーダー400。兄弟車のイントルーダー800と車体が共通のため、クラスを超えた大柄なボディが特徴だった。当時価格59万9000円。
大柄なボディは今見てもインパクトは十分なのだが、中古市場を見てもひと桁の台数しか流通していない。
価格は20万円台とリーズナブルなので探している人にとってはありがたい状況かもしれないが、いかんせんタマ数が少ないので比較検討しにくいのが難点。
これは同時期に販売していた同社のデスペラード400やサベージ400も同様。特にデスペラード400は国産アメリカンでは珍しい倒立フォーク採用車なので、もし出物があれば目立つことは間違いないのだが……。
その反面、2000年代に登場したシャドウやドラッグスターに準ずるスタイルのイントルーダークラシックはかなりの台数があり、常時70〜80台が流通している。価格も10万〜100万円台と幅広く、走行距離が少ないものも多いので、スズキのアメリカンを狙っているのならばイントルーダークラシックを狙ってみるのも手だ。
【カワサキ・バルカンドリフター】見た目のインパクト大! いまなお20台前後が流通する
バルカンクラシックをベースに、1940年代を彷彿とさせるディープフェンダーを採用したカワサキ・バルカンドリフターは1999年2月登場。当時価格64万9000円。
リヤフェンダーをスイングアームに固定するスタリングが特徴で、大型のディープフェンダーと相まって独特の雰囲気を醸し出していた。
販売期間が短かったこともありタマ数は少なめだが、それでも20台前後が流通している。ボリュームゾーンは40万円台と比較的高めで安定しているが、なかには10万円台というバリュープライスのタマもある。
スティードVLSと同様、他人とひと味違う車両に乗りたい人にはうってつけのモデルと言えよう。
カワサキのバルカンシリーズはスタンダードなバルカン400やクラシックスタイルのバルカンクラシックなどもある。なかでもバルカンクラシックは30台前後とタマ数がそこそこあり、20万〜60万円台の探しやすい価格で流通しているので、スタイリングが気に入るならば候補に入れるのもアリかもしれない。
実際に調査してみると、中古市場にリーズナブルな車両が出まわっているのは間違いないのだが、低価格帯の車両は走行距離が伸びているタマが多く、購入を検討するのならばある程度手を入れることを前提にするほうがよさそうだ。
そのあたりのメンテナンスを含め、お願いできるショップがあれば心強いだろう。
中古車は一期一会。好みにピッタリの“出物”と出合えるかはその時の運といえる。
コロナ禍で外出もままならない昨今だが、今からじっくりとアメリカンモデルを探し、終息したら思いっきりツーリングを楽しみたいものである。
text:モーサイ編集部・日暮