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ゼファーにCB、ハヤブサ! 男心をくすぐるキャッチコピーが秀逸だったバイク7選

男気アピールから宇宙モノまでバラエティ豊か

バイクも商品である以上、そのモデルのイメージや特徴を分かりやすく表現するために、新型車が出る時にはカタログやCMなどで様々なキャッチコピーが付けられます。

特に、昭和や平成に発売されたビッグバイクや高性能を誇るスポーツ車などの場合は、時代的なものや主なユーザーが男性だったこともあり、「男」をアピールするフレーズなどが数多く付けられました。

ここでは、そういった「男心をくすぐる」秀逸なキャッチコピーが付けられたバイクを集めてみました。

カワサキ ゼファー「男ならカワサキに乗れ」

1989年に登場したカワサキ ゼファー。エンジンは399ccの空冷4サイクル並列4気筒DOHC2バルブ。

昔からのバイクファンなら、「男カワサキ」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。そのイメージを全面に押し出し、「男ならカワサキに乗れ」というキャッチコピーをカタログなどに採用したのが、1989年に発売されたゼファーです。

レーサーレプリカ全盛期だった当時、カウル無しのレトロなスタイルで登場したゼファーは、1990年代「ネイキッドブーム」の火付け役として知られています。

エンジンには、あえて空冷とすることで美しい冷却用フィンを採用した4ストローク並列4気筒を搭載。砲弾風の2連メーターや丸目1灯のヘッドライトなどが、骨太なイメージを生み出し、多くのファンを獲得した大ヒットモデルです。

男という言葉を、これだけストレートに出したフレーズが使えるのも、やはりカワサキというメーカーならでは。
ホンダ NSR250Rやヤマハ TZR250Rなど、当時人気だったレプリカバイクは乗車ポジションの前傾がきつかったのに対し、比較的アップライトで楽なポジションだったため、男性だけでなく多くの女性ライダーにも支持を受けたバイクでした。

カワサキ 650-RS(W3)「漂う男の体臭。伝統のロードスター」

1973年に登場したカワサキ650-RS(前期型)。エンジンは624ccの空冷4サイクル並列2気筒OHV2バルブ。「W3」や「650RS W3」などと呼ばれるが、正式な車名は「650-RS」。

1973年に登場した650-RSは、空冷並列2気筒エンジンを搭載したカワサキの名シリーズ「W(ダブリュー、ダブル)」の3代目、通称W3(「ダブサン」や「ダブスリー」)と呼ばれたモデルです。
そのキャッチコピーに使われたのが、「漂う男の体臭。伝統のロードスター」というフレーズ。「男の体臭」が漂う?

「男くささ」を表現したのでしょうが、かなりストレートですね。今の時代だったら、不潔感があるとか言われて、ちょっとNGだったかもしれません。
1970年代といえば、マンガやアニメ、ドラマなどで野球やラグビーなどを題材にしたスポーツ根性もの、いわゆる「スポ根」が大ヒットしていた頃。そういう時代だったからこそ、こういった汗臭いフレーズも「アリ」だったのでしょうね。

ちなみに、「伝統のロードスター」が意味するのは、W3が第二次世界大戦前からあったメグロ(目黒製作所)という2輪メーカーの「K1」というバイクを源流にしているため。
メグロ製バイクは、戦後のレースで数々の輝かしい戦歴を収めましたが、バイク販売の業績は振るわず1964年にカワサキが吸収合併。
ただし、その伝統は受け継がれ、497cc並列2気筒エンジンを搭載したK1や改善型K2の実質的な後継モデルとして、排気量を624ccとし1966年に登場したのが650-W1。その後、メグロから続く伝統のツインエンジン搭載のスポーツモデルとして発売されたのがW3だったのです。

八重洲出版モーターサイクリスト1974年5月号の誌面広告。「ロードスター」シリーズをアピールすべく750-RSと共演。650-RSが「漂う体臭。伝統のロードスター。」なのに対し、750-RSは「あらたな登場。格調という名のロードスター。」というキャッチコピー。

スズキ GSX1100Sカタナ「宇宙からの侵略者」

1981年に登場したスズキ GSX1100S KATANA。エンジンは1075ccの空冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ。

その独創的なデザインで一世を風靡、世界的な大ヒットバイクとなったのが1981年に発売されたGSX1100Sカタナ。その根強い人気により2019年に新型「KATANA」も発売され、スズキを代表するバイクの1台です。

当時は輸出専用モデルだったGSX1100Sカタナ、そのカタログには英語で「Space Invader(宇宙からの侵略者)」という文字がデカデカと書かれていました。その意味はイマイチ不明ですが、その(当時でいえば)近未来的なデザインを表現するためのフレーズだったのかもしれませんね。

開発が進められた1970年代後半といえば、宇宙怪物が大暴れするSF映画「エイリアン」が大流行していたので、マーケティング的にその辺りが好きな世界中の男子を狙ったということも想像できます(定かではありませんが)。
ちなみに、当時日本では、「スペースインベーダー」というアーケードゲーム(ゲームセンターなど遊興施設で遊ぶゲーム)が流行っていましたが、輸出専用車だから関係ないでしょうね。

なお、カタナのデザインは、有名デザイナーのハンス・ムート氏が率いるターゲット・デザイン社が手掛けたことでも有名です。ムート氏は、元々はBMWに所属していたのですが、スズキからの要請を契機にBMWから独立し、ターゲット・デザイン社を設立したといわれています。

また、カタナは、1980年のケルンモーターショー(ドイツ)でプロトタイプが最初に発表されましたが、市販モデルもほぼ同じフォルムで登場したことも大きな話題に。ショーモデルのスタイルがそのまま市販車になることは少ないですから、そういった思い切りの良さも、今に続く長い人気の原動力となっているといえます。

1981年当時のGSX1100S KATANAのカタログ表紙。

スズキ GSX1300Rハヤブサ「究極の捕食者」

1999年に発表されたスズキ GSX1300R HAYABUSA。エンジンは1298ccの水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ。

市販量産車で初めて実測300km/hをマークしたことで、最速伝説を築き世界的な人気となったのがGSX1300Rハヤブサ。その1999年に発表された初代モデルのカタログには、英語で「The Ultimate Predator(究極の捕食者)」というキャッチコピーが使われていました。

最速バイクでいえば、カワサキのZZ-R1100も有名ですが、それに対抗して登場したのがこのバイク。驚異的な直線スピードを誇る大排気量マシン「メガスーパースポーツ」の中でも、20年近いロングセラーを誇ったスズキの大人気モデルです。

カタログなどで英語のキャッチコピーが使われたのは、ハヤブサの初代がカタナと同様に最初は輸出専用車だったから(2代目から国内仕様も設定されましたが、販売は2014年から)。
究極を意味するUltimate(アルティメット)という英語は、恐らくスズキが、このバイクにスーパースポーツを超える究極のマシンという意味で「アルティメット・スポーツ」という呼称を付けていたからでしょう。

捕食者という意味の「Predator(プレデター)」は、アーノルド・シュワルツェネガー主演の同名SFアクション映画(1987年)でも有名ですから、映画好きの方ならご存じの英語。映画は、宇宙から来た怪物が人間狩りをするといった内容でしたが、ハヤブサの場合は「狙った獲物(バイク)は逃さず、超速でぶち抜く捕食者」といった意味ではないでしょうか。

ちなみに、筆者は2008年に出た輸出仕様の2代目に乗っていましたが、最高出力197psの水冷並列4気筒エンジンが発揮する加速力は、まさにアルティメット(究極)の快感!
それでいて、低中速コーナーなどでも扱いやすいハンドリング性能も魅力でした。止まっているときの重さだけが難点で、駐車場などで取り回す際はちょっと難儀しましたけど。

現在は、世界的な厳しい排気ガス規制などにより、残念ながら2019年に生産終了となっているハヤブサ。さて、ウワサの3代目はいつ登場するのでしょうか? 気になるところです。

ホンダ ドリームCB400FOUR「おお400。おまえは風だ」

1974年登場のホンダ ドリームCB400FOUR。エンジンは有名な話だが、排気量は400ccでなく408ccで、空冷4サイクル並列4気筒OHC2バルブ。

再び1970年代のバイクのキャッチコピーを紹介。
1974年に登場したドリームCB400FOURには、「おお400。おまえは風だ」というフレーズが使われています。

「ヨンフォア」の愛称で親しまれたこのモデルは、1972年発売のドリームCB350FOURをベースに、空冷4ストローク4気筒エンジンの排気量を408ccに拡大。当時としては珍しかった4in1タイプの集合マフラーなどを装備し、カフェレーサー的なスタイルが人気だったモデルです。

1974年当時のドリームCB400FOURカタログの表紙。

カタログでは、まず表紙に「おお400。」というフレーズ、中を開くと「おまえは風だ」というコピーが入っていました。バイクは風を受け、それを心地良く感じる乗り物ですし、風のように速いという意味もあったのでしょう。風のように速い、風が心地良い400ccのバイクといったことが感じられる、とてもいいコピーです。

ホンダ ドリームCB500FOUR「静かなる男のための500」

1971年に登場したホンダ ドリームCB500FOUR。エンジンは498ccで、空冷4サイクル並列4気筒OHC2バルブ。

ヨンフォアが登場する3年前、1971年に発売されたホンダ・ドリームCB500FOURには「静かなる男のための500」というコピーが使われていました。

このモデルは、ホンダの4気筒エンジンを搭載したCBの第2弾として登場。1969年にCBシリーズのフラッグシップとして発売された750cc版のドリームCB750FOURが、当時の日本では最大排気量でしたが、車体が大きく扱いにくい面もあったため、大型クラスながらより乗りやすいバイクとしての位置付けでした。

「静かなる男」という表現は、ちょっと大人の男性をイメージさせて、当時は若者に人気だったバイクの宣伝フレーズとしては珍しいですね。逆に、大人のライダーが多い現代でも十分使える言葉ではないでしょうか。
ひょっとすると、時代的に社会問題になっていた「バイク=暴走族」のイメージを払拭することも意図されていたかもしれません。実際に、当時ホンダのリリースには、80km/hで速度警告灯が点灯、新しい騒音規制に合わせた静かなマフラーなど、安全性や静粛性の高さもうたわれています。

各メーカーが高性能を競っていた1970年代のバイクとしては、かなり社会性も重視した(?)モデルだったようです。

CB500Four
1971年当時のドリームCB500FOURカタログの表紙。

カワサキ KLX250SR「闘う4スト」

1993年登場のカワサキ KLX250SR。エンジンは250ccの水冷4サイクル単気筒DOHC4バルブ。

とにかく、昔の男子は闘うとか競うという言葉が大好き。そこを上手くつかんでいるのが、1993年に発売されたKLX250SRの「闘う4スト」というキャッチコピーです。

当時は、オフロードの耐久レースともいえるエンデューロが大ブームの頃。人気のマシンは全て2ストローク車で、ホンダ CRM250Rやヤマハ DT200WR、スズキ TS200R、そしてカワサキではKDX250SRなどがしのぎを削っていました。

特に、KDXはその高性能ぶりから人気が高かったのですが、長距離レースなどでは4ストローク車のホンダ XR250Rに分があり、KLXはXRの対抗馬として開発されました。

つまり、KLXが「4ストローク車でエンデューロレースで勝つ」といったコンセプトで作られたことを表現したのが、「闘う4スト」なのです。

筆者は、XRを所有したことがあり、KLXも初期型を友人が乗っていたので一緒にエンデューロに出たことがあります。KLXはXRと比べると、とにかく高回転までよく回るエンジン特性でしたね。最高出力はどちらも同じ30psでしたが、KLXの方が加速時などによりパンチがある感じ。XRというより、対抗2ストマシンを意識したような作り込みでした。

ただし、高回転型の空冷単気筒エンジンは、キック始動にコツが必要(初期型はキック始動のみ)。真夏のエンデューロで転倒などによりエンジンが一旦止まると、再始動が超困難だったのが玉に瑕で、エンジンをかけるだけでヘトヘトに疲れた記憶があります。

ともあれ、「闘う4スト」はとてもシンプルですが、「勝てる4ストマシンを作る」というカワサキの本気度が凝縮された、男心にグッとくるフレーズでした。

レポート●平塚直樹 写真●八重洲出版 編集●上野茂岐

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